JAPAN JAM 2023 day4 〜若手世代の躍進〜
5月5日(金)のJAPAN JAM。子どもの日であるこの日は、童心の気持ちを忘れない様にという思いから、朝早くに、一部の区間だが小湊鉄道に乗って田舎の鉄道旅を味わって来た。令和のこの時代に、昭和レトロを肌で感じることが出来て、とても良い朝活をすることが出来た。一方のJAPAN JAMでは、この日の出演者達の平均年齢が、5月4日よりも10歳若いという事実が判明。次世代の音楽シーンを担うアーティストが数多く揃ったJAPAN JAM。果たして、どんな驚きと感動を魅せてくれるのだろうか。楽しみでならない気持ちを高ぶらせながら、会場へ入った。
01.11:05~ Hammer Head Shark(SUNSET STAGE)
01.たからもの
02.Blurred Summer
03.echo
この日一番最初に見たのは、千葉市とrockin’onが主催している「ROAD TO JAPAN JAM 2023」の優勝アーティスト、Hammer Head Shark。女性Vocalで鋭そうなバンド名。どんな音が鳴らされるのかが予想出来ない中、演奏が始まった。「たからもの」を聞いた瞬間から、初めてこのバンドの曲を聞くのに何処か懐かしさを感じた。Guiter&Vocalながいひゆの優しい歌声に、Bass後藤旭とDrum福間晴彦、更にサポートとして入っているGuiterの藤本栄太による演奏は、互いに主張し過ぎておらずバランスが良い。この日がまるで初夏の様な気候だからか、2曲目で「Blurred Summer」を披露。既に季節を先取りしてしまったの様な感覚に陥った。
短い挨拶を終えた後、一番最後に披露されたのは「echo」。この曲は、90年代から2000年代位のオルタナらしさがとても良く反映されていた。羊文学やきのこ帝国みたいだと揶揄されることが多いが、個人的には、the brilliant greenの再来を見ているかの様に思えた。日本語の歌詞を多く使用していながら、曲の構成は洋楽みたいな感じ。けれども、コール&レスポンスを煽ったり、観客を踊らせたりすることなく、ひたすら演奏するバンドの姿と楽曲が作り出す雰囲気に酔いしれる。こんなバンド、自分は久々に聞いた様な気がした。MCで多くのことを語らず、観客へのアピールもあまり程行わなかったHammer Head Shark。しかし、その風格と楽曲技術の高さを考えると、きっと大物になるに違いない。
02.11:30~ Mr.ふぉるて (SKY STAGE)
01.なぁ、マイフレンド
02.ジャーニー
03.さよならPeace
04.救いようのない世界で
05.無重力
06.エンジェルラダー
07.マールム -malun-
08.あの頃のラブソングは捨てて
09.暗い部屋の中、明るいテレビ
10.幸せでいてくれよ
恒例の渋谷陽一社長による朝礼で、この日風が強風過ぎて花火が上がらないという少し悲しいニュースを告知。本来であれば、横のモニターも地面まで降ろすか協議していたが、スタッフからの要望で下に降ろすことなくLIVEを続けるという判断は、流石観客第一で考えているFESだなと思った。そんな中、この日SKY STAGEのトップバッターとして登場したのが、平均年齢約23歳というMr.ふぉるて。自分は昨年も同じこのJAPAN JAMで彼らを見た。果たして、1年前のあのステージから、どう成長していったのかを想像しながら、メンバー到着を待った。
Vocal&Guiterの稲生司、Guiterの阿坂亮平、Bassの福岡樹、そして今回、サポートメンバーとして立ったDrum大貫みく(from. the peggies)が軽やかに登場すると、
「おはようございまぁ~す! 5月5日、JAPAN JAM、SKY STAGEから、始まりを鳴らすぜ! Mr.ふぉるて、どうぞ最後までどうぞよろしくお願いしま~す!!」
の強気宣言から、「なぁ、マイフレンド」の演奏が始まった。FESの始まりとして相応しい、友情について綴った楽曲。昨年、SUNSET STAGEで見た時もこの曲でLIVEが始まったが、その時よりも歌声や演奏が安定し、明らかに進化している様に見えた。軽快で爽やかな演奏は2曲目の「ジャーニー」でも続く。時々強調される濁点を意識した力強い歌声が良いアクセントとなっていて良い。Mr.ふぉるての楽曲の強さは、3曲目の「さよならPeace」の曲中にある歌詞で表現されている。
「歳を重ねる度 大人たちが語る平和も 先生の正しさも 嘘っぱちだって気づいたんだ」
「さよならPeace Hello music 嘘にまみれた世界で 僕の心を動かしたのは Baby君とあのメロディくらいさ」
政治問題や戦争等、一部の大人達によってどの情報を信じれば良いかが分からなくなった世の中に対する批判。若者代表という立場ながら、年齢が上の世代に対しても納得出来るような信念を曲の中で表現出来ているのは凄い。Dragon Ashやアジカンみたく、社会問題への提起を音楽に乗せて行える伝承者がここにも居たとは。初見の時は気づかなかった新たな発見である。社会に対するメッセージソングは、「救いようのない世界で」でも表現されていた。
「僕は君だけは 救ってやろうと思ったんだ この声で僕の歌で」
この真っ直ぐな歌詞で、どれだけの人が救われたのだろうか。音楽を通して自分達がこの世の中を変えてやるという決意表明が、この曲で表わしていた様な気がした。
Vocalの稲生司が、前半のMCでこのJAPAN JAMに今年も立てたことに対して感謝の気持ちを述べる中、彼自身における過去の生い立ちについて語ってくれた。
