向き合わなければならないのはコロナだけじゃない〜にんにく農家、井上さんの挑戦〜【コロナの向こう側へ】
【コロナの向こう側へ】
私たちNIPPON TABERU TIMESは全国各地の生産者の皆さんに、たくさんお世話になってきました。しかし、私たちの知り合いの生産者さんの中にも新型コロナウイルス感染拡大により影響を受けている方が、少なからずいらっしゃいます。今、生産者の皆さんの身に何が起きているのだろう?編集部員がコロナ禍の農林業のリアルに迫ります。
今回取材するのは和歌山県由良町でにんにく農家をしている井上慶祥(いのうえのりあき)さん!井上さんは、にんにくの生産から、生にんにくの販売、またにんにくを熟成してできる黒にんにくの販売まで一貫して行う六次産業化した農家さんです。実際TABETAI編集部の原口が、植え付けから収穫まで住み込みで体験し、緊急事態宣言が出されていた4月も、井上さんとともに、過ごしてきました。この実体験を踏まえて、今回はこの時期の農家さんのリアルをお届けしていきます!
聞き手:原口拓也(TABETAI編集部/和歌山大学2年)
※この記事は2020年7月作成のものです。
一見、何の影響も感じない
緊急事態宣言が発令された4月の中頃、にんにくの収穫が始まりました。世間では外出の自粛や、医療崩壊など様々なマイナスになるニュースが流れていましたが、私たちはただ周りに広がる山々に囲まれ、にんにくの収穫作業に追われてました。
うーん、そうやね、ここではあんまり変わったことはないかな。そもそも、農作業をする上では3密になることがないからね。
このように、この場所では、変化というものは感じられなく、畑の近くの公園でも子供たちの声が聞こえたりと、そこでは本当にコロナで大変なの?と思うほどいつもと変わらない日常が流れていました。
でも、大きく変わったことも。
最近、売り上げの比率が変わっていて、特にEC(ポケットマルシェ)での売り上げがすごく伸びているね。
※ECとは……インターネットを利用した小売りサービス。ポケットマルシェ(ポケマル)や食べチョクが有名で、農家さんの野菜をインターネット上で直接売り買いできるサービスのこと。
去年はポケマルは使ってなかったから、直販のみで比べると約20倍くらいに伸びたよ!
売り上げ先の面では、かなり大きな変化があったようです。私自身もポケットマルシェに出す用の作業をしていたのですが、こんな1日でポケットマルシェの注文が入るのかと驚きながら作業をしてました。
コロナだけじゃない、向き合わなくてはいけないこと
でも、そもそも今年は暖冬とかの影響で、かなりの不作だね。
※ボウズとは……にんにくの玉がなく、出荷できないにんにくのこと。
そうなんよ、だから今年目標にしていた出荷量は達成できないね。
このように、コロナの影響以前に、農家さんはいつも予測ができない自然と向き合わないといけないのです。今年は、暖冬の影響をかなり受けたようでした。他にも、豪雨災害や、台風、病害など様々なリスクがあります。また、肥料はどの程度まけばいいのか、日照時間、気温を考えて植え付けの時期はいつがベストなのか、収穫はいつすれば身が腐らず大きいにんにくが取れるのかなど、さまざまな”自然と向き合ったうえでのセンス”も問われるのです。このような、自然を相手とする農家として生きていく上での難しさについても知ることになりました。
影響が出てくるのはこれから
うーん、影響が出てくるとしたら、これからじゃないかな。
短期的且つ、にんにくの販売にだけフォーカスすれば、そんなに影響はないかな。食べる量は変わらへんか、むしろ微増やし。
ただ、中長期的に見ると、日本経済はじわじわ下がっていくやろから、これまで通りの生産や販売やったらきついやろなってのはある。だから、なんかあったときに食べて行けるように、色々野菜は育てていこうと考えてるよ。まずは根菜類から!(笑)。
根菜類は葉物に比べて虫や獣害に気を付けなくていいからね!あと、畑が今年はさらに広くなるから、その活用としても使っていこうと思う!
コロナの中で、何かできることはないかと考え、アクションを起こしている井上さん。今年は、にんにくだけでなく根菜類も新たに取り組んでいかれるようです。また、コロナだけでなく、自然災害や気候の影響、肥料の調節など、さまざまなことについて考えながら動いていかなくてはいけない。このように、コロナ、自然という先行きが見えない世界の中で、真正面から前向きに向き合う農家さんの姿が、そこにはありました。
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