【スマート農業・オプティム前半】商社、国際協力、なぜ次にスマート農業「オプティム」を選んだか?
浜松町駅から2分。超高層ビル群の中に“楽しく、かっこよく、稼げる農業”をかかげるベンチャーがある。『ガイアの夜明け』でも特集されたスマート農業の「オプティム」だ。
オプティムでは、どんな人が、どんな思いで働いているのだろうか。異色の経歴を持つ若手社員さんに聞いてきた。
聞き手:森山健太
会社の中の空中庭園
♪(エレベーター音)「21階です」
社員さん:お待たせしました、どうぞこちらへ。
社員さん:この会議室は「空中浜離宮庭園」という名前なんですよ。外の公園に出向かなくとも、エンジニアや社員がリラックスできる場として作られました。そのために、人工のものですが芝生がひかれています。
タケノコ掘ってました
社員さん:ん、タケノコ?
社員さん:いや、知らないです。でも……
社員さん:僕もタケノコ掘ってましたよ。
僕がタケノコを掘っていたのは、新卒で入った商社を辞めた後なんですが。
大学を出て東京の商社で働いていたんです。だけど、農業にずっと関心はあって。商社をやめたのは、オランダに有機農業を学びに行きたいと思ったからでした。そこで留学前の実務経験として、栃木の農家さんの元で1年間住み込みの修行に出ました。
いや〜、それがイマイチわからなくて。
有機農業が絶対に正しい、という認識もないんですよね。
大事なのは「ビジョン」
大学生のとき、アフリカに行きました。そこで見たのは、明日の食事に困っている人たちでした。ニュースで見ていたあの景色は現実なんだなと。そのとき自分の中でスイッチが入りました。当時2008年は、環境問題が取り上げられた時期ということもあって「持続可能な社会」にすごく惹かれて。そのキーワードのひとつに“有機農業”があったんですね。
そうです。それに農業と一口に言っても、いろんな側面があるじゃないですか。農業は景観を作っていますし、その土地の文化に根付いています。一方で、人のつながりも作る。最近では東京で働く人たちが「週末くらい自然を見たい」と農家のところに行く。そういう場を作る力に惹かれていますね。
決め手は「スピード感」
いかに持続的な農業システムを作るかという時に、公的機関の援助を考えました。実際、去年まで国際協力を目的とした会社で、色んな国の政府の人に農業技術を現場で伝える仕事をしていました。そこでもっと日本が持つ技術をビジネスを通じて導入すればもっとスピード感を持って、かつ持続的な農業に繋がるのではないかと考えていました。ちょうどその時、オプティムがAIやドローンを使って農業に参入すると聞き、オプティムのスピード感や技術力に可能性を感じました。
スピード感は、思ったより早かったですね。経営の意思決定がとにかく早い。やると決めたら次の週にはやっている。ただ、一方でいきなりAIが農業の現場にある課題をすべて解決させるようなことはできない。実用化したときに、しっかりコストに見合ったものを生み出せるのかについては慎重に考えなければなりません。
つい先日、これまで課題だった従来の画像処理能力をしのぐ技術が開発されました。それを組み合わせてオペレーションを回し、さぁ、いよいよ実装段階になって、経済的なメリットは見込めるかとなって……。
……残念ながら、現時点ではコストに見合わないことがわかりました。
そこで戦略を切り替えました。この世界最先端のAI技術を農家さんに「タダ」で使ってもらおう、と。
(後編に続く)