「実は僕、過去にこの先声が出せなくなるかもしれない位の、大病に罹ったことがあります。病に罹った時、物凄く絶望しました。けれど、音楽と出会って、一度きりの人生だったら声が出せなくなる位、後悔する前に真剣に向き合って行こうと思いました。」
その発言の後に披露されたのは「無重力」。相手からもらった、何かしらの言葉や笑顔が、その人自身を勇気づけるきっかけになることを教えてくれる楽曲。あまりもの完成度の高さに、言葉が出ずに聞き入ってしまった。その流れから「エンジェルラダー」へ繋がったのは、上手い流れだと思った。
「僕ら始めよう 自由を掲げて 世の中の偏見なんてクソくらえ
僕らなら太陽を西から呼び寄せられるさ 夢見るいつかを待つんじゃなくて
迎えに行こう」
何かを後悔する前に、希望を現実に変える為に、自分から出来ることを始めるべきだというメッセージの表れである様に思えた。
「マールム -malun-」からは、恋愛や日常のことを中心に綴った楽曲のパートに突入。後ろのモニター映像に、レトロなチラシにある様な写真やイラストが多く映っていたのが、良いアクセントになって良かった。「あの頃のラブソングは捨てて」は、思春期で素直に告白の気持ちを中々伝えられないもどかしさを、ストレートな旋律に乗せていたのが聞いていて気持ち良かった。「暗い部屋の中、明るいテレビ」は、頑張った自分に対するご褒美と、いつまでも夢見ることを忘れないでいたいという気持ちが、あるあるな光景だなと共感しながら、このLIVEを見ていた。
そしてMr.ふぉるてがお送りしたSKY STAGEのLIVE、最後に披露されたのは「幸せでいてくれよ」。優しいメロディーの中に、自分を見失わないで誰かの力を借りながら幸せに日々を過ごして欲しいという思いが込められたメッセージソング。
「どうか幸せでいてくれよ でも僕を片隅で覚えていて」
Mr.ふぉるてについてもそうだし、誰か大切にしたい人に対してのメッセージとしても受け取れる。サビでの合唱フレーズ、
「どうか幸せで」
この言葉、とても暖かくて優しい。だがとても力強い励ましにもなる。徐々にその声が大きくなっていく様子は、涙が溢れそうな位、とても感動的に見えた。演奏が終了した後のSKY STAGEには、多幸感で満ち溢れた空間が生まれていた。
Mr.ふぉるてのLIVEを見た感想として、今回のセトリが初っ端から大トリを見ているかの様なLIVEというのが示されていた様に見えた。それは、昨年の時よりも明らかに多く埋まっていたSKY STAGEの集客具合にも現われていた。癖が強くありながら、しっかりと伝えたい思いや信念は強い。Getting Betterという音楽活動に強い信念を持つアーティストが多いVictorのレコードに所属しているバンドの中に、Mr.ふぉるてが居るのも納得だと自分は思えた。合唱パートでの観客側からの声が少し小さかった所もあった。だがそれは、まだ彼らが成長していく伸びしろがあるということでもある。
「約5年後に、FESのメインステージで大トリを務めるバンド」
と銘打っている彼らだが、メインステージの大トリを務める姿を自分は見てみたいと思った。その為には、まず、小さい方で良いので、夜の野外ステージでLIVEを行う姿を見てみたいとも、自分は思った。
03.12:15~おいしくるメロンパン (SUNSET STAGE)
01. 5月の呪い
02. look at the sea
03. Utopia
04. 夜顔
05. 色水
06. シュガーサーフ
07. ベルベット
08. 斜陽
09. マテリアル
SUNSET STAGEの真っ昼間に登場したのは、おいしくるメロンパン。シンプルなメンバー構成でありながら、演奏の技術は物凄く高くて、楽曲自体は都会的な雰囲気が漂う洗練さがギャップとなっているバンド。
登場してから早速、1曲目から「5月の呪い」を持って来たのには驚いた。この晴天下で聞く、これから夏へ向かう気持ちを綴るこの曲を聴くのは、何とも罪深い気持ちになる。「look at the sea」では、軽快なメロディに狂気とも言えるドロドロとした恋愛模様を織り交ぜて楽曲で表現。ようやく、FESの雰囲気に合う楽曲が披露されたのは「Utopia」。Guiter&Vocalのナカシマから発せられる歌声に、Bassの峯岸翔雪とDrumの原駿太郎がリズムを作り上げていく旋律。淡々とした雰囲気ながら、歌詞は鋭いというメロンパンの世界に益々引きずり込まれて行く。「夜顔」では、中々記憶の中で忘れられない相手への思いを、植物に例えて表現されていた。歌を聴く度に、自分の中に切なさが込み上げて行ったのを、自分は覚えている。不思議な感覚だ。
自分が思うおいしくるメロンパンの真骨頂は、中盤に披露された「色水」と「シュガーサーフ」に込められていると言っても過言ではない。見た目が元祖ぼっち・ざ・ろっくだったり、少し前の漫画BECKの登場人物達にある様な陰キャ学生の見た目である彼ら。だが、歌詞中にある巧みな表現力とそれを淡々と歌いこなす高く透明な歌声が、上手く表現されていたのが「色水」。夏の光景で溶けたかき氷の様子を色水に例えるなんて。RO JACKの選考に選ればれただけのことはある。「シュガーサーフ」では、原駿太郎によるDrum演奏が高らかに響く。おいしくるメロンパンの楽曲の中で、自分が一番好きな楽曲でもある。GuiterとBass、Drum音という3ピースから出したとは思えない程重厚感があり、疾走感があるこの曲の雰囲気に圧倒された。
中盤で、5月から開催のツアーの告知と、観客へ対する声出しを煽る場面があったが、VocalのナカシマよりもDrumの原駿太郎の方がどちらかと言えば陽キャ気味だったのには笑えた。どんなバンドであっても、橋渡し的な役割を担うメンバーは必要であるが、メロンパンはDrumがその役割を担っているみたいだ。MCの後で、最新曲である「ベルベット」が演奏されたが、序盤の所でナカシマが歌詞を間違えて、
