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みつばちと紡ぐ、花と垂井町のものがたり 【eumo✖️NIPPON TABERU TIMES 加盟店取材企画】

はちみつを買うときに、季節を意識することはありますか?私はそんなこと、意識したこともありませんでした。

岐阜県垂井町にある春日養蜂場のはちみつは一つの花ではなく、様々な季節の花から集め られるため、季節によってはちみつの色、香り、味わいが全く異なっています。

多種多様な花々と、それを生み出す天気と土地、町を形作る人々、そして、春日養蜂場。はちみつとは、みつばちだけでなく、さまざまな要素が合わさって、生み出されるものでした。

〈共感コミュニティ通貨 eumo コラボ企画〉
eumoとは、「幸せになるための手段」とお金を再定義した、新しい電子マネー。チップとメッセージ機能があり、人とのつながりや、ありがとうといった”共感”を可視化し「気持ちを伝えること」を楽しめます。 モノとお⾦の交換ではなく、縁と共感を大切にする、共感コミュニティ eumo。
今回は、編集部員が共感したポイントに着目し、加盟店の農園、牧場、カフェなどに取材しました!


咲き変わる花と季節を映す、マンスリーハニー

春日養蜂場のはちみつは、月ごとに味が変わる”マンスリーハニー”。みつばちが訪れる花を蜜源植物といい、月によって異なる種類のはちみつを楽しめます。

「うちのはちみつは一つの花から集める単花蜜(たんかみつ)ではなく、様々な樹木の花から集める百花蜜(ひゃっかみつ)です。4 月はサクラ、5 月はレンゲとフジ、6 月はソヨゴが特に多い花です。花の変化に合わせて蜂蜜の味もどんどん変わっていくので、自分の好みの味を知っていただきたいですね」

そう語るのは、春日養蜂場の代表・春日住夫(かすが・すみお)さん。

春日養蜂場の代表・春日住夫(かすが・すみお)さん。

春日さんが養蜂を営む垂井町は、全国的に見ても植物の種類が豊富な土地。その秘密は植生と標高差にあると言います。

「町の南にある鈴鹿山脈(すずかさんみゃく)には暖かい土地で育つ南方系の植物が見られ、西にある伊吹山(いぶきやま)には、逆に北方系の植物が見られます。2つの植生がちょうど交わり、豊かな植生になっています。

それと、養蜂場が標高15mくらいなんですが、伊吹山が1,377m、北にある池田山が 924mで、標高差がすごくあるんです。そうすると、同じ花でも標高によって段階的に咲いていくので、途切れることがありません。早い話がだらだら花が咲くんです。これは海外では珍しいことで、花はたくさんあるか、全くないかのどちらか。標高差もなく真っ平らで、単純な植生が多いです。花が咲きましたー!終わりましたー!って。花がなくなった途端、何もなくなるんです。

ナタネ、サクラ、レンゲ、シイノキ……。垂井町のように花がずっと続く環境はみつばちにとって良い環境です」

季節によって色も異なるはちみつ。

花と天気と、一緒に作るはちみつ

日本の多くの養蜂家は、花が咲く場所に合わせて、常に移動を繰り返しています。一方春日養蜂場さんは、冬以外は移動せず、移り変わる花に合わせて、垂井町ではちみつを採取しています。垂井町に花がなくなる12月から3月の間は、暖かい和歌山県で養蜂を行っているそうです。

「和歌山に行くのは春が早いから。和歌山は春のスタートが2月の初めなんですよ。垂井町にいるとスタートが2月の末なので、半月以上遅れます。早く始めれば始めるほど、みつばちが増えます。みつばちが増えて働き手がたくさん増えれば、花が咲いた時にたくさんはちみつが採れますよね。だから、和歌山に行って早く働き手を育てます。4月のサクラの蜜も、垂井町にいたら採れません。和歌山で働き手を育てて、サクラの開花に間に合わせています」

サクラの花は香りが強く、独特のクセがあります。

垂井町では、場所によって多種多様な花たちが咲き変わります。一体みつばちは、どうやってそれを見つけているのでしょう?

「偵察ばちが花を見つけて帰ってきて、ここにいい花あるよってみんなに教えるんです。また別のやつが花を見つけてくると、どっちがいい?って協議して、じゃあこっち行こうよと決めるんです。で、花も1日中だらだら蜜を出しているわけじゃないんですよ。朝に蜜を出す花、夕方に出す花、昼に出す花とそれぞれ違います。お互い効率よく花を交配できるように、花によって蜜を出す時間が変わります。だから、花が咲いていてもいつも蜜や花粉を出しているとは限らないんです」

