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”おかわり”バイトで、自分探しの旅はありえるのか考えた【旅バイト2&6か所目:松之山温泉】

「前にも来たことありますよね?」

3ヶ月ぶりの松之山温泉街の観光案内所で、受付の女性に言われた。
前も同じ受付の女性に観光場所を教えてもらい、電動自転車を借りていた。

女性から見れば私は、日々訪れるたくさんのお客さんのうちの一人に違いない。
一度やそこら行ったからとて、そう覚えてもらえるものではないだろう。

そう思ったから今回、「初めまして」のテイでお茶を飲みに来たのに、まさかの言葉だった。

「そうなんです、今回もアルバイトしに来て……」
覚えててもらえるくらいの話なんてしてたっけ?
席に案内してもらいながら内心ビックリしていた。

バイト先がふくずみ旅館だってことまで、当たり前に覚えていてくれてたから。
どうして覚えててくれたのかって、聞きそびれてしまった。

それだけでなく。
案内所の近くにあるカフェの方も覚えててくれていた。


3ヶ月前のアルバイト滞在が楽しくて忘れられなくなり、”おかわり”アルバイトしに来た。
覚えてくれる人がいる場所っていいなって思った。

自分の好きな人や興味があることって、何気ない一言とかでもよく覚えていたりする。
私の家の近所にある小料理屋さんも、お客さんが言ったちょっとした一言をよく覚えている。
連日人気のお店だ。
私も、自分の居場所が増えたみたいで居心地がよく、その店の常連さんの一人になっていた。

そんな感じで、松之山温泉のファンになってしまった。

旅先に覚えていてくれる人たちがいる。
旅が好きであちこち一人旅したけど、なかなかない経験だった。

観光目的だけじゃなくて、バイトしながら「住んだ」からなのかもしれない。

”おかわり”滞在で知った、旅にバイトを掛け合わせる魅力だった。
旅バイト生活をはじめたてのころは、旅先でお金を稼げるから旅費を節約できてラッキーくらいにしか思っていなかった。

私の場合、旅行の目的は見たことがない場所へ行くこと、が多くを占めている。
せっかく来たのだからあそこもここも行こうと、色々みて回らないともったいないって思うタイプだ。
まるで期間限定セールみたいに、今回を逃すと次はいつ来れるか分からないと思ってしまうから。
旅行に行ったという事実をくっきり残すのだとばかりに、いろんな場所を見て回りたいと行動していた。
そうしてスマホに残した数千枚の記録は、これからも増え続けるだろう。


旅先でバイトすることで、その地に住むことができる。
暮らすことで、どうやら気持ちにちょっとだけ余力ができるらしい。

日々の暮らしになると、特段、誰かに見せるようなものではなくなる。
旅行の非日常感は薄れる、けれど、かといって長年住んでいるのとはまた違う。
私の場合、そこに住む人に話しかけてみようという、好奇心にも似た気持ちが大きくなった。

人との会話は、観光地とは違って写真に残すことができない分、心に残る。
会話を通して、SNS映えはしない、人を知ることができた。

ここでしか見れない場所があるように、ここでしか会えない人と出会う。
時間が経つほどに少しずつ記憶は薄れてしまうけれど、特別な場所だという想いが育った。

そして、私は結局、人が好きなんだと自分を知ることができた。

そろそろ旅の終わりかな、なんて思いはじめていて、これからもう一度、どこかで腰を据えて働いてみようと思っているから、自分を知れたことは大きい。
例え小さなことでも、自分にとって当たり前のことって気づくのが難しい。

自分探しの旅のつもりではなかったのだけど、旅先での行動が自分を見つめることにもつながるのかもしれない。

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