『全国からさくらんぼ収穫の応援を!山形さくらんぼ部での収穫のお手伝いで広がるファンの輪』後編
「山形のさくらんぼ収穫のお手伝いを通じて、全国にさくらんぼのファンを増やし、農業の魅力を広めたい。」その思いから、山形さくらんぼ部を立ち上げたさくらんぼ農家の小座間剛(おざま・つよし)さん。
この取り組みでは、小座間さんが繋がっているさくらんぼ農家さんと参加者をマッチングして派遣しています。山形県天童市のさくらんぼ農家さんのところへ行き、収穫や詰め方、出荷作業などをお手伝いするものです。
事業の立ち上げ背景や、収穫作業を通じた運営の工夫、そして農業経営におけるリスクマネジメントについて伺いました。
※山形さくらんぼ部のお手伝いの様子は前編記事からご覧いただけます!
書き手:石村瑠理
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山形さくらんぼ部を一から立ち上げる
──山形さくらんぼ部を立ち上げようと思ったきっかけは何だったんですか?
小座間 剛さん(以下:小座間): さくらんぼを生産するにあたって、働き手が集まらないという問題があったんです。
収穫から出荷までのプロセスを調べたところ、収穫する時の人数が足りないことが一番のボトルネックだと分かりました。
当初は地元で人を集めようとしましたが、人件費の問題があり、集めても利益が出ない状況でした。
そこで、日本全国から収穫のために来てくれる人を集められないかと考えたのがきっかけです。
──収穫の時期だけでも人を集めるのは難しかったんですか?
小座間: そうなんです。
当時は地元に働き口が少なかったこともあり、さくらんぼ収穫をイベントとして楽しみながら人を集めることもできるのでは、という期待もありました。
しかし、その後、商業施設などができたことで働き手がそちらに流れてしまい、さくらんぼ農家の人手不足はさらに深刻になりました。
でも、さくらんぼの需要は高いので、地元で集めるのが難しくても、日本全国からなら来てくれるんじゃないか、と発想を変えたんです。
それで、まずはやってみようと思い、スタートさせました。
──受け入れ先の農園は天童市内の農家さん全てなんですか?
小座間: いえ、すべてではありません。
知り合いの農家さんに声をかけて、最終的に私を含めて3軒がこの取り組みに参加しています。
送迎などの面倒な部分を理由に参加しない方もいますが、私は送迎にかかる時間はそこまで大変ではないと感じています。
──生産者の方々はこういった取り組みについてどう思っているんでしょうか?
小座間: 反応は二極化しているように感じます。
助かると感じる方もいれば、負担だと感じる方もいます。
特に、初めて来る人に一から作業を教えることが手間だと感じる農家さんもいるでしょう。
一方で、法人化している農家さんは、教育体制がしっかりしているため、対応が上手くできているようです。
昔ながらの農家さんは、教えることに対するハードルが高いと感じがちですが、法人化した農家さんは現場の仕組みを理解しており、教え方も上手いんです。
──山形さくらんぼ部の立ち上げは、小座間さんが1から発起人としてやったのですか?
小座間:そうです。
もともとは、山形県人会のつながりから始まりました。
首都圏に住む山形出身者から「さくらんぼが食べたい」という声が上がったのがきっかけで、2015年に山形さくらんぼ部を立ち上げました。
当時は県人会の方々にもご協力いただきました。
──山形さくらんぼ部は現在何年目に入りますか?
小座間:2015年から始まったので、今年で9年目になります。
リピーターも多いという山形さくらんぼ部。
実際の参加者の声は・・・?
──参加者の中にはリピーターの方も多いんですか?
小座間: そうなんです。
今はリピーターの方が半分以上を占めています。
さくらんぼを木になったままの状態で収穫して食べられるという体験が魅力的なんだと思います。
お手伝いもリピーターの方を優先的に振り分けるようにしています。
参加者の多くは30代の女性や、ご年配の方が多いですね。
全国各地から、例えば四国の徳島からも申し込みがあります。
──参加者はどこでこの取り組みを知ったんでしょうか?
