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「風の人と土の人」地域を活性化させる2つの人種(喜界島の畜産農家・栄常光さん)

 退職金のほとんどすべて、牧場の設備投資につぎ込んじゃいました。

「グローリーファーム」社長、栄常光(さかえ つねてる)さんです。

書き手:馬場みなみ


「夢は、必ず叶う」

2日間いっしょにいて、何度この言葉を聞いたでしょうか。栄さんはいつも、キラキラした目で力強く、「夢は、必ず叶う」とおっしゃいます。
「将来の夢は自分の牧場を持つこと」。中学生のころ、栄さんは、みんなの前でこの夢を語っていました。当時の日本は、高度成長期。本土に行けば企業や工場など、勤め先はたくさんある。おまけに終身雇用と定期昇給。サラリーマンになれば、一生安泰に暮らしていけるという時代でした。
そんなときに「夢は牧場主になる!」なんてこと、母親からも反対されました。けれども、栄さんの意思は変わりません。15歳のときに島を出て、鹿児島で畜産や農業を学び、家畜の人工授精の資格も取得しました。
 

農政振興のヒーロー

そのころの喜界島の一次産業は、厳しい状況にありました。サトウキビが主力産業でしたが、農家の所得は伸び悩んでいました。牛を飼っている人が多くいたにもかかわらず、人工授精をして牛の数を増やし、さらに利益を得ようと考える人はいなかったため、牛の数はどんどん減っていきます。そんなときに、栄さんは喜界島に帰ってきました。
 
「喜界島では、サトウキビで生計立てるのが先祖代々のやり方だった。でも、僕はそこを変えていこうと思った。畜産や園芸(畑作)をやって、町おこしする。誰かが先に立ってやらんと、みんなついていかんでしょう」
喜界町の役場に就職し、農政部局一筋。主に畜産で町おこし事業を推進した一方で、自分の夢だった牧場も開くことができ、島の畜産経営のロールモデルとなりました。
「43年間で、僕だけだな。農政から一度も異動してないのは。町長が4人代わったんだけど、僕を農政から外したら辞められると思ったのかな(笑)。4人の町長は誰も僕を異動させなかったんよね。」
農業なら誰にも負けない、という気持ちが強く感じられました。

もうひとつの夢

農業だけではなく、ファームステイにも力を入れてきました。20年間で、国内外から400人以上の若者をお世話してきました。今まで受け入れてきた人たちの中には、栄さんと出会って、鹿児島で新しく畜産経営をはじめた人もいます。
 
「ファームステイは一期一会。だから僕は自分の夢を語って、そして若者には夢を見てほしいの。僕、すごい楽しそうでしょ(笑)」
 
栄さんのところでファームステイをしたら、価値観が大きく揺さぶられるかもしれない、人生が変わるかもしれない。そんな風に思えるほど栄さんは生き生きして、若々しいです。それはもしかすると、もうひとつの夢を抱いているからかもしれません。それは、会社である「グローリーファーム」が、若者の受け皿になり、喜界島をもっと魅力のある島にしていこうということです。
 
「(公務員の)退職金はほとんど会社につぎ込んじゃった。それだけ心血注いで、みなさんを迎え入れる土台はつくってきたよ」

跡継ぎはいない。しかし、当時中学生だった栄さんのような若者が、喜界島に来て畑を耕して野菜やサトウキビをつくり、牛を育ててくれることを待っています。
 

喜界島で生きる

「風土というのは、風と土でしょ?僕はこの喜界島に根付いた土人間。ここに新しく来てくれるのが風人間。風と土が相重なって、町に新しい風が吹いてほしい」
 
干ばつや台風などの自然災害も避けて通れないけれども、先人たちが残してきた喜界島の豊かな風土。「土の人」として今自分がやるべきことは、この土地を残していくこと。そして、「風の人」を受け入れ、一緒にこれからの風土をつくっていくのでしょう。

新しい風を吹かせてみたい。島を引っ張っていく経営者になりたい。黒糖焼酎を飲みたい。さとうきび畑に囲まれたい。そんな人は、喜界島に行ってみてはどうでしょうか。生き生きとした「土の人」が待っています。
 
<ご感想・ご連絡はこちらまで>
喜界島ファームステイ推進協議会 事務局
✉ kikaijima.fsp@gmail.com
 

※この記事は2018年3月に作成されたものです


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