「ごめんなさい、歌詞を間違えたので、もう一度最初から歌います!」
と照れくさそうにお茶目な姿が、とても可愛かった。ロキノン系フェスで、若手の頃から育って来たバンドなだけに、何だか親戚の子供の発表会を見ているかの様だった。肝心の楽曲は、中々取れないシャツのシミを分かれた相手に対する思いと重ねて綴った、真っ直ぐなロックナンバーである様に思えた。この曲も、晴天下で聞くにはとても気持ちよく感じた。「斜陽」では、
「信じてみたいんだ ひとつを ひとつの僕で 歪んでみえる斜陽の中で 」
「振り返らないで僕もそうするから 約束をしよう 振り返らないで僕もそうするから そうするから」
と、メロンパンがバンド活動を行う上での決意や思いを、日が暮れた秋から冬にかけての雰囲気に乗せて歌っていた。少し暖かい気持ちになった。
最後に披露されたのは、これから夏に向かう季節への期待を予感してくれる楽曲「マテリアル」。爽やかで都会的な雰囲気を醸しながらも、歌詞に綴られる内容は相手に対する強い求愛というギャップ。ここでも、メロンパン節が炸裂していた。ただ、音のメリハリがしっかりしている為か、演奏の終わりを伸ばさずにしっかりと止める締まりは、潔くて良いと思った。
おいしくるメロンパン、マニアックだが強くて厚い顧客がいる雰囲気で聞きたくなる様なバンド。素直に自分自身の思いを表現するのが苦手な若者が、別の言葉に例えて歌に乗せて思いを表現する形。他には無い個性であるし、これからもそういった類いの楽曲の世界を、また見せてくれる予感しかない。今回もメロンパンの巧みな世界に引きずり込まれてしまった。何とも甘酸っぱい、昼下がりの光景である様に自分は感じた。
04.13:40~ NEE (BUZZ SATAGE)
SC.月曜日の歌
01. ボキは最強
02. 第一次世界
03. アウトバーン
04. おもちゃ帝国
05. 不革命前夜
06. 月曜日の歌
自分は、おいしくるメロンパンを見終わった後、急いで昼食を済ませてBUZZ STAGEへ向かったが、既にスタジアム側の1階と2階部分に立ち見客が見られる位に多く観客を集めていたのがNEE。自分は、今回ようやく生の姿を拝むことが出来た、新世代のロックバンドである。自分はかろうじて、ステージの奥側エリアで鑑賞することが出来たが、リハーサルで演奏された「月曜日の歌」の音が掛かると、早速飛び跳ねたり、踊り始めたりとあたかも本番中であるかの様な盛り上がりを見せた。
そして本番、Vocalのくぅ、Guiterの夕日、Bassのかほ、Drumの大樹が登場すると、またしても小さなBUZZ STAGEには収まり切れない位の大熱狂が起こる。1曲目の「ボキは最強」では、その熱狂振りを受けてVocalのくぅがステージ中を駆け回りながら歌う様子が印象的だった。気合いの入りようが半端ないというのが感じられる。2曲目の「第一次世界」では、間奏で入るAcoustic Guiterと安定したDrumのリズム音、くぅとかほによるサビの合唱が上手いアクセントとなり、会場の一体感を更に加速させていく。「アウトバーン」で軽快なメロディのロックチューンが投入された後、「おもちゃ帝国」では、観客との間で繰り広げられるコール&レスポンスが会場中に響く。ボカロP出身のメンバーがいるバンドなだけに、曲調はBPMが早いものが多いという印象を持たれがちである。しかし、それでだけではないHIP HOP的な要素も組み込める程の幅広さがあるのは、観客を楽しませる上で嬉しい一面であろう。
中盤のMCで、あまりもの観客の多さに驚く発言があった後、
「みんなNEEのこと好きか~! 俺も大好きだー!」
とくぅは喜びを噛みしめていた。それに観客も歓声を上げて反応する。ステージの距離が近いだけに、大型FESに来ている筈なのに、このやり取りが、まるでライブハウスで見ているかの様な錯覚に陥った。観客に対する告白の後、次に披露されたのは「不革命前夜」。このバンドの代表曲で、自分がNEEのLIVEで一番聞きたかった楽曲でもある。序盤、明らかに革命が起こりそうな位の熱狂が渦巻く中で発せられるセリフ
「革命起こりません ! 」
というパターン。これが聞きたかった。そのセリフを聞けただけでも、この日NEEのLIVEを選択して良かったなと実感する。加えて、サビではとてつもなく大きな声での合唱が響き渡った。その歌声を聞けたら、何だか自分としても嬉しく思えてしまった。そして、一番最後に披露されたのは、リハーサルでも演奏された「月曜日の歌」。歌詞の内容は、少し切なくなる歌詞でありながら、どこか平日を生き抜く勇気をもらえる内容。ここでも、サビでの大合唱が起こる。バンドメンバーと一緒にこのLIVEを創り上げるこの光景。このBUZZ STAGEでのNEEのLIVEを見れて良かったと思えた瞬間である。
自分がNEEに興味を持ち始めたのは、Hey! Say! JUMPに楽曲提供された「群青ランナウェイ」を聞いてからである。POLYSICSみたいな電子音が耳に残るサウンドでありながら、歌詞はきちんと意味のあるメッセージが表現されているのが良い。より多くの大衆へ、曲の良さを広げられる要素を彼らは持っている。この先、より大きなステージでNEEを見ることはあると思うが、自分はこの日NEEをこのBUZZ STAGEで見たことを、きっと忘れることは無いだろう。「不革命前夜」ではなく、音楽業界で彼らが起こす「革命前夜」の始まりを。
05.14:30~ BE:FIRST (SKY STAGE)
