食品廃棄率が3%→2.1%に。目標以上の大幅ロス削減に成功【株式会社レアールパスコベーカリーズ様】
この数ヶ月で飲食店や小売店の日常は激変した。コロナ禍で需要が読みづらく今まで以上にフードロスが出てしまうお店もあれば、逆に少なく生産し過ぎてチャンスロスをしてしまうお店も。
そんな中、「TABETE(タベテ)」を活用するブーランジェリー「PAUL 六本木一丁目店」では廃棄率2.1%を達成。目標である廃棄率2.5%という数値目標を大幅に上回る結果となりました。
また、半年のうちに六本木一丁目店以外の7店舗でもTABETEを導入し、着々とフードロス削減の実績を上げているといいます。
TABETE導入に携わった株式会社レアールパスコベーカリーズ PAUL事業部4名の方に、フードロス削減の秘訣について伺いました。
<聞き手=篠田沙織>
1日に100個近いパンを捨てていた。お客様から「閉店後にこのパンは捨てるのか」と責められることも
篠田
PAULさんは元々、フードロス削減に関して色々と取り組まれている印象があったのですが、食品ロスについては課題に感じられていたのでしょうか?
村上さん
そうですね。朝早く厨房のメンバーにつくってもらったパンを閉店時間に捨てるのが、毎回もったいないと感じていました。
酒井さん
私も同じ気持ちですね。捨てることに毎回抵抗がありました。
篠田
確かに、作り手の顔が見える分より辛く感じられますよね...。
酒井さん
あとは、お客様から「閉店後に余ったパンはどうするんですか?」と聞かれて、正直に答えると「なんで捨ててしまうの?」と、嫌な顔をされることも…。 自分でも捨てることを辛く感じていましたが、お客様から聞かれるとなおさら辛く感じました。
篠田
お客様からそんなに直球な質問をされることがあるんですね!捨てたくて捨てている訳ではないお店の立場からすると、その質問は心にきますね...。
ちなみに、TABETE導入前は1日にどのくらい廃棄されていたのでしょうか?
酒井さん
1日に販売価格でいうと3万円分、個数でいうと100個ほど廃棄していることが多かったです。
篠田
それほどの量だと、精神的にも辛いですが、重さもかなりあって身体的にも大変ですね。人によっては一度に運びきれないような...。
酒井さん
結構重いですね。何回かに分けないと持っていけない重量です。
NPOへの寄付や、時間ごとの生産調整を実施。しかし廃棄率3%以下には届かず
篠田
以前から廃棄率削減を意識されていたとのことですが、具体的に実施されていた施策について教えていただけますか?
酒井さん
時間別で売上、天候やその時の売れ具合を見て生産量を微調整することは徹底していました。それでも、完全に食品ロスを無くすことはやはり難しかったですね。廃棄しないように生産量を調整しつつも、売上も維持しなければならないので。
本田さん
家畜用の飼料化や、植物の肥料化を検討したこともあります。ただ、パンには砂糖や油脂が含まれている関係で飼料化・肥料化することは難しいと分かりました。
本田さん
飼料化・肥料化は難しいと分かりましたので、四ツ谷店限定ではありますが難民支援をされているNPO団体に寄付をさせていただくことにしました。ただ、これも賞味期限の関係で全ての余ってしまったパンをお渡しできる訳ではありません。
寄付する場合には、事前に前日に「こういうものをお渡ししますよ」と担当者の方と電話ですり合わせをし、翌日に取りに来ていただく流れになります。
そうすると、賞味期限が当日に切れてしまうパンはお渡しができないので、翌日まで賞味期限がもつパンだけお渡しすることになります。
「全国どこでも、すぐに導入できる」ことが、TABETE導入の決め手に
篠田
TABETE導入以前から食品ロスに対して様々な方法を検討・実施されていたんですね。そのうえTABETEを導入した理由について教えていただけますか?
