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JAPAN JAM 2023 day3〜強者達による天下一武道会 in 蘇我〜


 2023年5月4日(木)。4月30日、日曜日の時とは打って変わり、雲一つない快晴模様。何とも清々しい朝だろう。気分を高めて行きたいところではあるものの、この日は、自分が参加するJAPAN JAM 2023の中でも、特に各アーティストのクセが凄い日。また、ほとんどが声出しを煽ったり、観客を踊らせたりする人達ばかり。期待と不安が入り乱れる中、会場の地を踏み入れた。

1.11:30~ ROTTENGRAFFTY (SKY STAGE)

01.ハレルヤ
02.秋桜
03.夏休み
04.THIS WORLD
05.「70cm四方の窓辺」(TVアニメ「ドラゴンボール超」EDテーマ)
06.響く都
07.D.A.N.C.E
08.金色グラフティー

 5月4日、SKY STAGEのトップバッターとして登場したのは、京都から這い上がってきたミクスチャーロック集団、ROTTENGRAFFTY。rockin'onの社長である渋谷陽一氏は、「今日のお客さんも、平均年齢が高いです。一番若い最終日と比較すると、10歳違います。」と朝礼で言っていたが、「朝一からラスボス登場」と言われるほど、風格が凄い。
 神々しいSEで、サポートメンバーにMASAHIKOをGuiterに迎えての登場。一発目に投入されたのは「ハレルヤ」。この晴天が夜まで続く様にとの祈りに加え、今世の中が複雑で、混沌とした世の中を晴らしたいという願いを、魂込めて歌い上げる。もうすぐ50代に突入するとは思えない程パワフルで力強い。それも、BOOWYやBUCK-TICKを彷彿とさせるルックスのNOBUYAといかにもフリースタイルラッパーとしての風格があるN∀OKI。全く違う種類の違う2人から放たれるツインボーカルが、ロットンの楽曲に幅広さを生み出してくれるのだから凄い。
 1曲目の目覚ましソングを入れた後に投入されたのは「秋桜」。哀愁が少し漂う切ないメロディーチューン。いきなり季節をかなり先取りしたこの楽曲が投入されたことに自分は驚いた。しかし、その驚きはまだ終わらない。
「久しぶりの曲やっていい?」
とNOBUYAの呼びかけにより演奏が始まった「夏休み」。晴天の状況下で物凄く映える楽曲。サビでの両手を左右に手を振るのに加えて、コーラスの大合唱。徐々に観客側からの声も大きくなっているのが分かる。なる程。声出しするのを前提にするために、あえて季節を先取りするこのセトリにしたのかと、後で自分は気づいた。
「あと2年で50歳!ROTTENGRAFFTYです!」
と、NOBUYAがMCでも触れると、すかさずN∀OKIが
「それいるか?(笑)」
とツッコミを入れる。彼らも朝からテンションが高い。天候が見方をしてくれているからでもある。
4曲目の「THIS WORLD」では、DrumのHIROSHIが冒頭で立ち上がり手拍子を煽ったり、踊るような仕草を見せて更に会場のLIVE熱を上げていく。
「俺たちは、ただ前を見つめて進むだけでなく、目の前の下にある小さな70cm四方の窓にも目を向ける」
と言って披露されたのが「70cm四方の窓辺」。ドラゴンボールにも起用された楽曲であるが、ロットンの足跡を辿る様にも見える。「秋桜」と同じ様に切なさがありながらもキャッチーな仕上がりに出来ているのも、ロットンの魅力の一つ。ドラゴンボールの主題歌に起用してくれたことに感謝。
 次からの残り3曲は、ロットンの真骨頂とも言える。「響く都」は、メロディーに日本民謡のリズムを漂わせ、歌詞に京都愛が表現されている。それでいて、途中のコール&レスポンスでより会場を一体にしていく。「D.A.N.C.E」では、ディスコナンバーにロックサウンドを融合させるというミクスチャーロックとしての真髄を見せて、会場を一気に青空ディスコへと変貌させた。ここでも、曲中に観客をしゃがませてからのジャンプを組み込んだ。もうこの時点で眠いと感じる観客はいないと思える程、観客側の踊りもコール&レスポンスの声も大きくなっていた。
 ラストに披露されたのは、代表曲「金色グラフティー」。まず、N∀OKIがサビを歌い出すのと同時に、観客もサビを歌い出す光景。それをNOBUYAが歌い繋ぐ光景。野外のあのステージで、歓声と合唱ありでこの光景をみるのも久しぶりである。困惑しそうな感情を抑えて、楽曲の演奏が進んでいく。この場面では、VocalのNOBUYAとN∀OKI、DrumのHIROSHIだけでなく、Bassの侑威地にも演奏面での見せ場を披露し、楽しんでいる観客へ対して、親指を突き出したグッドポーズで返す。本人達がいかにLIVEを楽しんでいるかが分かる。
 こうして朝一SKY STAGEの演奏が終わった。今回、MCでN∀OKIが言った言霊。
「今迄3年間ずっと我慢して来たのを乗り越えて、これからは自分たちが作っていく番だ!」
ロットンは、この3年間でメンバーの一人KAZUOMIがLIVE活動を離れ、プロデューサー活動に専念するという変化があった。しかし、音楽に対する思いはずっと変わらない。NOBUYAとN∀OKI、KAZUOMI、侑威地、HIROSHI、そしてサポートのMASAHIKO、この6人が現在進行系のROTTENGRAFFTYなのである。思うようにいかなかった時期を乗り越えて、JAPAN JAMのSKY STAGEトップバッターを見事にやり遂げた。彼らの歩みはまだ止まらない。この年齢と共に、ロキノン系フェスでの歩みと共に。

2.12:15~ Roselia (SUNSET STAGE)

01.PASSIONATE ANTHEM
02.Dear Gleam
03.overtuRe (劇場版アニメ『BanG Dream! Episode of Roselia I:約束』EDテーマ)
04.残酷な天使のテーゼ  (TVアニメ 新世紀エヴァンゲリオン OPテーマカバー)
05.FIRE BIRD (TVアニメ『BanG Dream! 2nd Season』挿入歌)
06.ROZEN HORIZON

