つきひ惣菜店 no.5『想像力が足りてない』
営業を始めて20日が経つ。
毎日課題が見つかり、都度改善していく日々。
なんだ全速力のまますぎた20日間だった。
長島町ではいま長島の友人達が監督や俳優を呼んで映画の撮影をしていて、その昼夜のロケ弁もつきひに頼んでくれています。
まだまだ慣れていない通常営業、レギュラーのお弁当の仕込みや、ショーケースに並べる惣菜の仕込み。それに加えて注文してもらったロケ弁の準備。
開店と同時に20個前後、夕方のピーク時にも20個前後。
つきひだと一回に作れる最大数は13個なので詰めるだけでも少し時間がかかる。
11日間とはいえ、昼夜の2回分のご飯を全て任せられるとメニューも気になる。
男女で食べる量も違う、いつ食べるのかもわからない状況、選択肢もあったほうがいいのか。せっかくきたなら長島の魚とかも食べてほしい。
うんうん悩みながら、通常営業の中でロケ弁の作業も今日まで10日間なんとかやってきました。
カチンとくるでしかし。
今日の夕方18食のコロモコを作っている時、早めにお弁当を取りに来てくれた気の知れたスタッフと話をしていた。
何気なく
『もうオールアップするんじゃないですか?どうでした?大変でした?』
と聞くと、意外にも
『大変でした…笑』
という返事がきた。
話を聞いていると、スタッフ間でのやりとりや、天候に左右される中での急なスケジュール変更などで、バタバタしていたらしい。
『そういうこともありますねぇ〜お疲れっす。』
なんて話をしていた。その時そのスタッフさんが、
『そういう(大変な)中で配慮が足りてない行動があると少しカチンときますよね。』
っていうから詳しく聞くと、まあまあ確かにそれは気になるよなぁということが多々あった。
そうしたらスタッフの方が一言。
『お弁当も揚げ物が続いていて女優さんたちは疲弊してるし、野菜を準備するとかの配慮もない。言っても聞き入れてくれないんすよね。』
…
あーーーーーーん?????????
あーーーーーーーん?????
ロコモコ丼の上に目玉焼きを乗っけようとしていた手が滑った。
ぐるぐると脳内で反芻されるその言葉。
ピンボールの球みたいに、動き回る。
次の瞬間に、虚無感とふつふつとした怒りが湧いてきた。
(配慮がどうとか他人に言ってるのに、それを作ってる本人にいうか普通。どんなブーメランやねんえ、そもそも知ってるならそれ直接俺にいってきてくれれば解決できた問題じゃないの通常営業もしながらイレギュラーなメニュー対応してたのにこんな仕打ちある?え?え?え?え?え?え?え?)
とモテキのユキオみたいに長尺のセリフがバーーーっと出てきた。(心の中で)
ははーって話を聞きながら、箸をぶん投げようとしたけどこらえて、ロコモコをとりあえず納品した。
最後のスプーンを渡す時に、
『〇〇さんも配慮ないですよね。(さっき言ったこと)とか普通作ってる本人に言いますか?まあいいや、もう行ってください。』
と強めに当たってしまった。
誰の目線に立つべきなのか
彼が去った後に、
なんか久々にムカムカしたから店内を歩き回ってたら、怒りの感情の後ろからリニアモーターカーくらいの速さで迫ってくるものがいた。
そう、悔しさである。
(いや、そもそも受けた時点できちんとメニューの把握はしておけよ揚げ物が続いてるなんてわかってることじゃん限られた時間と食材でなんとかすんのがてめえの仕事だろ缶詰になるのわかってるんだから野菜とか準備しとけよカスうだうだ言うな)
またゲキ詰上司のようなセリフが沸いてきて、
だよな〜あ〜だよな〜とまた落ち込んだ。
僕らが大変だとか一切関係なく、食べる人の目線に立つべきだったし、どんなシーンなのか、これまで納品したものはどんな反応だったのか、これからどんな感じになっていくのか、取りに来てくれるスタッフからきちんと聞いておくべきだった、想像するべきことだった。
そういうのを踏まえた上できちんと美味しいものを提供するべきだった。
ご飯しか楽しみがない缶詰生活なのに、きちんとその楽しさを作ってやれなかったことがなんともまぁ、ねぇ。悔しいねぇ。
これからは、しっかり食べる人のことを考えて、その人の最大限の楽しさを引き出せるように頑張ります。
久々に悔しさと悲しさに悶えたので備忘録として。