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阿修羅のごとく
Netflixの『阿修羅のごとく』を見た。向田邦子原作の昭和の四姉妹の話。是枝裕和監督。
四人が揃った時のかしましい感じが面白く、時代的にも懐かしく、全体的な雰囲気がとても心地よかった。宮沢りえが長女役の年齢であることにも、モッくんがすっかりおじさんになっていることにも驚いた。
次女の娘が、「一人で抱え込まないで。私になんでも相談して」といった趣旨のことを母親に言う場面の後で、思わず泣いた。その娘はまだ高校生くらいなのに、なんと母親思いで優しいんだろう、それに比べて私は…、と思ったからだ。私は母に何もしてあげられなかった。助けを申し出ることさえしなかった。私の母親への思いは複雑で、いつまで経っても昇華することはない。
あと、姉妹愛に共感できない自分もちょっと悲しかった。私の姉たちへの思いもかなり複雑だ。「会話で交わされる表面上の毒と、その背後に隠された愛、その両方があるから向田邦子のドラマは豊かなんです。」とは、是枝監督の言葉。その愛がふんだんに表現されていて、空々しいような、羨ましいような、微妙な気持ちになった。うちの場合は、会話に散りばめられる毒とその背後に隠された猛毒って感じだったから。
でも、外国人と結婚して海外に飛び出した私は、破天荒で現代的な昭和終わり頃の典型的末っ子として描くことができるタイプだろうな、と思ったら、なんだかおかしかった。そして、家で祖母がいつも着物を着ていたこと、華道も茶道もできて生花がいつも玄関に飾ってあったこと、たまにお茶をたてて飲ませてもらっていたこと、その抹茶の苦さなど、色々と子どもの頃を思い出した。特に祖母と仲が良かったわけでもないし、幸せな思い出というわけではないけど、あの時代に私も生きていたんだなあ、という感じ。色々と感じて、色々と思い出して、心に残る作品だった。見てよかった。