 ロキノン系フェスでは、幅広いジャンルのアーティストが見れるのも魅力の一つ。BUZZ STAGEのMakiは今年のYON FESで見た為、次に自分が見たのはRoselia。アニメにもなった音楽系シミュレーションゲーム「BanG Dream!」から派生して結成された2.5次元ガールズバンドである。黒髪で清楚な見た目でありながら、口調はツンデレお嬢様達というギャップ。先程出たロットンのNOBUYAとは正反対であるかの様。今回、自分は前方エリアで見ることとなったが、彼女達のLIVEスタイルは一体どういったものなのか、始まる前の時点では想像がつかない。
 1曲目「PASSIONATE ANTHEM」のイントロらしき場面から、Vocalの相羽あいな、Guiterの工藤晴香、Bassの中島由貴、Drumの櫻川めぐ、Keyboardの志崎樺音が登場して、そのまま演奏へと突入。曲調は、ゴシック・メタル感が強くて、クラシックとダークさを兼ね備えた感じ。6~7年位活動を行っているだけあって、演奏力も中々上手い。その独特な世界観は、2曲目の「Dear Gleam」でも表されていた。観客の乗り方やコール&レスポンスが、「HEY!HEY!」コール中心だったり、曲中でのジャンプが目立つ等、アニソン枠と括られがちになる。しかし、冷静に考えるとこれはれっきとした、ファンタジーの世界観を重視するV系のLIVEではないかという錯覚に一瞬陥った。3曲目の「overtuRe」では、クラシカルな雰囲気のサウンドに電子音が要素も加わり、より現代チックな雰囲気へと変わった。ただ貫くだけではないという表現力の多さが、Roseliaの良さを醸し出している。
 V系要素が見られたのは楽曲の演奏時だけではない。最初のMCで、各メンバーは演じているキャラが憑依した状態で展開。後で調べて分かったことがある。RoseliaのLIVEでは、MCも全体演出の一つとして考えて構成を組んでいるとのことだった。何とも芸が細かい。
 この日は、ロックフェスということに加えて、ゲームアプリ紹介の意味を込めて、4曲目に「残酷な天使のテーゼ」をバンドサウンドでカバー。原曲は何度も、TVや動画サイトで耳にしたことはあったが、バンドでカバーするとまた印象がガラッと変わる。こんなカバーを聞くのも、たまには良いなと思った。観客のつかみとしてもバッチリである。カバーソング披露の後で、更なる衝撃が走ったのは「FIRE BIRD」の投入。予習した段階では、ラストに披露される楽曲だとてっきり思っていただけに、会場からもどよめきと歓声が上がった。不死鳥をテーマに綴られたこの楽曲は、RoseliaのLIVEでも特に盛り上がるアッパーチューン。
「潰えぬ夢へ 燃え上がれ」
と相羽あいなが放ったセリフに、観客側からも歓声が起こる。数ある場面の中でも、この時をあたかも待っていたかの様である。この曲中では、3番目のサビ前のシーンで、各メンバーが歌いつなぐ場面もあり、Roseliaがこのメンバー5人で一つなのだと感じ取れる様で、尊く思える。そして、ラスサビ前に、また相羽あいながとどめのセリフを解き放つ。
「羽撃こう・・・頂点の夢へと」
これは、Roselia自身がようやく掴んだ、ロキノン系フェスの野外ステージでの決意表明だと、自分は感じた。その言葉は力強く、けれども美しい。青空の舞台でも華麗で美しい世界を生み出すことが出来る力が、Roseliaにはある様に思えた。
 5曲目「FIRE BIRD」の演奏後、後半のMCへ突入。こちらは、キャラを演じていない素の表情で展開。こうしたギャップが見られるのも、LIVEやFESならでは。そこで、キャラを演じる中で、訛っていても違和感を感じないのは誰だというのが話題となり、相羽あいなに注目が上がった。大阪出身である彼女は、いきなりの発言にツッコミを入れていたが、確かに自分も見てみたいと思った。そうこうしている間に、ラストの曲となった。演奏前に、また気合いを入れるためのセリフを放つ。
「Roseliaに全てを賭ける覚悟はある?」
の呼びかけに対して、観客側からの「ウォー」というコールが発せられた後に披露されたのは「ROZEN HORIZON」。「FIRE BIRD」を超える位の名曲がまだあったとは。今日が決してゴールではなく、まだまだRoseliaとして突き進んで行く姿勢が、この楽曲の歌詞に込められていた。曲中のセリフ、
「歌え 新世界へ」
というこの言葉。カッコ良い言葉だなとその時は思った。このLIVEを見て、遂にRoseliaとも縁が出来たということだ。
 全ての演奏を終えて舞台から去る彼女達の姿は、大舞台をやりきった満足げに満ちあふれていた。工藤晴香と櫻川めぐに至っては肩を組んでの退場というのだから、それ程良かったLIVEであったと言えよう。終わった後の観客を見てみると、思ってた以上にロックバンドのTシャツを着ていた観客も見受けられた。近年、ロックバンドがアニメタイアップを歌うというのも多くなった。一方で、ラウドやメタル系に近くメンバーが全員女性というバンドの存在は、実はあまり多くない。それらの需要を取り込んでいるのが、このRoseliaなのだなと改めて感じた。彼女達には、この先もアニソン以外のジャンルでの音楽フェスに是非出てほしい。ロキノン系もそうだが、もし可能であればV系の方にも出て頂けると有り難い。その人達に負けない位の力が、Roseliaにはあるからだ。

3.13:00~ -真天地開闢集団-ジグザグ(SKY STAGE)

