食べられるお花を育てる蘭さんに聞く!たくましい生き方
書き手:河村青依(TABETAI編集部)
「こんにちはー!お昼食べてから取材にするー?」と笑顔いっぱいでガラス温室から出てきたのは、神奈川県伊勢原市で食べられるお花:エディブルフラワーを育てる、加藤花園の棚橋蘭(たなはし・らん)さん。
子育てとお花のお世話両方頑張るパワフルおかあちゃんだ。
加藤花園は、先日TABETAIで取材させていただいた伊勢原の石田牧場の目と鼻の先。
終始笑顔で、仕事や家族の話をする蘭さんは、たくましくキラキラして見えた。そんな蘭さんから、仕事のモチベーションを保つコツを聞く。
まず、エディブルフラワーとは?
その名前の通り、食べることが可能なお花のことをいう。お花をたべる??なかなか想像しづらいけれど、ブロッコリーや、ふきのとうも、エディブルフラワーの一種らしい。このことを知るとぐっとエディブルフラワーが身近に感じられる。
引かれてしまうのだけど……
お花の声が聞こえるような気がするの。
加藤花園では防虫や肥料については、天然のものを使い、常に研究、弛まない試行錯誤を続けている。ここまで努力をしている蘭さんの、お花を育てている時に心がけていることはなんだろう。
「お花の気持ちを考えることです。これをいうとよく引かれてしまうのだけれど(笑)。毎日お花を育てていると、今喉乾いたってつぶやいたかな、少しまぶしいって花が言った気がするなど、笑っちゃうけどお花の声が聞こえてくる気がするの。お花の声を聴こうとする気持ちは大事にしていますね。あ!父と母がお手本ね」
一輪一輪の声に耳を傾けたいという気持ちが、愛情溢れる丁寧な栽培に繋がっているのだろう。
井の中の蛙にならない。
沢山の経験があって今がある。
幼い頃から花園を継ぐことが夢だった蘭さん。東京農業大学を卒業したあと、すぐに加藤花園に勤め始めたのかというと意外にもそうではなかった。
「両親からのアドバイスとして、井の中の蛙にならないように様々なことを経験して糧にした方がいいって言われていたの。
だからオランダでの研修後に、7年間生花店に勤めて、フラワーデザインの資格を取得したり、国際農業交流協会で海外派遣研修生のためのサポート事務をしたり、県立中央農業高校の実習教員をやったりと、沢山のことを経験させてもらいました。今振り返るとこれが、糧になっていると実感するな。両親のアドバイスに感謝の気持ちでいっぱい」
蘭さんは取得したフラワーデザインの資格を活かして、時折、加藤花園に注文のある装花を行っている。なんと2020年公開の映画『空に住む』(岩田剛典・多部未華子主演)に、蘭さんのエディブルフラワー花束が使われたそうだ。
自分の最終的なゴールに最短距離で目指すのもいいが、様々なことを経験していく方が見えるもの、できることが広がる。自分の経験、努力が一つ実を結んだ瞬間だったと蘭さんは語っていた。
夢は大きく。
都会のオアシス「農業ランド」を作りたい!
子供を育てつつ仕事もする蘭さんの1日は多忙。
また、お花の需要は主にイベント関連にあるため、コロナ禍の現在、加藤花園でも大幅な減収だそうだ。そんな大変な状況の中でも蘭さんは笑顔を欠かさず、夢を語ってくれた。
「伊勢原って都会のすぐそばにあるのに、すごくのどかな場所でしょ。こののどかな場所に農業ランドを作りたいって小さい頃からよく母が言ってて。そんな母の夢を後押ししたい。大きな夢だけど、田んぼカフェをひらいてゆっくりランチができる場所を作るとか、もっと都会の人が気軽に伊勢原の田んぼに来れたら、いいリフレッシュになるかなぁと思うのよね。それが私の夢でもあるな」
農業ランドという言葉を初めて聞いたときは、全く想像がつかなかった。けれど蘭さんのいう農業ランドというのは、都会での暮らしに閉塞感を感じてしまっている人、自然が好きな人、様々な人にとって農業が身近で楽しい存在になってほしいということ。そういう願いが込められた言葉なのだ。
子育ても
お花を育てることもEvery day with smile !
子育てと農業、どちらも両立させている蘭さんのパワーはどこからきているのだろう。そしてどちらも楽しんでいる蘭さんの心がけていることとは、何なのだろうか。
蘭さんがこんなことを言っていた。
「大事にしなきゃなのは笑顔。every day with smile これがわたしの人生のテーマなの。笑顔になれないことだってたくさんあるし、泣く時はたくさん泣くし、不安なことがあるとそれでいっぱいになっちゃうこともある。でも自分の感情を大切にして外に出すって大事なことよ」
自分の感情に素直に、気持ちを大切にしている蘭さんは活き活きしていて魅力的だと感じた。二の次になってしまいがちな感情に耳を傾けることが、蘭さんの輝く笑顔の源なのかもしれない。