SC.BF is…
01. Boom Boom Back
02. Milli-Billi
03. Move On
04. Brave Generation
05. Smile Again
06. Spin!
07. Scream
08. Don't Wake Me Up
09. Bye-Good-Bye
10. Shining One
5/5のJAPAN JAMにおける目玉アーティストの1組、BE:FIRST。近年、数多くの音楽FESへ参加している彼ら。リハーサルで披露された「BF is…」で多く上がった歓声から、その勢いを感じ取ることが出来た。バックバンドを携えないアーティストがリハーサルを行うのはかなり珍しいが、その時間さえも観客と共に楽しんでいるのが、このグループの良さであるとも思えた。
本番、メンバーの7人が舞台へ登場すると、またしても会場から黄色い歓声が響き渡る。サビのリフが印象的な1曲目「Boom Boom Back」と、2曲目の「Milli-Billi」が流れた瞬間から、驚きの連続であった。あたかも洋楽のFESにでも来たかの様なR&B要素のある曲調に、高度なダンス技術。普段邦楽Rockが中心に流れるあの会場で、まさかR&Bの音楽が聞けるとは。「Move On」では、JUNONによるハイトーンボイスでの歌唱とSHUNTOによる低音ボイスでのラップパートが上手く折り重なり、Rock魂を見せた「Brave Generation」では、Guiter音に重なるSOTAのラップとSHUNTOによる歌唱が上手いアクセントとして曲の良さを生み出していた。オーディション出身なだけあって、例え年齢がバラバラであっても息の合う揃ったダンスで観客を魅了しているのは、苦楽を共にした仲間達との絆があってからこそなのであろう。
前半のMCで、今年初の野外FESがこのJAPAN JAMであるから気合いが入っていることを告白。それを受けて、次に披露された最新曲「Smile Again」では、爽やかな曲調に合わせてメンバーがサビを歌い繋ぐ様子が愛おしく見えた。
「君は綺麗だ」
曲中に用意されている決めゼリフからの歓声を聞けるのも、ROCK FESへ行っていると中々見られない光景。実に新鮮である。爽やかな曲調から一転、「Spin! 」では、SOTAによる高速ラップパートを中心に、RYOKIとSHUNTOとの掛け合いが響き合うHIP HOPナンバーを展開。「Scream」は、Drum音が上手いアクセントとして機能し、MANATOとJUNONによるサビでの歌唱シーン以上に、RYOKIがラップパートや叫び声でも存在感を発揮していた。
Jonas Blueとのコラボ曲「Don't Wake Me Up」。この曲中では、EDM調の爽やかな音に乗せて歌っていたのが印象的だった。後でMVを調べて気づいたのだが、この曲はこれまでBE:FIRST自身が歩んできた足跡を刻んだ楽曲であるということ。これをコラボ曲にしようとしたSKY-HI社長は凄いと思うし、コラボを快く受け入れてくれたJonas Blue氏にも感謝の意を示したくなった。「Bye-Good-Bye」は、哀愁感が漂う曲調に、歌とダンスの表現力でよりその切なさが増していく。生では初めて聞いたが、この曲を聞くと、徐々にBE:FIRSTが行ってきたSKY STAGEでのLIVEが終わりに近づいている感じがした。そして、一番最後に披露されたのは、BE:FIRSTにとって始まりの曲である「Shining One」。同じ目的を持った7人組の男子達が、日本の音楽業界に革命を起こす唯一無二の存在になるという決意表明が、この歌詞の中に現れている様に受け取れた。
正直な感想を言うと、自分はBE:FIRSTについては不勉強な所があり、このLIVEを見ただけでは、良い印象を持つことは出来なかった。しかし、SKY-HI社長による指導と信念の基、ボーイズグループがこういう音楽FESに積極的に出演する先陣を切った。そして、彼らがこれからの音楽FESの中心を担う存在になるというのは、若者や親子連れを多く見かけた観客層から感じ取れた。BE:FIRST、これからどんな音楽人生を歩んでいくか、注目して行きたい。そして時間のある時は、彼らの音楽をもう少し聞いてみようとも、自分は思った。
06.15:15~ KANA-BOON (SUNSET STAGE)
01. ないものねだり
02. フルドライブ
03. FLYERS
04. サクラノウタ
05. シルエット (TVアニメ「NARUTO-ナルト-疾風伝」16代OPテーマ)
06. ぐらでーしょん feat. 北澤ゆうほ (TVアニメ「山田くんとLv999の恋をする」OPテーマ)
07. スターマーカー (TVアニメ「僕のヒーローアカデミア」第4期第2クールOPテーマ)
今年、メジャーデビュー10周年を迎えて、キャリアとしても中堅の位置となったKANA-BOON。もはや、ロキノン系フェスでもお馴染みの顔となっている彼ら。観客の前に姿を現すと、最初に演奏されたのは「ないものねだり」。Vocal&Guiterの谷口鮪による弾き始めから、Bassの遠藤昌巳が行う手拍子の煽りを見ると、この曲がいよいよ始まるなというのが伝わって来る。曲中での合いの手やコール&レスポンスが楽しいこの楽曲。Guiter古賀隼斗によるソロ演奏が終わった後、
「ゆらゆらゆらゆら僕の心を」
というお馴染みのフレーズも、大合唱で観客が返す一体感のあるあの光景。久々に見た、実に嬉しい瞬間である。次の「フルドライブ」でも、Drumの小泉貴裕が4つ打のリズムを刻み、それに他のメンバーが演奏を重ねた曲調に乗せて、観客を踊らせて行く。「FLYERS」では、谷口鮪がハンドマイクを片手に高速ラップを披露するかの如く、早口での歌唱を披露して観客を驚かせる。しかも舞台上を駆け回りながら披露しているのだから、余程このFESで演奏出来ることを心から楽しんでいる様に見えた。
「春とはいえ、もう桜は散ってしまったけれど、春の新曲をやります」
と発言した後に披露されたのは「サクラノウタ」。これまでも、春に関係する楽曲をいくつも発表してきた彼ら。桜の花びらが舞う光景と、人間模様を重ねさせた楽曲。春という切ない気持ち季節を映した後方モニターの映像と、風が強く吹くSUNSET STAGEの風景で「サクラノウタ」の雰囲気作りに一役買っている様に見えた。
5曲目から最後の7曲目まではアニソンタイアップが披露された。「NARUTO-ナルト-疾風伝-」のOPテーマとしても起用された「シルエット」では、これまた疾走感のある4つ打のDrum音にGuiterとBass音が重なっていくのだが、向かい風に打たれながら演奏する様子が、一所懸命さがあって好印象を受けた。鮪のアフロヘアがどうなったかは知らないが。
5/5のJAPAN JAMで、KANA-BOONの出番に更に花を咲かせてくれたのは北澤ゆうほ(from the peggies)の登場。
「KANA-BOONのライブに花が咲きましたよー!」
と喜びの声を爆発させる宣言をした後で披露されたのは、最新のコラボ曲「ぐらでーしょん」。恋愛を題材としたアニメ「山田くんとLv999の恋をする」の主題歌に起用していることもあり、男女のツインボーカルによる歌唱が、KANA-BOONの楽曲がよりポップなものにしてくれる。舞台上でも、左右に歩き回った後に、最後はお互い至近距離での合唱というこれまたファンにはたまらない光景を見せてくれた。それは、この日初めてJAPAN JAMに出演した北澤自身にとっても、この光景がたまらないものになったであろう。
そして、一番最後に披露されたのは、近年のFESでもお馴染みとなっている明るい楽曲「スターマーカー」。「僕のヒーローアカデミア」のOPテーマとしても起用された曲で、サビで左右に手を振る光景がとても感動的な景色になる楽曲である。後で自分は知ったのだが、実はこの曲、編曲にフジファブリックの金澤ダイスケが携わっていた。だから、初めてこの曲を聴いた時に今迄のKANA-BOONの楽曲に無い煌めきを感じたのか。FESの出番でのラストとして、決して終わりが悲しいものではなく、何処かこれからの未来に対してワクワクさせてくれる様な、淡い期待の様な物を受け取って、この日のLIVEを終えた。
4/30に見たキュウソネコカミと同じく、このKANA-BOONのLIVEを見ていると、生でバンドのLIVEを見ているなと実感する。KANA-BOONは最近、先輩アーティストや女性のボーカリストとのコラボを通して、表現力が格段に上がり、固定のパターンだけではない側面を開拓している。
「狭んでく君の視界を 僕らの世界を広く」
し続けてくれるKANA-BOONが創り出す楽曲の世界。果たして、この先どんな新しい楽曲を生み出してくれるだろうか。ワクワクせずにはいられない。
07.16:00~ SKY-HI (SKY STAGE)