01.復讐は正義
02.ゴミはゴミ箱へ
03.忘却の彼方
04.Drip
05.燦然世界
06.きちゅねのよめいり
07.Promise

 JAPAN JAM、昼間の目玉である-真天地開闢集団-ジグザグの禊が、SKY STAGEで始まった。ロットンのNOBUYA、Roseliaと続けてみると、徐々にキャラとしての濃さがより際立って見えるのも面白い。ジグザグも前方エリアで見ることが出来たが、何せノリが完全に独特な集団である。耐えることは出来るのだろうか。
 SEが流れずにいきなり登場した彼ら。5月3日にお披露目となった、洋装スタイルの衣装。姿だけ見れば、まるでRoseliaとジグザグが親戚同士の様に思えてくる。そう疑念を抱く中、1曲目で投入されたのは「復讐は正義」。今の世の中で繰り広げられている争いを綴っているかの様なメッセージソング。なのに、印象的に残るのはV系独自に展開される、ヘドバンと拳を突き上げる応援で、いきなりジグザグの世界に入り込む。次は、5月4日がみどりの日だからなのか「ゴミはゴミ箱へ」が投入された。これも、SDGsに協力することを綴っているのに、ラスサビ以外で印象に残るのは独特のノリ方である。いやぁ、面白い。3曲目の「忘却の彼方」では、ジグザグによるバラードに聞き入る。一旦休まるタイミングがあって良かった。後ろのモニターと見比べながら見ると、この歌の神々しさに心が洗われる様な感覚になった。歌声はもちろんであるが、コロナ渦で人との繋がりが途絶えた中での叫びを綴った歌詞の内容には驚かされる。V系界における米津玄師と言われるだけのことはある。
 最初のMCで、VocalとGuiterを務める命 -mikoto-様が新曲発表に加えてこんなことを告知。
「もうツイッターは世界で流行ってない!今はもう、Tik、何だ。・・・TikTok!なので、TikTokを始めます」
言いなれないのか、少し噛みながらもTikTokを始めることを宣言。世界進出を目論む為らしいが、果たしてこれが吉と出るのだろうか。声出しを煽る場面では、普段喋らない設定のDrum、影丸 -kagemaru-にまじないを掛けて煽ったのに対して、参拝客側からも大声でコールを返す。普段MCでもよく喋っているBassの龍矢 -ryuya-は、煽りが少し抑え気味だったのが少し笑えた。一方、命様に至っては
「イェイイェイイェーイ!」「ちんちんちーん!」
と下ネタ交じりでの煽りで絶好調。そして投入されたのが、新曲「Drip」。ここでは、正統派のギターロックを展開。どこか、WANDSの要素も垣間見えた。上原大史氏と友人なだけあり、ジグザグとWANDSという似ているようで似ていないバンド同士が、こうして共通点を見いだせるのも良い。
 「燦然世界」から、再び盛り上がるパートに突入。参拝客側を座らせて、大ジャンプをさせる展開が2回もあるのがこの楽曲の魅力。しかも、2番目に至っては命様が放つセリフ
「立ち上がれ~」
の歌いだしからの大ジャンプ。禊の熱気がヒシヒシと伝わって来るのが分かる。6曲目「きちゅねのよめいり」では、より一体感が生まれるキツネダンスが繰り広げられる。モニターに一瞬映し出される参拝客側の風景、一見するとシュールだが、何故か感動する場面となる。それは、
「全然泣けるような曲じゃないのに泣きそうになってた(笑)」
と命様が反応した所にも表れていた。
 それで、ラストに披露されたのは、また禊で会えることへの約束の意味も込めた「Promise」。こうして世間に知られる存在となったジグザグが、長く続きますようにとの願いの意味も込められているこの楽曲。身に染みた。
全ての楽曲が演奏し終えた後、
「愚かなるものに、救いの手を~」
と終盤によく言われるセリフを放った命様。本来なら、この後寸劇が始まるのだが、FESの出番では今後寸劇を省略することを宣言。本人達いわく、
「あれやるために1曲削ったりするのがバカみたいだなって思うようになってきた(笑)」
というのが理由。確かに、演奏出来る曲が限られている場においてはそれが正解だ。
 ジグザグの禊を見ていると、ゴールデンボンバーに見られるようなキャッチーさと、命様自身が放つ歌声の幅広さに驚かされる。ロキノン系フェスに呼ばれるのも納得である。自分が感じた点として、Roseliaとジグザグの出番を見てみると、他の出演者と比べて観客が少ない様に見受けられた。もし、ひたちなかでロッキンがあるとすれば、FORESTやLAKE STAGEに立っていただろう。ただ、2組とも独特なノリ方があり、一人一人が使うスペースは割と広いため、BUZZ STAGEだったとしたら、入場規制がより厳しいものとなっていた。それを考慮すれば、今回のタイムテーブルの構成は正解だった様に思えた。本日も、良い禊を終えることが出来て、良い気持ちとなった。

4.13:45~ Hump Back (SUNSET STAGE)

01.LILLY
02.クジラ
03.ひまつぶし
04.拝啓、少年よ
05.ティーンエイジサンセット
06.僕らの時代
07.また会う日まで
08.がらくた讃歌
09.番狂わせ

 バンド色のインパクトが強い3組の後、Twitterで感想を呟きながら見たのはHump Back。重厚感があり、振り幅の大きい楽曲達を聞いた後だと、SUNSET STAGEで聞く正統派のギターパンクロックが、とても心地よく聞こえる。1曲目の「LILLY」と2曲目の「クジラ」を聞いた瞬間、この青空を突き抜ける様な真っすぐな歌詞とサウンドが響き渡る。野外LIVEで鳴らすのに相応しい。3曲目「ひまつぶし」は、リズムに乗せながら踊るのが楽しいダンスナンバー。自分が抱いた感想としては、チャットモンチーのサウンドを更にギター強めにしたという印象を受けた。曲中にあるメンバー同士のコーラスも、テンポが良くて非常にサウンドと合っているのが良い。
 最初のMC、Vocalの林萌々子はMCで4月からの新生活に対してこんな言葉を呼びかけた。
「人が輝き続けることができる魔法があることを知ってる?大好きなものがあるっていうこと。」
普段の生活では、大好きなものがあるからこそ、どんなに辛い状況があっても頑張ることが出来る。挑戦を後押ししてくれる優しい言葉である。そんな前向きな言葉から投入されたのが「拝啓、少年よ」。MCでの言葉を素直に表現している楽曲。弱気になっている少年に対して、大丈夫だと呼びかける歌詞。ストレートで真っすぐ突き刺さる感じが良い。その続きと思われる楽曲「ティーンエイジサンセット」は、若者の旅立ちに対する応援歌。パンク要素が更に増していくのもそうだが、曲中でのコール&レスポンスがこの曲の良さを更に醸し出す。
 中盤のMCで、5月7日武道館で「打上披露宴」を行うことを宣言したHump Back。ワンマン公演を控えていながら、今回JAPAN JAMへの出演を決意した理由を、こう発言した。
「普通は武道館くらいのとこのワンマンが直後に控えてたらそっちに集中するために出ないんだろうけど、今年も呼んでもらったのが嬉しすぎて、すぐ「出ます!」って言った(笑)」
それは、Hump BackがLIVE好きであることの証明であろう。例え綿密な日程を組んでいても、JAPAN JAMに呼ばれるのが嬉しくて引き受けるとは。余程嬉しかったというのが、演奏しているサウンドでも観客側へ伝わって来る。「僕らの時代」は、疾走感溢れるパンクサウンド。歌詞の中で、今のこの瞬間を楽しめというHump Backなりのメッセージでもあると、自分は受け止めた。「また会う日まで」では、LIVEで出会えたことへの有難さを、バラードに乗せて歌っていた。こうした魔法に巡り合えたことが、夢ではなく現実のものとして再びなったことへの喜びを噛みしめる瞬間でもあった。
 少年少女に向けて歌っている楽曲が多いHump Back。8曲目の「がらくた讃歌」でも、その若者の挑戦を肯定するメッセージ性は貫いていた。
「忘れないでいて 少年少女よ 命あるだけで
素晴らしいんだ 美しいんだ
やりたいことだけやって死にたいわ」
こんな前向きな言葉を聞くことが出来たら、どれだけの人が救われるのだろうか。それ程、若者以外も含めた幅広い人達へ響く歌詞だ。LIVEはここで終わらず、時間が余ったからと急遽「番狂わせ」まで披露。こちらは、自分達が生き抜いてやるという強い意志を示した楽曲。いかにもパンクだ。昨年、MUSIC COMPLEXで初めて自分はHump Backを見た。正統派のギターパンクロックで真っすぐな歌詞とメロディーを奏でる彼女達の存在は、10-FEETにも通ずるものがある。自分もおもろい大人になりたいし、若者が不安なことに躊躇しない世の中にして生きたいと、その時思えた。