本田さん
1店舗あたり1日3万円分のロスがあったとお伝えしました。いまPAULは全国に26店舗展開しているので、全店舗で年間約100万個のパンが廃棄になっている状況です。長年食品ロスには困っていて、この状況をなんとか解消したいと考えていました。
先ほどお話した「寄付」の取り組みを他の店舗でも展開しようと考えたのですが、該当するNPO団体が近くにないと寄付できないなど仕組み上の制約があり、広げることができずにいました。
その点TABETEは、全国どこの店舗でもすぐにスタートできるのが魅力だと思います。今は7店舗で導入していますが、近いうちに二子玉川店でも導入して、最終的には全店舗にTABETEを導入していきたいと考えています。
篠田
なるほど、店舗の場所に縛られずどこでも活用できる、という点で選んでいただいたのですね。ちなみに、導入前に懸念されていたことはありましたか?
本田さん
懸念というよりは、衛生面が心配だったので食中毒が出ないようにどうオペレーションを組むか慎重にはなりました。既にTABETEを導入されている店舗さんを参考にしながら、「本日中にお召し上がりください」と必ずお声かけすることはもちろん、冷蔵品であるサンドイッチやケーキ、惣菜などは入れないというルールで対応しています。
それ以外は、TABETE導入に関して懸念事項は特にありませんでした。
TABETE導入後、1日の廃棄を100個→60個まで抑えることに成功。廃棄率も目標の2.5%以下を大幅達成
篠田
既に7店舗で導入していただき、どのお店でもよくレスキューされているかと思うのですが、実際にロス削減効果はどの程度ありましたか?
村上さん
TABETEを導入してから、元々廃棄率が3%だったのが2.1%にまで下がりました。
酒井さん
六本木一丁目店における1日の個数でいうと、1日100個ほど廃棄していたものが60個ほどに削減することができています。TABETEは村上が担当して、毎日廃棄率のチェックをしていたので、その姿勢が従業員にも届いてみんなで一丸となって削減につながったんじゃないかと思います。
元々は、廃棄率を3%から2.5%に下げることを目標にしていました。コロナの影響で需要が読めない中でも、こうして大幅に達成することができ、よくみんな頑張ってくれたなと思います。お客様にもご協力いただけて、本当に感謝しています。
篠田
皆さんで目標を掲げて廃棄率の減少に取り組んでいらっしゃったんですね!廃棄率3%でも相当低い水準だと思うのですが、2.1%まで削減されたとは...!従業員の皆さん、TABETEの導入に関して何かおっしゃっていましたか?
酒井さん
その日のパンの残り具合を見て、バイトの方から「今日TABETEに出品した方が良いんじゃないですか?」と声かけをしてくれるようになりました。
篠田
アルバイトの方もモチベーション高く関わっていただいているんですね!
酒井さん
他にも、TABETEを導入してから、今までは聞き流していたフードロスに関するニュースや出来事を“自分ごと”として捉えるようになりました。自分の意識が変わったなと感じます。
1週間後には日々のオペレーションにTABETEが浸透し、人件費削減にもつながった
篠田
従業員のみなさんが一丸となってTABETEをご活用いただいていていると感じます。実際に導入されてから使いこなすまでにどのくらいかかりましたか?
酒井さん
導入されたその日から早速使い始めて、1週間くらいで出品のコツは掴んだと思います。管理画面が分かりやすくて、「このボタンを押すだけで出品できるんだ!」とすぐ分かるのが良いですね。
酒井さん
元々、TABETEを導入すると決まった時に、自宅近くのお店にレスキューに行かせていただきました。お客様側の目線を知っておきたかったので。
そこでレスキューの流れが理解できたので、イメージしながらオペレーションはすぐに組むことができましたね。
篠田
導入前にもユーザーとして使ってくださっていたんですね...!そこまで準備してくださっていたなんて、本当に嬉しいです。ありがとうございます!
そのほか従業員の方にTABETEの使い方を伝えるために、独自でやったことやトレーニングプロセスなどはありましたか?