01. Mr. Psycho
02. Happy Boss Day
03. Dramatic
04. 何様- From THE FIRST TAKE ver.-
05. Tiger Style feat. Aile The Shota, JUNON, LEO
06. Double Down
07. D.U.N.K.
08. MISSION
09. To The First
10. The Debut
BE:FIRSTが所属している事務所BMSGの社長で、ソロに転身してからロキノン系フェスでも多く出演しているSKY-HI。今回、JAPAN JAMで自身の名前と縁があるSKY STAGEへ出演するとあって、登場してからの気合いと熱量が観客側へも伝わって来た。バックバンドのGuiterとDJ、Drumが放つ生演奏の音に合わせて、1曲目の「Mr. Psycho」から、キレのあるラップと歌唱を披露していく。過激的な歌詞の内容がHIP HOPの雰囲気にピッタリ合う。「Happy Boss Day」で、複数のダンサーを携えて踊りながら歌唱するシーンは、息を呑んでしまう程技術力が高く、凄いと思えてしまう。SKY-HIの真骨頂である高速ラップが炸裂したのが「Dramatic」。生バンドによる演奏で、この楽曲における凄さがより引き立つ形となっている。歌詞も、社会的な内容を綴っている様でありながら、曲調が明るいテイストだからか、楽しく聴ける感じなのも良い点だと思った。
今回、初めてSKY STAGEへ立つに辺り、きゃりーぱみゅぱみゅを意識した衣装で臨んだが、楽屋裏でBE:FIRSTのRYUHEIに「派手すぎる」とツッコミを入れられたらしい。お茶目なエピソードである。そんな彼は、つい最近結婚を発表した盟友ぼくのりりっくのぼうよみことたなか(Dios)に対して、祝福の意味を込めて「何様- From THE FIRST TAKE ver.-」を披露。結婚とは反対の内容が綴られている歌をここで披露するとは、余程たなかのことを思っているのだなというのが分かる。
「あれ?今日全員行ける?」
ここで、BE:FIRSTからJUNONとLEO、そしてソロシンガーとしてデビューしたAile The ShotaをSTAGEへ招き入れ、「Tiger Style」を披露。寅年という共通点で組むこととなった3人とSKY-HIによるマイクリレー。とても息が合っており、ラップパートと歌唱パートとの相性が心地よく聴けたのが良かった。6曲目の「Double Down」では、4つ打のDrum音と曲中で繰り広げられる「Hey! 」コールが大きく響き渡り、会場の一体感をより大きなものにして行く。そして、7曲目に披露された、TVでもよく耳にする「D.U.N.K.」。そこでは、ダンサーに加えて、先程コラボ曲を披露したAile The Shotaに加えて、BE:FIRSTが全員STAGE上へ乱入し、会場が一気に野外のダンスホールへと変貌を遂げた。
「今日は良いライブやったから好きにやっていいぞ!」
SKY-HIのこの言葉に、STAGE上の出演者達もフリースタイルで思い思いの形で踊っていく。設立してそんなに年月が経過していない事務所の筈だが、もう既にその場所には深い絆が結ばれている様な気がした。あのSTAGE上での楽しそうな雰囲気に、観客側でもサビで踊る光景をよく見かけた。自分も踊ってみたが、足が痛くて転びそうになったのが少し痛手だった。そんな高度な技術のダンスを踊れる様になったのも、SKY-HI社長が根気よく続けて来た努力の証とも言えよう。
コラボが終わった後、あの光景が約50人しか集まらなかったクラブのステージでフリースタイルのダンスを踊っていた時を思い出すと発言。そこから努力を積み重ね、この後アリーナを回るツアー公演が控えていることを告知すると、SKY-HIの生き様を綴った「MISSION」へと突入。行く先が不透明な茨の道を自らの足で歩み続けて、突然現れるチャンスを見逃すなというメッセージが込められた楽曲。一つ一つ発する歌詞の言葉に、自分は真剣に聞き入った。そこからの「To The First」への流れも上手いと思った。まるで、SKY-HI自身が歩んできた音楽人生を現しているかの様だった。
「2013年に初めてROCK IN JAPANのDJ BOOTHに出た。その時はガラッガラだった。それから何年かは出れなくて、2016年からまた呼んでもらえるようになった。そして、今こうして、JAPAN JAMのメインステージであるSKY STAGEに初めて立てるようになった。みんな生きてればびびろんな感情があるだろうけどさ、全部俺にぶつけてくれていいから!初めて見た人もいるかもしれないけど、俺がお前ら全員の人生背負ってやるからさ!」
何ともカッコ良い言葉だろうか。観客側がガラガラの時から、今こうして満杯とも言えるSKY STAGEの地へ立てたことが、どれだけ感慨深いものであろうか。何だか涙が出そうになった。そして、一番最後に披露された「The Debut」では、後ろの画面にBMSGを立ち上げてからの日々のを映し出した映像が流れ、回想に浸れる様なゆったりな時間が流れた。
「大人になんてなりたくない お金があっても生きられない 腹いっぱいの夢を見たい うるさいなバカ I don't give a fuck」
人間が人生を送る上で、とても大切なことを言っている歌詞。とても心に刺さる。今迄、アイドルやダンスグループ等の経験を経て、自分がやりたいことを見つけた。今は、それを一緒に支えてくれる後輩や仲間達がいる。人の支えがあれば、どんな辛い道のりや高い壁も乗り越えられる。そんな意味が込められた。この曲を聴けて良いなと自分も思った。
全ての曲の演奏が終了した後、SKY-HIがSTAGE上に倒れてしまったが、それは全ての力を出し切ったという勲章である。SKY-HIは自身の人間性と音楽力と八面六臂の活動で、ジャンルの垣根を越えた様々な化学反応を我々に魅せてくれた。そして、支えてくれる仲間達が居たからこそ、アウェーだった音楽FESのSTAGEをHOMEに変えることが出来るまでになった。SKY-HIとしても後輩や仲間のアーティストにしても、今後の活躍に目が離せない。そんなSKY STAGEの夕暮れ時の舞台だった。
08.16:40~ TOOBOE (BUZZ STAGE)
01. 爆弾
02. 心臓
03. ダーウィン
04. 錠剤 (TVアニメ「チェンソーマン」第4話EDテーマ)
05. ivory
06. 浪漫
07. 往生際の意味を知れ!