5.14:30~ HEY-SMITH (SKY STAGE)

01.Endless Sorrow
02.Dandadan
03.Soundtrack
04.Fellowship Anthem
05.California
06.Be The One
07.Over
08.Inside Of Me
09.Summer Breeze
10.We sing our song
11.Let It Punk
12.I’m In Dream
13.Come back my dog

 ロキノン系フェスでお馴染みで、最近はメインステージでの出演が続くHEY-SMITH。スカパンクロックの時間である。必ず聞くとテンションが上がるSEと共にメンバーが登場し、最初に披露されたのは「Endless Sorrow」。ホーン隊であるTrumpetのイイカワケン、Tromboneのかなす、Saxの満によるサウンドが特徴的ではあるが、実はこの曲よく歌詞を見てみると、反戦のメッセージが沢山盛り込まれている。普段英語で聞いている間はあまり気づかない見落としポイントである。曲中での合唱シーン
「NO MORE WAR!」
のフレーズと後ろに映し出される画面で、よりメッセージ性が強調される。改めて反戦への思いを強くさせてくれる様な始まりである。2曲目の「Dandadan」は、1曲の中に緩急が両方組み込まれているダンスナンバー。だが、あまりにもテンポの緩急が激しすぎて、踊るのは相当忙しい。「Soundtrack」では、Vocal&Guiterの猪狩秀平とBass&VocalのYUJIとの掛け合いが、爽快に響く。「Fellowship Anthem」では、DrumのTask-nが鳴らすリズムが心地よい。安定していて踊りやすい。この晴天下に歌うのに相応しいアッパーチューン「California」が投下されると、サビでの大合唱が会場中に響いた。声出しでLIVEを見れているのが嬉しい。こうして、多幸感に包まれていると、メッセージ性が強い「Be The One」へと突入。コロナ渦に対する疑問点を投げかけてくれる様な歌詞と、それを重く感じさせない様な真っすぐな姿勢のサウンド。技術と表現力の高さに度々驚かされる。次の「Over」では、失恋に対する悲しさと悔しさを、猪狩が放つギターサウンドと満による魂の叫びで表現。「Inside Of Me」は、間奏でホーン隊が出す音に対して、後ろのモニターに映し出される振付を元に踊るダンスチューン。サークルモッシュが出来ない現場を意識して作られたと思われるが、観客側では完璧に踊っている人の姿も見られた。現場にいる人達誰しもが楽しめる工夫としては良いと思った。
「みんな歌ってるか~」
と猪狩秀平の呼びかけに、大声で答える観客たち。
「声出しがOKになってから、雰囲気が全然違うというのが、ステージ上からだとハッキリ伝わってきます。」
と昨年までとの違いに反応。アーティスト側も嬉しさを感じているのが伝わってくる。更にその嬉しさを爆発させたのが、「Summer Breeze」。この先訪れる夏への期待を、YUJIが放つ思いっきり感情を込めた爽やかな歌声が運んでくれた。
 ホーン隊の演奏とヘドバンが激しさを増す「We sing our song」。全員でタイトルコールをするだけでなく、満に至ってはステージ上で転げ回るという珍プレーが発生。「Let It Punk」では、このバンドが大切にしているパンク魂を前面に押し出した楽曲を演奏。メンバー同士が、互いの音をかき消さずに尊重し合っている姿勢が、この曲で垣間見れた様な気がした。すると、突然猪狩がYUJIとTask-nに何やら耳打ちし始めた。すると、
「まだ時間あるから1曲追加しまーす!」
との宣言から、「I’m In Dream」を急遽追加で披露。この曲は、とても希望がもてる楽曲。それは、コロナ渦で一度ダメージを受けたLIVEシーンを更に盛り上げたいとも、戦争が無い平和な世界にしたいとも受け取れる。このJAPAN JAMで聞けて良かった。
 そして、ラストに披露されたのは「Come back my dog」。HEY-SMITHのLIVEではお馴染みのパンクロック。短い曲の中に、このバンドのの特徴全てが詰まっているかの様な曲。もし、サクッとHEY-SMITHの曲を紹介したいとなったら、複数ある中の一つに、この曲を勧めるだろう。自分がいる場所では見えなかったが、別の離れたエリアではサークルモッシュが発生。ただ、本人達は決してサークルモッシュを煽ったりせず、ひたすら音を鳴らし続けていた。それだけ、音楽だけでも勝負が出来るバンドだからこそ、ロキノン系のフェスに呼ばれ続けているのだなと、改めて実感した。英語の歌詞に隠された重要なメッセージとパンク魂が炸裂のサウンド。やはりHEY-SMITHはカッコ良い。

6.15:15~ Fear, and Loathing in Las Vegas (SUNSET STAGE)

01.Get Back the Hope
02.Chase the Light! (TVアニメ「逆境無頼カイジ 破戒録篇」OPテーマ)
03.Rave-up Tonight (アーケードゲーム「機動戦士ガンダム エクストリームバーサス マキシブースト」OP楽曲)
04.Tear Down (実写映画「バイオレンスアクション」挿入歌)
05.LLLD
06.Dive in Your Faith (パチンコ機種『ぱちんこ いくさの子』2nd メインテーマ)
07.Virtue and Vice (TVアニメ「極黒のブリュンヒルデ」OPテーマ)
08.Just Awake (TVアニメ「HUNTER×HUNTER」第1・2クール(2012年版) EDテーマ)
09.Love at First Sight