小座間: Webページを見て知った方が多いようです。
以前ラジオでこの取り組みが紹介されたこともあり、それをきっかけに調べて申し込んだ方もいらっしゃいました。
口コミで広がっているケースもあるようです。
──さくらんぼ狩りには、どのような人が参加しているんですか?
小座間: 本当にいろんな方が参加してくださっています。
大学院生の方もいらっしゃいましたし、年配の方も多いです。
みんな最初は「こんな人もさくらんぼ狩りに来るんだ」と驚いていましたが、いろんな世代の方と交流できるのは面白いですよね。
──参加者の反応はいかがですか?
小座間: 「次はいつ開催するんだ」とか、「次は〇〇で開催してほしい」など、次回への期待の声をたくさんいただきます。
我々としても、リピーターの方が増えることはありがたいですし、さくらんぼの魅力を広く伝える良い機会だと思っています。
さくらんぼ収穫のお手伝いを受け入れてみて感じたメリットと課題
──山形さくらんぼ部を立ち上げたことで、収穫期の人手不足以外にどのようなメリットがありましたか?
小座間:さくらんぼ収穫のお手伝いに参加した方が、そのままさくらんぼの顧客になってくれるという大きなメリットがあります。
さくらんぼのファンになって、毎年リピーターとしてツアーに参加してくださる方も多いです。
さくらんぼ収穫を体験することで、生産者の顔が見えるので、参加者にとっても安心感が生まれています。
さらに、この体験を通じて新たな潜在顧客を開拓できることにも気づきました。
──山形さくらんぼ部の運営における今後の課題は何ですか?
小座間:さくらんぼの早い時期は観光客が多く、宿泊施設の確保や調整が難しいことが課題ですね。
ただ、長年続けているので、宿泊施設の方々にも私たちの活動を理解していただいており、ある程度の優遇は受けられています。
──さくらんぼ収穫のお手伝いに参加した方との印象に残ったエピソードはありますか?
小座間:印象的だったのは、さくらんぼ収穫に参加した方が、自分のためではなく、家族や大切な人にお土産としてさくらんぼを贈りたいと言ってくれたことです。
伝票にメモを書いて、おじいちゃんに送りたいという方もいらっしゃいました。
贈られた方からお礼の連絡をいただいたりして、そういう瞬間に一緒に喜び合えることが本当に嬉しいですね。
もともとはサラリーマンだった。農家に転身した背景
──ご自身はもともと農家だったのですか?
小座間:いえ、私は現在60歳ですが、もともとはサラリーマンでした。
両親が農家だったので、親の跡を継ぐ形で就農しました。
──元々サラリーマンだったとのことですが、農家に転身したきっかけは何だったのでしょうか?
小座間:私は以前、会社で取締役をしていたんですが、ある時に上司が変わり、その方とあまりうまくいかず、仕事が堅苦しくなってしまったんです。
ちょうどその頃、父が胃がんの手術を受けることになり、農作業ができなくなったので、それを機に会社を辞めて実家に戻り、農業を始めることにしました。
──実家は代々農家とのことですが、さくらんぼ栽培をメインで行っていたのでしょうか?
小座間:実家では主にラ・フランスを栽培していました。
さくらんぼ栽培を本格的に始めたのは、私が農業を継いでからです。
──農業の経験がない中で、栽培方法はどのように学んでいったのでしょうか?
小座間:以前は収穫の手伝い程度はしていましたが、肥料や消毒、栽培管理の方法についてはまったく知識がありませんでした。
本当にゼロからのスタートで、見よう見まねで少しずつ学んでいきました。
実際にやってみて、親がどれほど大変な思いをしていたかが身に染みてわかりましたね。
──農家に転身するにあたって、何か苦労した点はありますか?
