飛び魚日記 ル・マンからバルセロナに到着して・・・
ミシュランの道路地図を助手席にバルセロナに到着。郊外のホテルにチェックインして数日が過ぎた。今年は、20年近く「バルセロナに来たらここに泊まる」と決めていた郊外の常宿が大幅に値上がりしたので、常宿よりさらに郊外にあるホリディ・イン・エクスプレスに泊まっている。アメリカに続きヨーロッパの物価上昇もなかなかすごいことになっているのだ。
このホリディ・イン・エクスプレスは、以前、常宿が満室のときに泊まっていた。去年までは80ユーロ前後だったのだが、今年はなんと135ユーロ(日よって料金がさらに高くなる)に値上がりしている。これでもバルセロナでは安い方だが、円安の影響で、日本円に換算すると「たかすぎー」と悲鳴を上げることになり、そうなると司馬遼太郎さんが長州藩の高杉晋作を題材に取りあげた長編「世に棲む日々」(文春文庫)を読み返したくなってしまうのだ。これは最高に面白いので、時間があるときに是非読んで欲しい本ですね。
ということで、このホテルに泊まった翌日、ホテルの都合で部屋を移動することになり、その日は、朝、フロントに荷物を預け、夕方ホテルに戻ってきたときに変更になった部屋のカードキーと荷物を受け取ることになっていた。夕方、ホテルに戻ってくると、朝とは違う30代とおぼしき男性スタッフがいて、預けてあったタビビトのスーツケースに貼ってある大ちゃんのステッカーを見て、「ダイジローカトー、知ってるよ」と言ったのだ。
スペインだし、バルセロナだし、MotoGP好きの人なら大ちゃんのことは知っていても不思議はないが、「2003年の鈴鹿は本当に残念だった」と寂しそうに語ったときには、なんとも言えない気持ちになった。それ以上に、こうして大ちゃんのことを覚えていてくれることがとても嬉しかったのだ。
大ちゃんが走っていたころ、バルセロナでテストをすることも多かったし、タビビトが住んでいたバルセロナ郊外のアパートに遊びにきて泊まっていったこともある。ある日、大ちゃんをクルマに乗せて「今日はいいところにつれてってあげるね」とサグラダファミリアに向かった。目的地に到着し、その不思議な建物を車窓から見上げたときの大ちゃんの「あああああーーーなにこれー」と驚いた顔は、いまでも思い返すと笑える。
今週はバルセロナ郊外のカタルーニャ・サーキットで第6戦カタルーニャGPが開催される。誰よりも速くサーキットを駆け抜けた大ちゃんだが、普段は、本当にノンビリしていた。ある日、バルセロナでのテストが終わり、イタリアに帰る大ちゃんからこんな電話がかかってきた。
「いま空港に向かってるんですけど、道に迷っちゃいました」。出発時間を聞けば、かなりきわどくて乗り遅れそうな感じ。それなのに、ノンビリした声で「空港はどっちにいけばいいですか?」というめちゃめちゃ落ち着いた声の大ちゃんが懐かしく思い出されるのだ。