 Fear, and Loathing in Las Vegas、自分は今年、彼らが主催するMEGA VEGASへ3月に2days行ったばかりであるが、まさかJAPAN JAMでも見れるとは思わなかった。太陽が傾き始める中、SUNSET STAGEで聞く電子要素満載のラウドロック。この時間、MEGA VEGASの時とはどう攻め方を変えて来るのだろうか。
 オープニングのSEが鳴り始めると、メンバーが勢いよく登場。最初に登場したVocal&KeyboardのMinamiを筆頭に、GuiterのTaiki、BassのTetsuya、DrumのTomonori、VocalのSoと続く。いつも、ファッションの面においてはTaikiに注目が集まりがちになるが、今回は比較的抑えめだった。それ以上に目立っていたのがTetsuyaのTシャツ。何せ、前面にプリントされていたのが、μ's(ラブライブ初期)のメンバーである小泉花陽だったから。
「この日、楽曲提供をしたバンドリ発のバンドが居るのに、何故ラブライブを着てきた!? (笑)」
とツッコミを入れたくなりながらも、1曲目「Get Back the Hope」からLIVEがスタートした。コロナ渦からのLIVEシーン復活への願いを大いに綴ったアッパーチューン。Tetsuyaによるスラップシーンが目立つ中、Soによる間奏でのGuiter速弾きで観客を驚かせた。2曲目「Chase the Light!」では、イントロがかかった瞬間から歓声が起こる。これは、曲のテンポや構成が速く移り変わる。ラスベガスの入門編として必ず聞くべき楽曲の1つであろう。
「今日の、降水確率0%!! だから空も綺麗だな!! ということで、みんなの体力も1度、使い切ってもらいます!!」
とSoからの強気宣言の後に投下されたのは「Rave-up Tonight」。このJAPAN JAMが一気に、青空ディスコ(約2回目)へと変貌を遂げる。再びTetsuyaによるスラップシーンが目立ち、Minamiによるシャウトを交えたステージ上での暴れっぷりは、観客側からみてもその興奮度合いが伝わってくる。バイオレンス映画の挿入歌になった「Tear Down」では、TomonoriのDrumとTaikiのGuiterサウンドが強調される。「LLLD」では、電子音の要素を残しながら、Minamiのラップが加わった比較的落ち着いたサウンドにより、ディスコ感が更に増していく。
 次に披露されたのは、「Dive in Your Faith」。曲紹介の前Soは、
「ここで、世界初公開となる新曲やります!とは言え、「知らない曲ばっかりだよ!!」っていう人、ごめんなさい(笑)。知らん人にとっては、全部が新曲の様に聞こえるかもしれないけれど、知らない曲ばかりでも踊れる、そんなハッピーな日にしたいと思います」
と、フォローを交えて発言。FESは様々なジャンルのファンがそろう場所。だからこそ、聞く曲全てが新曲だという場面も出くわす。それさえも肯定してくれるのは、観客側としても有難い。肝心の楽曲は、ダンスビートが主となっている構成で、途中Taikiに加え、SoとMinamiもGuiterを弾くというトリプル体制での演奏。冒頭でも披露された驚く場面が中盤でも用意されていたとは。ラスベガスの進化は止まらない。7曲目に披露されたのは「Virtue and Vice」。両手を上で合わせて、左右に動かすという体操的な要素は、激しいだけではないキャッチーさがあるという、打首獄門同好会に似たような印象を持つ。
 終盤のMC中に、15周年を記念して9月に日本武道館でワンマン公演を行うことを改めて発表。「Just Awake」も、そんなバンドとしての歴史を感じさせてくれる楽曲の1つ。アニメタイアップなのが影響しているからか、日本語の歌詞が多めで、従来によく見られる曲の変調も少ない感じが、今となっては新鮮に聞こえる。曲中にあるフレーズ
「忘れないで」
という言葉、きっと今日のステージを見たら忘れることが出来ない程、インパクトが強いものとなった。そして、ラストに投入されたのは、ラスベガスが世に知られるきっかけとなった1曲「Love at First Sight」。FESで聞けたのも本当に久しぶり。どんな数多くラスベガスの楽曲を聞いていても、結局自分が好きだと感じるのはこの曲。また新たな出会いがここで生まれた。
 これまで、ロックのジャンルに囚われず、アイドルやアニソン界隈の人々までもを虜にして来たラスベガス。それは、この日集まった観客達の楽しみ方にも現れていた。願わくば、もし次にまたロキノン系のフェスに出る機会があれば、是非後輩バンドであるRAISE A SUILENとの共演をお願いしたい。あのコラボをMEGA VEGASで終わらせるのはもったいない!

7.16:45~ MY FIRST STORY (SUNSET STAGE)

01.MONSTER
02.ALONE
03.ACCIDENT
04.I’m a mess
05.君のいない夜を超えて
06.モノクロエフェクター
07.Zero Gravity
08.REVIVER
09.不可逆リプレイス (TVアニメ「信長協奏曲」OPテーマ)

 ラスベガスのLIVEが終了した後、自分はTOMOOの音漏れを聞きながらフクダ電子アリーナで約50分程の休憩をした。日陰となるスタジアム内に吹いた風は、爽やかで気持ち良かった。夕暮れ時のSUNSET STAGEに現れたのは近年におけるラウドロックシーンを牽引するバンドの一つ、MY FIRST STORY。VocalのHiroが色々なメディアに出演しているからか、面白いソロのタレントとしての側面が見られがちになるが、あくまでも本業は音楽。初めて彼らを生で見た時から約6年が経過する。どんな成長を見せてくれるかに期待を寄せ、LIVEが始まった。
 最初、SEと供にGuiterのTeruにBassのNob、DrumのKid‘zが先に現れて、「MONSTER」を1曲目に投下。曲中にラップパートやシャウトの箇所が入れ混ざるというミクスチャーロック感は、徐々に積み重ねてきた大物感を漂わせてくれるかの様だ。「ALONE」では、Hiroが持ち味としているハイトーンボイスが会場内に響き渡った。その歌声は「ACCIDENT」でも発揮された。マイファスにおける1曲目のダンスナンバーであるが、Nobが鳴らすBass音が良いアクセントとなって、観客達を揺らしていく。
 4曲目に披露された「I'm a mess」。Hiro自身がコロナ渦に対する閉塞感に加えて、無理やり終わらせようとした世間に対する皮肉を綴ったメッセージソングである。ただ、この曲が広まることとなったきっかけの1つは、SNS上にアップロードされた「作ってみた動画」である。その評判が良かったが為に、マイファスとその楽曲が世間に広まるという面白い現象が起きた。それに気づいた本人達が、自身達の楽曲に乗せて「作ってみた動画」を投稿して下さいと便乗までしたというのだから驚きである。何はともあれ、この「I'm a mess」という楽曲が、後世に残るコロナ渦を象徴となったのである。
 5曲目に披露された「君のいない夜を超えて」も、コロナ渦や遠距離で中々相手と会えない状況の辛さを、メロディアスに切ない感じに仕上がっていた。感動的な場面に浸るのも束の間、「モノクロエフェクター」からは、再び盛り上がるラウドロックのパターンへと移行。曲中での煽りや大ジャンプで、一気にマイファスのロックサウンドに酔いしれていく。「Zero Gravity」では、HiroとNobによるシャウトの掛け合いに加えて、会場全体でタオルを回し合うという名場面を展開。楽曲がいかにも神々しいイントロなだけあって、空が一時期怪しい雰囲気に見舞われたのは気のせいだろうか。
 終盤に披露された「REVIVER」は、復活や蘇りが主なテーマとなっている。そして、ラストに披露された「不可逆リプレイス」は、新たな人生のスタートを綴った楽曲。この2曲が何故、今回のLIVEで終盤に披露されたのか。それは、MY FIRST STORYというバンド名の様に、このLIVEが何かを始めるきっかけになって欲しいというメッセージではなかろうか。「不可逆リプレイス」の曲中MCで、Hiroは観客側へこんなことを呼びかけた。
「俺らが全力で演奏してるんだから、お前らも全力でかかってこい!!」
デビュー当時と比較して、メンバー体制もLIVE環境も変わった。しかし、その状況に落ち込むだけでなく、各メンバーは上に上がろうと必死に努力を重ねて来た。Hiroの歌声についても、最初は聞こえない位に覚束ない時期もあった。それから時を超えた現在では、巧みに色々な声を使い分けながらも、安心して聞いていられる。それも、今こうして生きているという証である。

