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第2回「編集会議は突然に!?」
「やっぱり、ひろこさんの作るスイーツは絶品だなぁ」
と、上機嫌のたくやくんは『食べもの通信』に連載を持つ外注のライター。
女子率ほぼ100%の編集部に出入りする貴重な男子である。
しかもイケメン。
目の保養としても大いに役立ってくれている。ありがたや。
「ほんと。柿の風味を損なわない絶妙な甘さ…う~ん、美味しすぎるっ!」
たくやくんの意見にブンブンと首がもげそうなくらい頷いているのは、アルバイトのあいちゃん。
編集者を目指して、日々、社内の雑用をこなしてくれている若手有望株だ。
しかし…
「ふぅ~ん、ジャンクフードばっかり食べてるバカ舌のあいちゃんにも、ひろこさんのスイーツの美味しさはわかるんだ」
と、たくやくんが突っかかれば、
「はぁ? バカ舌? 利きポテチで私に惨敗したアホ舌の分際で!」
と、あいちゃんが受けて立つ。
そう、このふたり、会えば小競り合いばかりをしてる犬猿の仲なのだ。
まあ、もっとも編集部内では「結局、仲いいじゃん」という認識ではある。
ちなみに、あいちゃんの言う「利きポテチ」とは、目隠ししてポテトチップスを食べ、どのメーカーのものかを当てるというゲーム。
昨年末の忘年会で開催されて以来、全問正解のあいちゃんがたくやくんにマウントを取る決まり文句となっている。
が、覚えておいたところで何の役にも立たないのであしからず。
「果物の旬もわからないひよっこが、いつになったら一人前の編集者になれるんですかねー」
そう言って、さらにあいちゃんを煽るたくやくんに、しもむーが反応する。
「あ、それいいかも。来年の表紙、旬の果物でいきませんか?」
「でも、以前に一度やったことがあるわよ?」
しもむーの提案に、まりりん編集長が異を唱えた。
「それなら、以前とは違う果物をピックアップすれば…」
「いっそのこと、果物を使ったスイーツにするのってどうですか?」
あいちゃんのひとことに、全員がハッとする。
「その発想はなかったわ♡」
柔軟な発想に、まりりん編集長がにっこりと微笑んだ。
あー、これが噂のキラースマイルか…。威力、ハンパない。
編集長…くれぐれもその笑顔、外で無駄に振りまかないでくださいね。
トラブルの予感しかしないから。
と、まぁこんな風に、始まっていないようで、いつの間にか始まっている。
それが我らの編集会議である。
ゆるい? そこは我らの社風と受け止めて、お目溢しの程を。
「果物の表紙か。それは、もはや源田の守備よね」
「一応、聞きますけど、ゆみさん。それ、どういう意味ですか?」
「この上なく手堅いってことよ。わかるでしょ?」
「いや、まったく1mmも伝わりません…」
あ、これもあったか。
ミドル・ボス、ゆみさんの意味不明な例えと、それにツッコむしもむーの会話もまた、我が編集部あるある。
こうして、ゆるゆるまったりと編集会議は進んでいくのである。
※何度も言うようですが、これはあくまでフィクションです!