なたねは20度以下で蜜を出し、レンゲは25度以上で蜜を出すそう。特にレンゲは、30 度を超えると花が焼けてしまうこともあるそうです。

花に大きく左右される養蜂というお仕事。

花が咲くかどうかは、もちろん天候にも左右されます。特に去年は異常気象が続き、不作だったと言います。

「去年は5月のはじめまで低温が続きました。例年だと5月には30度近くまで上がるのが、20度くらいでした。そうすると、花が咲いても蜜を出さないんです。そのあとは、雨が続いたため、花が咲いているけど、雨でみつばちが飛べない。10年に1回くらいの、本当にひどい状態でした」

花が咲いた時に低温でないこと、雨が降っていないこと。たくさんはちみつを採るためには、花が咲くタイミングと天気の条件が合うことが、とても大切なのです。

刺された痛みも吹き飛ばす、「おいしい!」の声

春日養蜂場の代表である春日さんは、毎日10箇所の養蜂場を見廻り、女王蜂がちゃん といるか、問題なくはちみつを作っているかなど、養蜂箱の様子を確認しています。みつばちがどんな行動をするのか、そこからどうやって効率の良い養蜂をするのか、日々考えているそうです。

毎日接していると、みつばちにもそれぞれ個性があり、機嫌が良い時や悪い時がわかってくると言います。

「天気が良くて花が咲いていると、機嫌がいいですよ。逆に、雨の日が続くと機嫌が悪くなる。雨の日はみつばちがみんな巣箱の中にいるので、見回りが大変です。普段は凶暴な奴も外に出るけど、雨の日はずっと中にいるから。こんな雨の日はあまり中見たくないねって言い合っています(笑)」

オンラインショップに加えて、垂井町にははちみつ直売所もあります。

「みつばちは雨が降ると、行く方向が変わるんですよ。朝と昼も、動きが違います。やる気がなくなって、働かなくなることもあります。今日花咲いてるけど寒いし、蜜出してないし。 出ればエネルギー使うし、やめとくか今日は、みたいな」

普段はなんと、素手で巣箱を点検するという春日さん。さすが熟練の養蜂家さん、みつばちに刺されない秘伝の技を持っているに違いない!刺されない秘訣を聞こうとした時に、ふと気づいたのは、春日さんの手の黒い点々。

実はこれ、みつばちに刺されて出血した跡なのだそうです。

春日さんの手に残る黒い点々。

「刺されますよ。たくさん刺されますし、痛いですよ。耐性ができているので腫れることはないですが。たまに悶絶するくらい痛い時もあります笑。神経があるから痛いに決まってますよ」

そんな苦労を吹き飛ばしてくれるのは、やはり、お客さんの笑顔だと言います。

「直売所やイベントでの販売は、直接対面で話ができるので、大事にしています。その場で食べて、目の前でおいしいって言ってくれることは、何よりのやりがいです」

プーさんみたいに、はちみつを大好きになって

春日さんの思う垂井町の魅力は、豊富な蜜源植物に恵まれていること。垂井町は、5 月のはちみつに不可欠な、レンゲの一大産地でもあります。 このレンゲは、垂井町の農家さんと協力しながら育てられています。

「田んぼにレンゲを植えているので、農家さんとの繋がりがあります。レンゲは植物の成長に必要な窒素が豊富なので、有機米を育てている畑に植えることで、減農薬で作ることができます。養蜂箱も、農家さんの土地をお借りして置いています」

しかし、農業政策により麦や大豆の栽培が促進され、生産性がないと判断されたレンゲはどんどん姿を消していると言います。

「北にある池田山の上から見ると、養蜂場の近くに広がる濃尾平野が、レンゲで一面ピンク色になっていたんです。つい20年前の話ですよ。そこからどんどんなくなっていって、今はほとんどありません」

さらに、みつばちの大敵であるダニの影響もあり、全体的に国産はちみつの生産量は少なくなっているといいます。

春日さんは、子どもたちに養蜂を知ってほしいという気持ちから、先代が始めた「くまのプーさん体験」を引き継いでいます。くまのプーさん体験とは、子どもたちを対象にし たはちみつ搾り体験のこと。春日さんからみつばちやはちみつのお話を聞いたり、ミツロウキャンドル作りも楽しめます。

「よくお客さんでいるんですよ。昔養蜂場があって、そこではちみつ食べさせてもらった、おいしかったっていう人が。そういう年配の方の話を聞くと、今のうちに子どもに食べさせておきたいと思って。そうすれば大人になった時、思い出してくれるでしょう。はちの巣から出したばっかりの、本当のはちみつを味わってもらえる。その体験、きっと一生忘れないでしょうね。それをずっと続けています」

 次にはちみつを食べるとき、はちみつが採れる花や、養蜂家さんのことを、ちょっと想像してみませんか?

 垂井町に咲く花々と、それから作られるはちみつは、食べた人に季節の移ろいを感じさせてくれます。

 生産者である春日養蜂場の皆さんは、今日もみつばちの羽音を聴きながら、食べる人の笑顔のために、はちみつを作り続けています。

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