8.17:30~ 10-FEET (SKY STAGE)

01.VIBES BY VIBES
02.SHOES
03.RIVER
04.ハローフィクサー
05.蜃気楼
06.その向こうへ
07.第ゼロ感 (劇場版アニメ「THE FIRST SLUM DANK」EDテーマ)
08.ヒトリセカイ
09.back to the sunset

 結成25年超のベテランでありながら、まだまだ進化が止まらないモンスターバンド、10-FEET。昨年出したSLUM DANKとのタイアップが、物凄く売れるなんて誰が想像しただろうか?しかもそれが韓国や中国といったアジアで特にヒットしたのだから。末恐ろしい。
 いかにも勇者が登場しそうなSEが流れての登場。ドラゴンクエストⅢでも流れた「そして伝説へ」を聞くと、この後起こる伝説級のLIVEへの期待と、抑えきれない高揚感を高まってくる。そんな中で1曲目に披露されたのが「VIBES BY VIBES」。いきなりのアッパーチューンである。この曲が流れた瞬間における観客達の飛びはねや踊りっぷりは尋常じゃなかった。Vocal&GuiterのTAKUMAが長い笑い声を発した後に流れた「SHOES」では、BassのNAOKIとの掛け合いがテンポ良く進んで、何とも楽しそうに見えた。長めのイントロが流れる「RIVER」では、今回もご当地要素が沢山盛り込まれた。
「今日蘇我で一つになる」「利根川」「養老川」
このJAPAN JAMが行われている千葉に関するフレーズを言ってくれること。地元民にとっては何とも嬉しい瞬間であろう。
 TAKUMAが水分補給やGuiterの調整をする間に、DrumのKOUICHIとBassのNAOKIが繋ぎのMCをすることに。2人とも声出しを煽るのに徹していたが、「おい、お前ら。声ちっちゃいぞ!」
とかまってちゃんの対応をしていたのは、余程観客側からの声が聞けるのが嬉しいという現われであろう。
 4曲目に披露された「ハローフィクサー」では、デジタル音と組み合わせたギターロックながらも、オシャレかつ優雅な音に身を任せる。観客達の涙を誘うかの様な感動曲「蜃気楼」。曲中のコール&レスポンスや、コーラス部分を合唱すると、その歌詞の良さがより身体に染み渡ってくる。「蜃気楼」の後に続いた「その向こうへ」では、朝一に出たロットンが「金色グラフティー」の時に言ったフレーズ
「お前の見ている世界は」
を再び放ち、物語性のある流れを生み出した。曲の終盤で観客を座らせた後、結局ジャンプせずに演奏を終えた所には笑ってしまったが。
 この日来ていた観客の多くが、10-FEETの音楽をLIVE以外で耳にするきっかけとなった楽曲。映画SLUM DUNKリメイク版に起用された新しい代表曲「第ゼロ感」。このイントロが流れた瞬間、観客達が大きな歓声を上げていたのを今でも覚えている。EDM要素を取り入れた疾走感のあるサウンドと、曲中におけるコール&レスポンスの融合。これが組み合わさると、LIVEに来ているのをより実感する。凄く良い良い曲を制作してくれた。この曲が聞き終わり、SKY STAGEを離れようとする観客に対して、TAKUMAがMCで言及。
「今、会場から帰ろうとしてる人に忠告です。SLUM DUNKの曲を聞いてすぐ去ると、爆発する仕組みになってるんで!」
サービス精神旺盛で、まだ自分達の曲を聞いて欲しいという思いから発せられた言葉。面白い。
 従来、トリを務めないLIVEにおいては、「ヒトリセカイ」がラストの曲になることが多い。しかし、この日は時間が余ったとのことで、急遽「back to the sunset」を高速で披露。自分は初めて聞いたのだが、この夕暮れ時にまだ終わってほしくない気持ちを、短い時間の中で端的に表現されていた。たまにはこんな終わり方も良いかもしれない。
 どんなに世間から注目が集まっても、現場で沢山の曲をLIVEで演奏することにこだわって来た10-FEET。そので度々生まれる感動があるから、LIVE一つひとつが魅力的に見える。自分は今迄、年越しアクトや大トリを務める場面も含め、多くの名場面を目の当たりにして来た。しかし、もしワンマン公演に足を踏み入れたら、どんな違った景色を見せてくれるのだろうか。次、ワンマンがあったら、申し込むのを検討してみたい。

9.18:20~ UVERworld (SUNSET STAGE)

SC.ナノ・セカンド
01.Don’t Think.Feel
02.IMPACT
03.Touch off(TVアニメ「約束のネバーランド」第1期OPテーマ)
04.PRAYING RUN
05.AVALANCHE
06.在るべき形
07.ピクマリオン
08.EN
09.Theory