SKY-HI社長が行った渾身のLIVEを見終わった後で向かったのは、johnのソロプロジェクトであるTOOBOE。自分が彼のLIVEを見始めたのは、4曲目「錠剤」の演奏が始まる前のMCをしている最中だった。その時、真裏でKEYTALKがSUNSET STAGEでLIVEをしていたこともあり、
「KEYTALKにも歓声を届かせよう!」
ということで、サビで一緒に叫ぶシャウトの練習を行うことに。コール&レスポンスやダンスの振り付けを練習するのは見たことあったが、シャウトの練習をするアーティストは見たことが無い。それでいて、思ってた以上の声で観客達もシャウトを叫んだ。一体感は生まれると思うが、少し異端な光景である。その練習後に披露されたアニメ「チェンソーマン」のED主題歌に起用された「錠剤」。その曲中では、練習した成果が見事に発揮されていた。「ivory」では、歌詞の中に出てくる哀愁感漂う雰囲気が、太陽が傾き始める会場と上手く合わさっている様に見えた。King GnuやPEOPLE1の様な洗練された音の旋律が特徴的な「浪漫」では、john自身が時より叫ぶシャウトと、ホーン隊が演奏する吹奏楽サウンドが響き合わさった。小さいステージにホーン隊を携えるとは珍しく思えた。
「遥か遠くの未来に 幸せ望んでもいいですか 誰にも理解 出来ない夢を見せておくれ」
今見ているTOOBOEのLIVE自身が、正に夢の光景であるみたいだ。何処かクラシカルで壮大的な概念みたいなものを受け取っている様な感じがした。このBUZZ STAGEという、決して大き過ぎない舞台で。そして、最後に披露されたのは「往生際の意味を知れ!」。一番最後に、憎む相手への復讐の気持ちを綴った楽曲を持って来るなんて。このアーティストは只者ではないのが凄く伝わって来た。初めて見たのに、あまりもの風格に圧倒されっぱなしのLIVEが終了し、観客の前から後にするjohn氏とバンドメンバー達。
次の出番がPEOPLE1で、入場規制が掛かるのを想定していたからか、TOOBOEのLIVE中でも沢山の観客が押し寄せていた。それだけ、期待値が高いという現れとも言えよう。ただ、個人的に気になったのは、TOOBOEを見ていたエリアの真横で、次に出番となるPEOPLE1のメンバーが柵越しに見学していたという点である。あまりもの近さに驚いたが、自分はその時気づかなかった。TOOBOEのLIVEでの見学風景、実はこれが後で繰り広げられるものへの手がかりになっていたとは。
09.17:40~ PEOPLE1 (BUZZ STAGE)
SC.フロップニク
01. 魔法の歌
02. アイワナビーフリー
03. スクール!!
04. 銃の部品 with TOOBOE
05. DOGLAND (TVアニメ「チェンソーマン」第10話EDテーマ)
06. 怪獣
07. エッジワース・カイパーベルト
08. イマジネーションは尽きない
TOOBOEのLIVEが終わった後でも、多くの観客はPEOPLE1を見る為に残っていた。昼下がりにLIVEを行ったNEEと同じく、数分経過した後には、1階や2階スタンドの通路にも立ち見客が出る程、多くの観客が彼らの到着を待っていた。一旦STAGEへ登場してからのリハーサルで、「フロップニク」が演奏されると、いきなり手拍子やジャンプ、そしてサビでの大合唱等により、このBUZZ STAGEに収まり切れない程の盛り上がりを見せた。BUZZ STAGEの持ち時間が30分と限られているからか、1曲でも多くの曲を演奏しようというPEOPLE1なりのサービス精神なのだろうか。
リハーサル時の興奮が冷め切らない中、サポートメンバーを含めた5人が再登場して、本番のLIVEが始まった。1曲目「魔法の歌」では、Vocal&Guiterを務めるItoが爽やかに歌い上げる中で、途中で観客側へマイクを向けて歌わせる演出も見せてくれた。これまで見たPEOPLE1のLIVE映像では、観客が彼らの歌を合唱するシーンは見られなかった為、声出しが解禁されたことにより、嬉しさが更に増して感動的な空間を創り出している。2曲目の「アイワナビーフリー」では、Itoと同じくVocal&Guiter、Bassを担当するDeuがハンドマイクで互いに歌い合っているのが印象的だった。そこでもサビでの大合唱が響き渡る。3曲目の「スクール!!」は、Itoが曲中で魂を込めて歌ったパートやセリフパートの箇所等で、全身全霊でこのLIVEをやり遂げようとしている根気を見せてくれた。コロナの影響もあったかもしれないが、数年前までほとんどLIVE活動をしていなかったとは思えない程、LIVEでの盛り上げ方・楽しみ方を熟知しているかの様だった。
「ここで、スペシャルゲスト!」
とDeuの呼びかけにより、何と先程まで同じBUZZ STAGEでLIVEを見ていたTOOBOEが登場し、PEOPLE1の中でも疾走感のあるカッコ良い楽曲「銃の部品」をコラボで披露。今の世間を反映しているかの様な辛辣な歌詞であるものの、曲調がとにかくカッコ良いのとTOOBOEとのセッションが生み出す化学反応によって、この曲がより魅力的なものとして昇華させていく。BUZZ STAGEでもこんなコラボが見られるなんて。JAPAN JAMでアーティスト同士のコラボを続ける意味は、こうしたコラボでの新たな発見があってからこそなのだと、時折教えてくれる。
TOOBOEとのコラボが終了した後に披露されたのは、直近においてPEOPLE1の代名詞となった楽曲「DOGLAND」。TVアニメ「チェンソーマン」のED主題歌にも起用されたこともあり、会場からもイントロが掛かった途端大きな歓声を上げていた。ブラックユーモアさが前面に出る冒頭部分から、一気に暗闇が晴れるかの様なサビでへの展開。それに加え、金髪でスポーティーな服装をしているDrumのTakeuchiがサンプラーを演奏することで、デジタルサウンドとロックサウンドの融合という唯一無二の楽曲となった。