小座間:もともとサラリーマンだったので、農業に関しては本当に手探りの状態で始めました。
初めは試行錯誤の連続でしたが、環境の変化に適応しながらリスクマネジメントを意識しつつ、何とかここまでやってこれたと思います。
どんな状況でも対処してみせる。
農業経営におけるやりがいとリスクマネジメント
──農業を始めてみて、やりがいや面白さを感じる部分はありましたか?
小座間:はい、ありますね。
農業は毎年、気象条件などの環境が異なるので、その年によって生育状況が変わります。だから常に先を見越して予測しながら対応しなければならないんです。
そこが難しい部分でありながら、同時に面白さでもありますね。
──生育状況が思わしくない時は、どのように対処されているのでしょうか?
小座間:生育が悪くても、収穫しないといけませんから、どこかで挽回する方法を考えます。
私はTOC(制約理論)を取り入れており、作業工程全体を見渡してボトルネックとなっている部分を見つけ、それを改善することで全体の流れを良くするようにしています。
──そのリスクマネジメントの考え方は、農業経営を長く続ける上で役立っているのでしょうか?
小座間:そうですね、非常に役立っていると思います。
農業は環境変化が大きいので、リスクマネジメントが不可欠です。
TOCの考え方を活かして、どこにボトルネックが発生するかを予測し、そこに対策を打つようにしています。
これが、安定して農業を続けてこられた理由の一つです。
もともと工場の生産管理に使われていた手法ですが、農業にも応用できるんです。
──農業のお仕事、かなり大変そうですね。
小座間:そうですね、農業は奥が深いです。
自分が学んできたことを活かして、意識的に取り組んでいますが、それでもやりがいのある仕事です。
──農業経営で特に工夫している点はありますか?
小座間:限られた予算で最大の効果を上げるため、さくらんぼ狩りの広告出稿やSNSキャンペーンを非常に慎重に選定しています。
また、観光農園としての取り組みも力を入れており、来園者に喜んでもらえるサービスの提供を心がけています。
これからも山形のさくらんぼファンを増やす。小座間さんの今後の展望
──小座間さんの今後の展望について教えてください。
小座間:さくらんぼ狩り体験を通じて、さくらんぼのファン層をさらに拡大していきたいと考えています。
リピーターを増やすことはもちろん、新規顧客の開拓にも注力していきたいです。
また、観光農園としての魅力をさらに高め、参加者が「また来たい」と思ってくれるような工夫を重ねていく予定です。
農業経営は予期せぬリスクもありますが、柔軟に対応しながら事業を発展させていければと思います。
──観光農園としての取り組みで、工夫している点はありますか?
小座間:さくらんぼ狩りの体験を通して、さくらんぼのファンを増やすことを目指しています。
参加者とのコミュニケーションを大切にし、リピーターには特別なサービスを提供するなど、細かな気配りを心がけています。
そういった小さな工夫が口コミで広がり、集客にも繋がっていると感じます。
ご自身も農業に携わりながら、山形のさくらんぼファンを増やすべく精力的に活動されている小座間さんのお話を伺い、その働きぶりがとても格好良いと感じました。
農業のさまざまな課題に対しても、「どうやったら乗り越えられるか」を徹底的に考え、実行に移す姿勢から、農業経営を続けてこられた小座間さんの努力がひしひしと伝わりました。
私も小座間さんが一から立ち上げた山形さくらんぼ部の活動に携わる中で、採れたてのさくらんぼの美味しさを実感し、すっかりファンになりました。今後もこの活動が続いていってほしいと心から思います。
さくらんぼ部にご興味のある方は、
主にfacebookに毎年4月頃から掲載されている募集をみて応募すれば
農繁期の間の6月中にお手伝いをすることが可能です!
山形さくらんぼ部Facebook:https://www.facebook.com/groups/984381388348730/
濃厚フルーツおざま農園HP:
https://ozamafruit.com/