 5月4日のトリは、相反するスタイル2組がLIVEを行う。SUNSET STAGEの大トリであるUVERworldは、曲の演奏以外でも積極的に伝えたい言霊を言うスタイル。前方エリアへ移動する最中、リハーサルで「ナノ・セカンド」が演奏されたのだが、その段階から大合唱が発生。待機している間でも、彼らのファンであるCrew達の気合いと熱が物凄く伝わって来る。紹介映像が流れた後、まずはDrum真太郎のソロ演奏からLIVEがスタート。ハッキリと聞こえる1つひとつの振動が、これから始まるLIVEへの期待を加速させて行く。次にSaxの誠果、Bassの信人、Guiterの克哉と彰が登場して、演奏の準備が整った後、最後にVocalのTAKUYA∞が走って登場。
「好きなようにやれ!そして俺に指図するな!!」
との強気発言から始まったのが、「Don’t Think.Feel」。一発目から気合いが入りそうな楽曲に、更に大きなコール&レスポンスや大合唱が発生。夕暮れから日の入りという、野外の風景でも特に魅力的な時間にLIVEをするのだから、楽しくならない訳が無い。その熱気は「IMPACT」でも続く。
「今までフェスとかで、UVERworldが出ても見て来なかった奴らも、今日たまたま見てくれてるかもしれない。そいつらにとって、今日が最初で最後かもしれない。一期一会、今日ここで全力を出し切るLIVEをやります!」
と、最初のMCでTAKUYA∞がこのSUNSET STAGE大トリを務める上での覚悟を伝えた。それに大声で反応する観客達。Crewを始め、このSTAGEに集まった全ての観客で作り上げるLIVE。まるで少年ジャンプの1作品に出て来る漫画のシーンを見てるみたいだった。「Touch off」は、アニメ「約束のネバーランド」の主題歌なだけあって、後ろの映像もその世界観に合わせた様な作りとなっている。後ろに映し出される歌詞と一緒に見ると、言霊にこだわるUVERが持つLIVEの魅力が更に増す。LIVE中、TAKUYA∞の歌声が時々苦しくなる場面がいくつか見られた。その理由について、本人はこう説明した。
「今日、会場に着いてからcoldrainのMasatoくんに、「どうやったらあんなに綺麗なシャウト出来るの?」と聞いてみたんだよ。俺声が枯れちゃうから。そしたら、「いや、TAKUYA∞くんはそのままが良いんですよ。」って。なので今日は、いつもより声出します!」
と強気宣言。親交のあるロックバンドからの助言があったからとは。coldrainのMasato氏よ。あんたも、何て優しい悪魔なんだ。宣言の流れから上手い形で「PRAYING RUN」へと繋がって行く。この曲中でよく流れるフレーズ。
「全部やって確かめれば良いだろ!」
夢や目標へ向けての過程を綴ったこの曲は、叶うか叶わないか問わず、何か努力をした道のりが大事だというのを教えてくれる。日常で沢山経験していることだからこそ、より共感が持てる。
 「この3年間で、声が出せなくてもダイブ出来なくても、音楽は最高だと分かったから、それを証明するライブをします!」
の言葉から繋がった「AVALANCHE」。コロナ禍を経験して、以前の状態に戻るのではなく、また新しく世界を創り出して行くというのを、ほとんど文字で構成されていた映像と、白を基調とした照明で表現されていた。神々しかった。
「音楽で飯を食っていくという話をしたら、周囲は絶望したけれど、俺達6人は絶望しなかった」
と、自分達が進んできた音楽人生を正解へと導いた「在るべき形」。周囲からの批判や圧力に屈することなく、自分自身で努力し続けて、答えを出すことが在るべき形なのだ。そのことを、この曲は教えてくれる。
 今回のUVERworldでのLIVEで印象に残ったのは、7曲目の「ピグマリオン」からラストの「Theory」に至るまでの場面である。人を失うことの辛さと、自分とか他人とか問わず、心の弱さに向き合うことの大切さを綴った「ピグマリオン」。悲しんでいる人がいたら、まずは抱きしめて欲しい。そして、失った人のことを忘れないで欲しい。誰しもが、誰かにとって大切な人なんだということ。前日の5月3日が憲法記念日なだけあって、内容がとても心に響いた。
 今年、7月末にUVERworldは日産スタジアムで2daysワンマン公演を行う。しかも、その中の1日が男祭り。とてつもない挑戦である。実は、雨バンドであるが故に、ワンマン公演が中止の可能性もあるのを示唆した。しかし、その危険性があろうとも、果敢に挑戦しようとする理由を、TAKUYA∞はこう話した。
「もし大雨で中止になっても、またパンデミックで出来なくなったとしても、構わない。大きな目標に向かっていく、その姿を見て欲しいから。」
今まで、フルメンバーでの活動が出来なかったり、中々ロック系のフェスに呼ばれなかったりした中で、無茶と言われる挑戦に果敢に挑み続けて来たからこそ、その言葉には説得力がある。彼らにとって、音楽はビジネスなんかじゃなく、本当に音楽=人生なのである。その言霊を、さらにラップパート込みで歌ってくれたのが「EN」。
「誰かを指差し避難する 大概その指はそいつより汚れてる
 俺達が生きてる間に 差別も犯罪も戦争も無くならねぇ」
この曲中では、今を生きる上で逃れられない現実を正直に伝える場面も数多くある。それでも、この曲が好きだと思えるのは、現状を変えるための強くて前向きになれるこの歌詞があるからである。
「愛を粗末にする奴は 何に勝ったって一生負け組」
「願う以上に自分で変えろ!」
「好きなものを愛せ 忘れるな! お前の人生はお前の為のもの!」
「お前を傷つけた全ての死んで欲しい奴に寿命で勝て!」
ミュージシャンの中で、日本政治や世間に対しての反抗やメッセージを直接訴えてくれる存在の一つ。民衆側におけるヒーローとも言える存在。だからこそ、途中で合唱出来るパートで、大声を出して一緒に歌いたくなる。少なくとも、SUNSET STAGEに集まった観客達には、UVERworldが伝えたい思いがきっと届いているはずだ。
 今回、ラストに披露されたのは、このUVERworldが大切にしているLIVEのことを素直に綴った「Theory」。
「俺は勝手に俺たちのことを好きなやつの人生も背負ってると思ってる!10-FEETが好きなやつ、ASIAN KUNG-FU GENERATIONが好きなやつ、ROTTENGRAFFTYが好きなやつ!みんなそのバンドに思いを乗せろ!」
この言葉はとても嬉しい。好きな音楽を愛し、好きなバンドやアーティストを応援し続ける。それが例え、障害を負ったとしても関係ない。JAPAN JAMのSUNSET STAGE大トリとして、LIVEを愛する者代表として、とても素晴らしい言霊を最後に残してくれた。本当に有り難い。
 最後、改めて日産スタジアムでのワンマン公演開催のモニター画面が表示されて、演奏が終了。締まりの良い大トリとなった。この6人で始めた音楽人生、紆余曲折の先に見えた大観衆を前にした光景は、とてつもなく大きく誇らしいものとなった。7月末、日産スタジアムでのワンマンを終えた後、このレジェンド達はどんな姿になっているのだろうか。音楽=人生という信念がある限り、UVERworldはまだ突き進んで行く。

10.19:20~ ASIAN KUNG-FU GENERATION (SKY STAGE)

01.Re:Re: (TVアニメ「僕だけがいない街」OPテーマ)
02.リライト (TVアニメ「鋼の錬金術師」第4クール OPテーマ)
03.宿縁 (TVアニメ「BORUTO~NARUTO NEXT GENERATIONS」第12クール OPテーマ)
04.ソラニン (実写映画「ソラニン」主題歌)
05.転がる石、君に朝が降る (TVアニメ「ぼっち・ざ・ろっく」第12話EDテーマ(約束バンドによるカバーver)
06.柳小路パラレルユニバース (劇場版アニメ「四畳半タイムマシンブルース」主題歌)
07.今を生きて
08.Be Alright
EN.君という花 〜 大洋航路

