黙秘権が認められない!?≪民事訴訟法・認否の効果≫
民事訴訟は、お互いの言い分を主張しあい、相手の言い分を認めたり認めなかったりして進んでいきます。
認否には、YesとNoだけでなく、明確に答えず黙っていることもできます。
自分の不都合なことは無理に言わなくてもいい。よく黙秘権なんて言いますよね。
でも、それは刑事裁判のお話。民事裁判では黙秘することで不利益を被ることもあるのです。
今日はそんな認否の持つ効果について、民事訴訟法の分野から見ていきましょう!
例えば、夫婦喧嘩の場面を考えてみましょう。
あなたは旦那さん。
ある日の朝、まったりコーヒーを飲んでたら、奥さんにすごい喧噪で私のところに迫ってきます。
「あなた!冷蔵庫に入っていたパステルのプリン、食べたでしょ!」
これに対して、旦那さんはどんな反応をすることが考えられますか?
「食べた」。
潔く認めちゃう。奥さんには逆らってもしかたありません。
これを「自白」と言います。
民事訴訟での裁判所、真実が何なのか(探偵)ではなく、紛争を解決することが一番のテーマです。したがって、当事者間に争いなければ真実と異なってもいいのです。本当は旦那さんがプリンを食べてないにしても、奥さんは旦那さんがプリンを食べたことを証明しなくても良くなります。
「食べてない」。
相手が言っている事実は存在しない。徹底抗戦の構えです。
これを「否認」と言います。
否認しているということは、プリンを食べた事実が嘘か真か、白黒つけなければなりません。したがって、奥さんは、旦那さんがプリンを食べたことを証明しなければいけません。
「知らない」。
相手が言っている事実は認識していない、経験していない。やれやれ、しらばっくれているのか、本当に知らないのか・・・。
これを「不知」と言います。
知らないということは、認めたことにはなりませんよね。真偽が判らないので、認めようがない、ということです。この場合、積極的に争っていないにしろ、民事訴訟では真偽不明なら不存在と扱われるので、そうならないよう、奥さんは立証しなければなりません。すなわち、否認と同様の効果が生じるのです。
「・・・」(何も言わない)。
認否を明らかにしない。だんまりです。
これを「黙秘」と言います。
この場合に争いがあるといえるのかどうかハッキリしないといけません。なぜなら、奥さんが立証しなければならないのか不要なのかが判らないからです。そこで、民事訴訟法は、弁論の全体的に見たとき、争っていると認められない限り、自白したものとみなされてしまいます。つまり、喧嘩の一部始終という長い目で見たとき、旦那さんの態度が争っていると言えないのならば、認めたと扱います。
このように、当事者の態度に証明が必要か不要かの効果を与えることで、何が核心なのか、どの事項を判断すべきなのかを決める機能があります。
民事訴訟に関わる場面は少ないかもしれませんが、日常の会話でぜひ意識してみてはいかかでしょうか。