この日、Itoは音楽FESやLIVEで観客の前に立つことに対して、こんな言葉を残してくれた。
「去年、このJAPAN JAMで初めてFESに出て。そのタイミングで、素性が明らかになったりとかしたんですけど。あれから1年、本当に目まぐるしい日々を過ごしてきたなって。まだ人前に立つことに恐怖が少しあるけど、みんなが前にいるからこの舞台に立てていて、今日もこうして、またJAPAN JAMに出れて、こんな大勢の観客の前でLIVEが出来て、本当に幸せだと思ってます。次は、向こう側にあるもっと大きなSTAGEに立ちたいです ! 」
この言葉に、自分は感激した。音楽活動を行う上で、人と触れ合うことがこんなにも楽しいと思ってくれているなんて。LIVE好きの人間にとって、この言葉は凄く嬉しい言葉である。そこからのラストまでの展開は、多幸感でしか無かった。ミクスチャー要素が強く反映された「怪獣」で勢いをつけて、「エッジワース・カイパーベルト」ではサビでのタオルを回す展開になったのは、とても楽しくて感動的な光景として脳裏に焼き付いた。今迄ネットや配信音楽で共有することが多かったPEOPLE1の音楽を、今こうして大勢の観客達と共に楽しんでいる。しかも声出し有りの状態で。バンドにとっても観客にとっても嬉しい時間になったことは間違いない。ここでLIVEが終わるかと思いきや、Deuから
「時間がまだあるので、最後にもう1曲やらせてくれ!」
との発言から、パンク要素の強い楽曲「イマジネーションは尽きない」を追加で披露。PEOPLE1が次のステップへ向けて前向きに動いていることの現れだったり、これからの音楽LIVEシーンに対しての期待が現れていたり、今回のLIVEでは前向きにLIVEを終えようという気概を感じることが出来た。演奏が終わり、立ち去る時のメンバーの表情は、全身全霊でLIVEをやり終えた達成感で満ちあふれている様に見えた。
もはや、JAPAN JAMでは一番小さいSTAGEに立つことは暫く無いと思われるPEOPLE1。アニメや企業CMのタイアップ等で、楽曲が世間に多く知れ渡る存在になったからである。しかし、自分はこの日、BUZZ STAGEで見たPEOPLE1のLIVEも、忘れることは無いだろう。配信や動画サイト等で聴くだけでは分からない、細かい感動がそこにあったからだ。
10.18:40~ キタニタツヤ (BUZZ STAGE)
01. 悪魔の踊り方
02. 永遠
03. Ghost!? (Bad Mood Junkie ver.)
04. 化け猫
05. Rapport (「BLEACH」生誕20周年記念原画展 テーマソング)
06. 聖者の行進 (TVアニメ「平穏世代の韋駄天達」OPテーマ)
07. スカー (TVアニメ「BLEACH 千年血戦篇」OPテーマ)
PEOPLE1を見た後で、トイレ休憩を挟み、会場を少しウロウロした後で見たのがBUZZ STAGEのトリを務めたキタニタツヤ。自分が見始めたのは、3曲目の「Ghost!? (Bad Mood Junkie ver.)」の辺りから。
「日が暮れてきたこのSTAGE、今テンションがハイになってると思うけど、もっとハイにしていくよ」
との強気発言から繰り出されたこの楽曲。日が暮れて小さな野外のライブハウスみたいな空間に、ジャズの要素を取り入れた大人っぽい曲調。何とも雰囲気が合う。「化け猫」は、一定のリズムを刻みながら歌うキタニの姿が印象に残る。歌詞の内容は、ストーカーみたいに迫ってくる女性に男性が狂わされるという内容だが、その光景が想像出来る位に似合う選曲だった。「Rapport」では、TVアニメにもなっている週刊少年ジャンプの漫画「BLEACH 」の原画展テーマソングに起用しているからか、真っ直ぐな歌詞と正統派と言えるGuiter音に乗せたサウンドが聞いていて気持ち良い。「聖者の行進」、題名からしていかにも明るそうな曲調を想像しそうになる。ただ、実際に聞いた感想は、とても根深く辛い心情を綴ったメッセージソングだった。
「無力を呪う声と 救いを祈る声が 混ざったような歌が聞こえる」
「向かう先で待っているのが 楽園だろうが地獄だろうが このパレードは進み続けるだけ 怒りや悲しみの歌を歌いながら」
後で調べて気づいたのだが、この言葉には驚いた。まるで今の世間に対する皮肉が歌詞に込められているではないか。5/5が子どもの日であることを忘れてしまいそうになる。いや、この歌を5/5に聞くことで、こんな未来を起こさない様にするための教訓になるのだと、自分は信じようと思う。
一番最後に披露されたのは、TVアニメ「BLEACH 千年血戦篇」のOPテーマに起用された「スカー」。作品の主人公である黒崎一護の成長を綴ったこの楽曲。
「飲み込んできた悲しみの全てが僕を 形作った 色で満たした そうして歩いてきたんだろう?」
「呼吸と同じようにひとつひとつ重ねてきたんだ この掌の 数えきれない 消えなくなった傷跡が僕の 証だ しるしだ 」
「向かい合ったあの恐怖も 刻んで、共にまた歩き出した」
今迄味わってきた悲しみや苦しみも、自分自身を形作る要素の一つ。それを背負って、人々は時代を歩み続ける。人生の教訓にもなり得る歌詞だ。一番最後は、前向きな終わり方が出来る曲を聴けて良かった。
アニメとの関わりが多いキタニタツヤ。過去にタイアップや他のアーティストへの楽曲提供、sajou no hanaでGuiter演奏を担当していることでも知られている。今はキタニタツヤ単体での活動が多く見られるが、sajou no hanaとしてまた活動することは無いのだろうか。むしろ、個人的にはsajou no hanaとしてもロキノン系フェスでの勇姿を見てみたい。あのBUZZ STAGEでの光景が、アニメに出てくるワンシーンを思い起こさせる様な、魅力的な光景だったから。
11.19:20~ クリープハイプ (SKY STAGE)
01.ナイトオンザプラネット
02. キケンナアソビ