村上さん
特に、私たちで独自にやっていたことは無いですね。頂いたマニュアルを見ながら実際に使ってみてもらって…
私でも分からないことはLINEですぐに聞くことができたので、困ることはなかったです。
酒井さん
LINEで対応していただけるのは本当に助かりますね。親しみやすい態度ですぐに対応していただけるので、すごいなと思います。
篠田
ありがとうございます!LINE@を便利に感じていただけて、嬉しいです。
篠田
実は、TABETEの導入を検討するお店さんから、現場の負担について心配だというご相談を受けることがよくあるのですが… TABETEを導入してから人件費が増えたり、労働時間が増えるといった変化はありましたか?
酒井さん
日々のオペレーションを組み替えただけなので、TABETEの為だけに特別な作業をして労働時間が増えてしまったことなどは無いですね。むしろ、TABETE導入後に廃棄量が減ったことで、廃棄作業にかかっていた人件費が削減できたと思います。
篠田
なるほど...!廃棄する時の分別作業にも手間がかかるので、廃棄量が減ることで人件費の削減にもつながるんですね。
「安く買ってもらう」ではなく、「レスキューしてもらえる」ことに、一番価値を感じている
篠田
ここまでTABETEを使っていただく前から現在までのことを色々と伺ったのですが、使ってくいる中で「TABETEってここが良いよね!」と思うポイントがあれば教えていただますでしょうか。
村上さん
そうですね... みんなで色々考えてみたんですけど、「捨られてしまうパンをTABETEを通して単に『購入』するのではなく『レスキュー』することで、フードロスに貢献してもらえる」という点だと思っています。
篠田
素敵なコメントを、ありがとうございます!私たちも、「絶対に"レスキュー"という言葉を浸透させるぞ!」と思いながら日々運営しているので、その想いを汲み取っていただけてとても嬉しいです。
村上さん
最初はTABETEでいらっしゃった方に「ありがとうございます!」とお渡ししていたのですが、「ありがとうございますってなんか、違うよね」とみんなで話しあって。
酒井さん
そうそう、「ありがとうございます」だとレスキューしていただいたことに対して、なんかしっくりこないよねって。
村上さん
結果的に今はレスキューしてくださるお客様へ「ご協力ありがとうございます!」とお声掛けしています。
篠田
分かります!TABETEを使っているレスキュー隊員(TABETEのユーザー)も、本当に食品ロスを減らしたいと思っている方が多くて、ただありがとうございますと言われるよりも、そう言ってもらえる方が嬉しいという声をよく聞きます。なかにはスキューするとスタッフ全員で「サンキューレスキュー!」って叫んでくれる楽しいお店もあると聞きました(笑)
酒井さん
そんなお店もあるんですね!
TABETEを利用していらっしゃるお客様は、本当にフードロスに対しての意識が高いなと感じますね。
本田さん
私たちも売上だけが目的ではなく、フードロスを削減するという理念の元にこの取り組みをしているということを忘れないよう、気をつけなければいけないと思っています。
お客様にも「今日たまたま余ったパンをただ安く販売している」とは思われないように、私たちのフードロス削減への想いが伝わるようTABETEの活用方法にも気をつけていかないと、と思います。
もったいない気持ちが少しでもあるなら、絶対にTABETEを導入するべき。
篠田
最後に、いまTABETEの導入を検討されている店舗さんや、食品ロスに困っている店舗さんに向けて一言アドバイスをお願いします。
村上さん
「もったいない気持ちが少しでもあるなら、絶対にTABETEを導入するべき。」シンプルにこの一言だと思います。
最後に、TABETEをそう念押ししてくださった村上さん。
「何のためにフードロス削減に取り組むのか」
「目標をどこに置くのか」
を設定して、事前にその目標をメンバーですり合わせすることが、フードロス削減を成功させるために必要な要素だと感じました。
まだまだ先行きが不安定な状況ではありますが、私たちも「お店のフードロス削減のために何ができるか?」を改めて考えながら、取り組んでいこうと思います。
〈取材・文=篠田沙織(@0815Sama)/編集=山田晴香/撮影=伊作太一(@fuzz139)/ディレクション=岩舘開(@datekai)〉
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今後もTABETEを導入している店舗様へのインタビューや、フードロス削減の工夫についてnoteで発信していく予定です。フードロス削減にお困りの飲食店の方は、ぜひ以下URLからご連絡ください。