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【レポート】カネコアヤノ TOUR 2021 “よすが” 金沢公演

 

 全身が喜んでいる。彼女の音楽が、私を、皆を喜ばせている。


 

 最後にライブに行ったのはいつぶりだろうか。当時Galileo Galileiという邦ロックバンドにのめり込んでいた時期があり、その解散ライブだと思うから、約5年か。随分、ライブとはご無沙汰だった。今回、カネコアヤノのライブに参加することにしたのは、何を隠そう彼の誘いがあったからだ。すなわち、カネコアヤノのことをよく知っているかといえば、実はそうではなく、「久しぶりにライブにでも行ってみようか。」という浅い動機で私は参加することにした。
 私たちが参加したのは、カネコアヤノ TOUR 2021 “よすが”の金沢公演だった。ホテルに荷物を預け、金沢市文化ホールへ向かうと開演30分以上前だというのに、すでに多くの人が集まっていた。若者から中高年、そして男性、女性と幅広い層がいることに驚いた。今回は、「箱」と呼ばれる所謂ライブハウスではなく、地元の公演も行うような文化ホールのため、一人ひとりに席が与えられていた。ゆったりとした座り心地で、寛ぎながら彼と話をしてカネコアヤノの登場を待った。ついに会場が暗転すると、舞台の裾から彼女が現れた。


 私の初めての印象は、とても小柄な女性だな、というものだった。冒頭でも触れたが、私はカネコアヤノについて詳しくないため、彼女の容姿がどんなであるとか、バックボーンがどんなものなのかは全く知らなかった。だから、「こんな女性だったんだ。」なんて安直にも思っていたのだが、次の思考を巡らせる間もなくイントロが流れて、彼女が歌い始めた。そして私は、大きな衝撃を受けることになる。
 とにかく彼女の歌声のボリュームが大きいのだ。小さな体から、どうやって出しているのかが分からない程の声量で、あっという間に彼女の歌声がホール全体へ広がり、耳の奥がじんじんとした。「全身で歌を歌っているんだな。」と、思った。彼女は時折、遠くを見つめながら、心を込めて歌を歌っていた。私だけでなく、周りの皆全員が、彼女の歌声に惹かれているのもよく分かった。体を揺らして、ときには立ち上がる人もいながら、各々のやり方でカネコアヤノの世界に酔いしれていた。


 またこれも驚いたことだが、カネコアヤノはMCを一切しない。ずっと歌を歌っている。間髪入れずに歌うので、置いていかれないように私は必死だった。まるで猫のように、彼女はお構いなしにどんどん進んでいく。ただそれもまた、彼女らしさなのかもしれないと最後に気付いた。今の彼女の気持ちを、余計な言葉で飾らずに歌に乗せる。そして、観客へと届ける。観客もまた、各々の方法で彼女へ返す。見えないけれど、互いの気持ちをキャッチボールしていくと、舞台と観客席の境目がわからなくなるように、会場が一体感に包まれていった。その証拠に、最初はまばらに人が立っているだけだったが、最後には全員が席を立ち、彼女の音楽のビートを刻んでいた。これは紛れもなく、彼女の音楽が、私を、皆を、動かしたのだろう。


 あれ以来、私はカネコアヤノの虜だ。プレイリストにもカネコアヤノの名前が加わった。爽快なメロディーと屈託のない歌詞に励まされている。ただ、一つだけなんだか物足りないな、とずっと引っかかっていた。自分自身でも何が問題なのか気づけなかったのだが、このレポートを書いていてやっと謎が解けた。きっとこれは、彼女の大きな歌声だ。公演が始まって最初に驚かされた、彼女の声量。これは、どんなに音量を上げて曲を聞いても、ライブ会場にいなければ味わうことはできない。鋭く、でもどこか奥に柔らかさも残っている彼女の魂の叫び。このご時世柄、なかなか直接歌声を聞く機会に恵まれないことは惜しいくらいだ。月並みの言葉になってしまうが、早く事態が収まり、彼女の音楽を全身で受け止めたい。そう願っている。


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カネコアヤノの公式サイト
ヨスガの特設サイト
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