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犬祖伝説の地で二度目の神秘体験?!与那国島の旅23.09③
ども、旅紐夫こーじです。
いよいよ、与那国島での旅紐も最終日。
この日は、飛行機が発つ時間まで、与那国の自然を楽しむことに。
そこで、また不思議な体験をする。そんなお話です。
それでは、神秘の島、与那国島での旅紐綴りを始めましょう。
ーーー旅紐綴りの登場人物ーーー
宗司・・・主夫で旅紐夫
瑠羽子・・・女性起業家、宗司の妻
結菜・・・瑠羽子の友だち
梨菜・・・瑠羽子の友だち
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犬祖伝説の地とそそり立つ神の岩
カーテンの隙間から漏れる太陽の光の眩しさで宗司は目が覚めた。
与那国島も今日で最終日である。
法事があったとは言え、三日はあまりにも短い滞在のような気もする。昨日着いたばかりのようだ。
そう言えば、昨日はちょっとした奇跡があった。
それは、宿へ帰って来た夜のことである。
四人が宿のロビーで談笑していると、そこにスタッフの女性がやって来た。
聞けば、以前与那国島へと夫婦で訪れた際に、あまりの居心地の良さに、ここの宿のオーナーに「ここで働いてみたい」と軽い気持ちで言ってみたところ、あれよあれよとことが進み、またタイミングも良かったのか、ここでしばらく働けることになったと言う。
そんなことがあるものかと興味深く聞いていると、さらに驚くことに、スタッフが過去に住んでいた街が、梨菜の育った街だと言う。
なんという偶然、なんたる奇跡と思うような出逢いである。
という訳で、昨日は縁の面白さを感じて眠りについたわけだが、与那国島はそんな島なのかも知れない。
「おはようございます」と宗司が起きたことに気付いた瑠羽子が声をかけた。「おはようございます」と宗司は眠気眼をこすりながら答えた。
最終日とは言え、今日も何かが起こるのだろうか。宗司にはそんな予感がしていた。そして、その予感は当たることになる。
二人が帰り支度をしていると、瑠羽子の携帯電話が鳴った。
「母がサンドイッチを持って来たらしいので、それを持って飛行機の時間までドライブしに行きましょう」
この旅の間、法事も含め、食事の一切は義母が面倒を見てくれたのはありがたかった。もちろん飲食店がない訳ではないが、閉まるのも早い。
ロビーに集まった四人は、仲良くなったスタッフに別れを告げ、表へ出た。快晴である。これは、良きドライブ日和となりそうだ。
飛行機が発つのは十六時過ぎなので、時間も十二分にある。
車に乗った四人は、まずティンダバナと呼ばれる展望台へ向かった。そこは、与那国空港からも見える大きな岩肌が目立つ場所で、与那国の伝説的な女性領主サンアイイソバが拠点としていた場所とされている天然の要塞のような場所でもあった。
駐車場で車を降り、山道を歩くこと十五分ほどで、視界が開け、展望台へとたどり着いた。
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祖納港を見下ろす展望台からの景色は絶景だった。宗司たち四人は、そこで義母が用意してくれたサンドイッチを食べながら、しばし与那国の美しい景色を楽しんだ。
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ティンダバナの展望台でサンドイッチを食べ終えた四人は、今度はさらにこの上に行こうということになり、一度駐車場へ戻る事に。
その途中で「お手洗いだけ行きたいです」と瑠羽子が言うので、道中にあったお手洗いへ寄り、瑠羽子が戻るまで三人は待つことにした。
お手洗いは歩道から少し降ったところにあった。宗司は瑠羽子を見届けてから、壁側の岩が掘られて作られた洞窟のようなところに祠などがあるのを見つけた。
なんとも不思議な雰囲気の漂う場所だと思いながら、結奈梨菜の待つ方へ少し歩みを進めると、「こっちへ来い」と呼ばれたような気がして宗司は振り返った。
だが、もちろんそこには祠があるだけで誰もいない。
宗司は不思議に思い、祠へと近づいたが、何もない。空耳かと思い、再び結奈と梨菜の方へ戻ろうと振り返ると、脳裏に白い衣装を着た老人の姿が思い浮かんだ。
それが誰かは分からないが、声の主だと悟り、改めて宗司は祠に手を合わせた。
老人は「こっちへ来い」と言ったが、それが何を意味するのか全くわからない。祠へ参れという意味なのか、はたまた。。。
ただ、宗司はそのことを口にはしなかった。
すでに2つもの奇跡が起きているのに、こんな意味のわからないことを口にしたら、何か意味を持ちそうで怖かった。
やがて瑠羽子もお手洗いから戻り、四人はティンダバナの上へと向かった。
しかし、そこにたどり着くのは容易ではなかった。瑠羽子は道なき道を草をかき分け、どんどん進む。結奈と梨菜も瑠羽子に続けと言わんばかりに進む。
宗司はまるで藪漕ぎのようだと思いながら、サンダルを履いてきたことを悔いながら、三人の後をなんとかついて行った。
