生産、製造、販売、3つの顔で「たかすの食」をプロデュース~バイオアグリたかす~
米や野菜などを生産する1次産業、生産物を加工する2次産業、もの・サービスを売る3次産業。北海道のほぼ真ん中に位置する小さな町で、これら全てを一貫して行う(※)会社がありました。
※いわゆる6次産業化、以下この事業形態を6次産業と表現する。
北海道第二の都市・旭川に隣接する北海道鷹栖町(たかすちょう)。人口は約7,000人弱で、稲作が盛んです。また、昼夜の寒暖差を生かしたトマトの栽培もおこなわれており、トマトジュースは鷹栖町の名産品となっています。
そんな鷹栖町を代表するトマトジュースの、原材料生産から加工、販売までをすべて自社で管理する株式会社バイオアグリたかすの専務取締役である矢萩圭太(やはぎ・けいた)さんに、6次産業の取り組みについてうかがいました。バイオアグリたかすで行われているこの取り組みを、鷹栖町の暮らしと共に体験できる受け入れ制度とともに紹介します!
〈書き手〉原口拓也
「経過と結果が見える」面白さ
矢萩さん:自分で作ったものを、商品として作り、自分で売る所まで見えるのが楽しいですね。自分がおいしいトマトを作れば、おいしいジュースが出来上がる。逆の場合もそう。そんな感じで、経過と結果が見えるのが面白い所です。
農家として生産するだけでは、それを商品に加工し、買い手に売る部分がどうしても見えません。また、製品の加工を外部に委託する事も多いですが、それだとどのように作られ、その商品ができたのかを見ることができません。しかし、これらを一貫して行うことによって、経過とともに結果を見ることができることが一番の魅力だ、と矢萩さんは言います。
また、バイオアグリたかすでは、6次産業化という言葉が出る前から、この製造から販売まで一貫する事業形態を確立していました。中間手数料を取られない、流通・販売を自社管理できるという部分もこの事業形態の強みです。
時間の工夫と集中で、3つの産業を両立
ただし、生産から販売まですべて自社管理するということは、農家、製造業者、販売者の3つの顔を持つことになります。
この3つの顔はどのようにして両立させているのでしょうか。
矢萩さん:まず、トマトの栽培は3月末から10月にかけて行います。特に、夏頃は午前にトマトジュースの製造、午後はトマトの収穫に追われます。夏場の日中はとても暑くなるので、収穫をいかに短時間でやってしまうかが勝負です(笑)。
日中のハウス内は、北海道でも30℃を超えるそう。一方、工場も決して涼しいわけではなく、常に暑さとの戦いが繰り広げられます。
矢萩さん:集中して収穫作業をして、時間を工夫すれば意外とできますよ。ただ、毎年夏場は15キロほど痩せますけどね(笑)。
バイオアグリたかすで栽培しているトマトはハウス8棟分。この栽培管理、収穫は矢萩さんと社長のたった2人で行なっています。
閑散期の冬を活用して、「たかすの食」を丸ごとプロデュース
矢萩さん:収穫作業が終わって冬になると時間ができるので、その時間を使って広報活動をして、販売にも力を入れます。
矢萩さん:毎年、首都圏に出向き、トマトジュースを出品しています。また、トマトジュースに留まらず、鷹栖町の食材にこだわった食品もPRしています。
矢萩さん:冬場はトマトジュースの生産が落ち着き、工場の稼働が止まります。この空いた時間を何か活用できないかと考えていたところ、鷹栖牛を生産する方から何か商品を開発できないか、とお声がけをいただきました。
そこで、自社の工場にはレトルト釜があったので、鷹栖町の料理人の方にレシピを考えてもらい、レトルト食品として商品化しました。
そして出来上がったのが、鷹栖牛と鷹栖町産じゃがいもを作ったビーフシチュー、原材料のすべてが鷹栖町産のすき焼きです。
トマトジュースだけではなく、鷹栖町の魅力的な食べ物と共にPRしたいと思い、レトルト食品を中心に、農家さん、飲食店と共に農商工で連携して取り組んでいます。将来的には家庭のご飯をすべて鷹栖町の食材で囲みたいという思いがあります。
バイオアグリたかすでは、「北海道鷹栖町、食卓を豊かにする」というコンセプトで自社のレトルト食品を中心に、鷹栖町の食をPRしています。
(出典:鷹栖の食卓―バイオアグリたかす)
このような取り組みができるのは、ただ農作物を作るだけでなく、自社で工場を持ち、販売するまでできるからこそできること。
自身が生産したものの経過と結果を見ることができる面白さ。生産から販売まですべてできる強み。これを持つからこそできる鷹栖の食のプロデュース。ここに、6次産業の面白さと可能性がありました。
※この記事は2021年3月に作成されたものです。
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