 5月4日、LIVEの強者達が多く集結したこの日、SKY STAGEの大トリを務めたのは、ロキノン系フェスでも常連となっているASIAN KUNG-FU GENERATION。アジカンのVocalを務める後藤正文(通称Gotch)も、社会へ対する問題提起や政治批判等を積極的に行う人である。しかし、直接的にMCでもメッセージを訴えかける前者とは違い、こちらは曲をひたすら演奏するスタイル。訴えたい内容については、演奏する曲中の歌詞で上手く表現されている。実に文学的な側面があるレジェンド達である。
 前方エリアで待っていると、紹介映像が流れて、静かに登場するバンドメンバー。Vocalの後藤正文、Guiterの喜多建介、Bassの山田貴洋、Drumの伊地知潔に加えて、サポートメンバーとしてChorusのAchico(from Ropes)とKeyboardのGeorge(Mop of Head)の6人が揃い、最初に演奏されたのは「Re:Re:」。Drumのソロに続いてBass、Guiterへとセッション的な形で長い冒頭部分が演奏される楽曲。このイントロを聞くと、アジカンのLIVEに来ているなと実感する。周囲の歓声や「HEY!HEY!」コールも自然に起こる風景は、アジカンの登場を何よりも待っていた証拠でもある。そして、今日も忘れない思い出を心の良い傷として刻むのである。Gotchのイントロ演奏が流れた途端に歓声を挙げたのは、彼らの代表曲「リライト」。もちろんサビでは大合唱が起こる。序盤にして、既に盛り上がりの最高潮に達したかの様に見えたが、曲中のMCでGotchがその対策であるリライト警察を久々に発動すると宣言。
「「リライト」終わって、帰っても良いけど出口付近で尋問されるからね(笑)棒振ってる人に(笑)
なんで、そういう人はより一層大きな声で歌ってください」
この発言の後でコール&レスポンスを繰り広げられたのだが、時よりマイクから離し、耳を当てて大合唱を聞こうとする仕草が印象的。合唱を聞く感じだと、それ程帰った客は居ない様だった。最新シングルで、アニメ「BORUTO」の主題歌にもなっている「宿縁」では、NARUTOから紡いできた歴史を感じさせてくれる様な歌詞とギターサウンドが上手く重なり合う。淡くて切ない感情を綴った「ソラニン」では、KeyboardとChorusが良いアクセントとなり、漫画に出てくる青春の1ページを思い起こさせてくれる。「ソラニン」が流れた時の歓声も大きかったが、それ以上の歓声が挙がったのは、「転がる石、君に朝が降る」。昨年話題となったアニメ「ぼっち・ざ・ろっく」で、劇中バンドである「約束バンド」が文化祭の時に演奏した楽曲。発表されたのは約15年前であり、簡単に解釈出来る歌詞の内容では無い。それが、「ぼっち・ざ・ろっく」という物語を通して、この曲がお茶の間へ浸透し、劇中バンドだけでなく、アジカンがまた注目されるという好循環も起こった。音楽は世代と世代を繋ぐきっかけ作りをもしてくれる。その象徴の一つとして、この曲が挙げられるであろう。
「出来れば世界を僕は塗り変えたい
 戦争をなくすような大逸れたことじゃない」
例え、それが大きな目標でなくても、小心者であると自覚していても、何か心を動かすきっかけがあれば世界は変えられる。物語を紡ぐことは出来るのだと、この曲は教えてくれる。反戦の歌としても捉えることが出来る曲であると、自分は思った。
 中盤のMCで、昨年からレコーディングしていることを度々口にしていた「サーフ ブンガク カマクラ」の完全版が発売されることを発表。
「千葉から鎌倉は遠いけれど、歌詞とかサウンドの至る所に僕らの過ごした青春が刻まれてます」
との発言から演奏されたのが「柳小路パラレルユニバース」。自分は、東京の中でも神奈川寄りに住んでいるため、どちらかと言えば鎌倉の方が馴染みがある。レトロな小さい路地を突き進んだり、海風に吹かれながら踊る様な歌詞を聞くと、正に鎌倉のあの風景を思い出してくれる様な感じがした。Drum音が強く響く「今を生きて」では、再び一部の歌詞を合唱し、ラストに向かって会場全体を明るい雰囲気にしてくれた。ChorusのAchicoが鳴らしたTambourineの音や仕草から見ても、その様子が分かった。
「夏も秋も来年以降も、こうした場所があり続けますように」
とGotchが音楽LIVEに対する祈りを込め、ハンドマイクを片手に歌うのが「Be Alright」。このLIVEが終わり、離ればなれになったとしても、理不尽な現実に遭遇したとしても、ここでの思い出を忘れないで欲しい。大丈夫だと優しく包み込んでくれる、とても清々しい気持ちになった。
 一旦メンバーが袖に捌けた後、再びSTAGE上に登場。以前、ENCOREをせずに終わったLIVEもあったみたいだが、今回はきちんとENCOREをしてくれるみたいだ。
「このフェス、時間押したり客席入ると特に1番怒られるのよ(笑)。俺たちがアンコール出来ずに終わるのはそういう時。1度事務所の社長が滅茶苦茶怒られた時があるんだけど、それはDr.DOWNERのメンバーが客席に降りたときだった(笑)」
Gotchがアンコール明けにとても面白いエピソードトークを展開。ベテランバンドは違うな。エピソードトークのネタが豊富だ。
「エクストラタイムを頂きましたので!!」
と発言した後、ENCOREで披露されたのは「君という花」。もちろん、間奏での「らっせーらっせー」の合唱込みで。そこでもサビでの大合唱が発生。
最後に「大洋航路」の歌詞を盛り込んだアレンジは、今の混沌として先行き見えなくても、大丈夫だというYELLを盛り込んだ良い演出であると思えた。
欲望と絶望がループする世の中でも、その心情を音楽で表現していく。その覚悟と決意表明を見せてくれた様な楽曲。演奏を終えて、6人で肩を組んでお辞儀をする様子は、全ての力を出し切った感じがして、観客側から見ても嬉しく思えた。時代が移り変わっても、何かしらの楽曲が注目されて、長い間愛されているアジカン。例えきっかけが、アニメやドラマの主題歌であっても、LIVEでのパフォーマンスであっても、もしくは個人が発する社会的な活動の姿勢であっても、その人達を魅了する力があるのが、アジカンの素晴らしい楽曲達である。これからも、自分達はアジカンの音楽を聞いて行くだろう。この蘇我という土地、いや、日本や世界問わず、多くの土地に君という色の花を咲かせるために。

後書き

 次の5月5日もJAPAN JAMへ参加する為、この日は蘇我より少し先へ行った五井で宿を取った。夜は、晩酌を兼ねた夕飯を食べたのだが、クセの強いアーティスト達のLIVEを楽しみ尽くしただけあって、呑んだ酒はとても旨い味わいだった。駅周辺の居酒屋でも、JAPAN JAM関連と思しき客が宴会を開いていたのも印象的で、音楽LIVEやFESの会場外でも、こうして新しい交流が生まれているなと改めて実感した。ただ、自分はその時気づかなかった。5月5日のJAPAN JAMで、また歴史に残る新たな伝説が生まれる瞬間を、目の当たりにすることを。


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