やがてたどり着いた場所には、高さ二メートルほどの岩があった。少し階段のようになっていて登ることもできる。
岩の向こうは崖だと言う。女子三人は登るのが怖いと言うので、宗司はとりあえず登ることにした。宗司はむしろ高いところが好きだった。
岩の上に登ると、なるほど確かにそこはもうすぐ崖で、落ちれば命はない。
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これは、高所恐怖症の人でなくても怖い。
突風でも吹けばいとも簡単に落ちるだろう。
ただ、そこからの景色は絶景も絶景である。
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与那国の風に吹かれ、祖納の街を一望する時間は贅沢であり、きっとこの場所は与那国島で一番高いである。そんなところに今居るのかと思うと、宗司はなんとなく胸が高鳴った。
宗司が降りた後、女子三人も一段だけ登りそこからの景色を眺めたが、すぐに降りてしまった。
降りてしまえば、後は元来た道を戻るだけ。
再び藪漕ぎをしながら、四人は車へと戻った。
そこから移動し、ついでやって来たのは奇岩、人面岩のある場所。
人面岩までは車を降りてから二十分ほどかかったが、そこもまた岩の上には絶景が広がっていた。
先ほどの景色とは違い、今度は森の中からの景色である。手付かずの山林が眼下に広がっていた。
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遥か昔には祭祀にでも使われていたと思しき奇岩。信仰の対象にもなっていたかも知れないが、今では山林の奥地にひっそりと存在しているだけとなっている。
そして、四人は人面岩を後にし、与那国島でも随一の岩である立神岩へと向かった。
立神岩は、海上にそびえ立つ巨岩である。
舞台のような岩から天へとそびえ立つその岩は、まるで男性器を連想させるような立派なカタチをしていた。
名称からしても、かつては祭祀の場とされていたであろう巨岩。海の美しさもさることながら、岩の立派さに目を奪われる。
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与那国島と言えば、海底遺跡もあり、遥か太古の昔から人がいたであろうことは推測できるが、その当時には立神岩を神と祀っていてもなんらおかしくはない。
宗司はそんなことを考えていたが、ただ見ることしかできない立神岩からはすぐに立ち去ることとなった。
なんだかんだと立ち寄って来たものの、いざ空港の喫茶店へと到着したのは、まだお昼過ぎであった。四人はひとまず義母に食事を用意してもらい、昼食を済ませることにした。
昼食を済ませても、飛行機まではまだまだ時間がある。そこで、与那国での最後の時間を宗司は釣りをして過ごすことにした。瑠羽子たちも砂浜へ行くという。
そうして、四人は二手に別れて行動することになった。
瑠羽子たちが砂浜へ向かう途中で降ろしてもらった宗司は漁港で小魚を狙うことに。釣ったところでリリースしかないので、とりあえず戯れられたら十分であった。
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透き通るような海での釣りは、沖縄の名護以来である。相変わらず見透しが良すぎて、魚からもこちらは丸見えであろう。
しかも、天気が良すぎて魚もあまりいない。
とりあえず適当に投げて魚を探ってみるも、興味を示す魚はいても見切られるだけであった。
しばらく魚を探っていると、大きな魚影が見えたがダツだったので、やり過ごしながらキャストを繰り返していると、ようやく何が釣れた。
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そうこうしている内に、瑠羽子たちが迎えに来たので、宗司も納竿とし、空港へと向かった。
二泊三日の短い与那国滞在ではあったが、濃密な過ごし方をしたと思う。なぜなら、瑠羽子たち三人は基本的に引きこもるために沖縄へ行くからだ。それからすれば、これだけあちらこちらと巡ったのだから、大旅行である。
喫茶店にて残りの時間をのんびりと過ごした四人は、石垣から到着した便を見届け、しばらくして案内された搭乗口へと向かった。
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義母にも別れを告げ、与那国を後にする。
法事に始まった旅も終わりを迎えたのだ。
機内から臨んだ景色には、ティンダバナが見えた。宗司は、あの巨大な岩の縁に立っていたと思えば、今さらながらビビった。
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そう言えば、あの脳裏に浮かんだ老人はなんだったのか。「こっちへ来い」の真意もいまだ分かりかねている。
難しいことではないのだろう。きっと、ただ与那国島に迎えられたのだと宗司はそう思った。