03. 身も蓋もない水槽
04. 月の逆襲
05. HE IS MINE
06. 火まつり
07. オレンジ
08. ポリコ (短編アニメ「ハイパーポジティブよごれモン」主題歌)
09. ニガツノナミダ
10. 二十九、三十
5月5日のJAPAN JAM、若手世代の活躍が目立った日。SKY STAGEのトリを務めるのは、メジャーデビューしてから10年以上のキャリアを持つクリープハイプ。LIVEシーン問わず、未だにTVやネット上でも数多くのファンを魅了し続ける存在。実は自分、クリープハイプが音楽FESの大トリを務めるのを見るのは初めてである。割と刺激が強い歌詞が多いイメージがあり、野外の夜で一度聴いてみたいと思ってはいたが、どんなトリを魅せてくれるのか、期待に胸を膨らませながら登場を待った。
紹介映像が流れ、メンバーが静かに舞台上へ登場。少し間を空けた後に、Vocal&Guiterである尾崎世界観がまず一言。
「どうも、今日最後の花火です」
この日、急遽花火が上がらないからという配慮なのか、登場前に流れていたBGMがフジファブリック「若者のすべて」だったからなのかは分からないが、最初の掴みとしては悪くない言葉だった。すると、1曲目「ナイトオンザプラネット」をアカペラで歌い始めた。
「最後まで残ってくれて本当にありがとうございます。めちゃくちゃ嬉しいから、この景色をポケットに入れて持って帰ってオカズにしたいです」
この時間まで残ってくれた観客に対しての感謝の言葉を述べた後、長谷川カオナシによる特徴的なKeyboard音が響き渡って、LIVEが始まった。この夜が深まっていく雰囲気にピッタリ合う、ゆっくりなテンポの楽曲。1日中歩き続けた身体に対しても、ゆったり身を委ねられた様な気がした。その雰囲気は、2曲目「キケンナアソビ」でも続いた。長谷川カオナシが不穏に鳴らすBass音が特徴のイントロ。恋人同士による危険な遊びの様子を、大人側と子ども側という対照的な歌詞で綴る文学的な世界。月が照らす夜闇に、彼らから放たれる色気のある大人の雰囲気が、益々SKY STAGE全体を覆っていく。
「昨日もライブだったんだけど、体調が良くないってライブ中に言っちゃって。咽頭炎っていう喉の病気になったらしいんで、喉に優しい曲を1曲やります」
と言って披露されたのは、「身も蓋もない水槽」。メジャーデビューした辺りに発表された、冒頭箇所で高速ラップとも受け取れる早口の歌唱とサビでの絶叫。全然喉に優しくない。むしろ、負担を余計に掛けてないだろうか。それでも、この楽曲をセトリに入れたのは、
「緊急事態宣言から3年」
という、観客と共に歌やセリフを言い合いながら作り上げるLIVEが、この春ようやく再開出来たからこそ、自分の身体の限界を超えるパフォーマンスを見せたかったのではないだろうか。ツンデレ要素があり過ぎる。一旦、尾崎世界観が喉を休めようと次に演奏されたのは、小泉拓が鳴らすテンポが良いDrum音と電子音が響く「月の逆襲」。ここでは、長谷川カオナシが主な歌唱を務め、尾崎世界観はGuiter演奏とサビでのコーラスに徹していた。それに加えて、アウトロの部分で起こる小川幸慈による激しいGuiter演奏。長谷川自身の声質により、尾崎が歌う時よりも優しくてキャッチーな仕上がりとなっていたもの、聴いていてとても楽しい気分になった。
「最近は何かと略しがちだから、正式に言わないと。今日は5月5日。世間では「子どもの日」だと言われがちですが、正式には「子供を作る日」です。というわけでセックスの歌を」
と尾崎世界観による強烈なMCの後に続いたのが「HE IS MINE」。クリープハイプの楽曲で一番盛り上がるナンバー。イントロのBass音と激しいDrum音が間奏中に鳴らされ、ラストサビ前で徐々にテンポを上げて行った後に
「セックスしよう」
と大合唱が起きる。恐らく、親子連れも居たであろう夜のSKY STAGEで性とエロスにまつわる言葉を叫ぶ。何か、ここにいる観客全員でいけない遊びをしているみたいで、興奮気味になった。
すると、日本昔ばなしで流れていそうなお囃子的なリズム音が流れ、「火まつり」の演奏へと入った。
「普段は人前では1曲しか歌わないのですが、今日は兄さんがもう1曲歌ってくれと言うので。咽頭の炎症は怖いものですが、インターネットの炎上も怖いものであります」
との尾崎世界観によるリクエストに応え、この曲でも長谷川カオナシが主に歌唱を担当。長谷川カオナシが作詞作曲したこの曲。昔ながらの日本の音楽に現代的とも受け取れる歌詞、そして語り部の様に儚く流れる長谷川カオナシの歌声が、この楽曲における神秘さを形作っていた。
ここまで、割と雰囲気が暗かったり、色っぽい感じの曲が続いて来たが、7曲目「オレンジ」では心機一転、オレンジ色の証明も相まって、明るく前向きな気持ちになれるパートへ突入。
「あのオレンジの光の先へ その先へ行く」
徐々に近づきつつある、大トリとしての演奏完走というゴールへ向け、LIVEは進んでいく。小川幸慈によるGuiter演奏が耳に残る「ポリコ」。音の旋律もそうだが、後で改めて見ると、物凄く意味の深い歌詞が綴られているのが分かった。
「息してたいだけのはずなのに 足りない足りない足りないまだ」
「優しくされたいだけなのにされない 消えない 溝にこびりついた汚れ」
やはりここでも、現代社会における心の汚れや一時期希薄となった人間同士のつながりを綴った、尾崎世界観なりの文学的な世界が広がった。
「時間まだ余ってるから1曲追加します」
との一言から、急遽「ニガツノナミダ」がラスト前に披露された。曲調や高低音のパートが変わり易い曲でありながら、淡々と歌い上げていく姿。冒頭で心配されていた喉の調子について、忘れてしまう所だった。
ラストの楽曲を演奏する前、尾崎世界観が、今回喉の不調を抱えながらもJAPAN JAM大トリを引き受けた理由を語ってくれた。
「何より俺は心が小さいから、誰か他のバンドにこのステージのトリを取られるのが嫌だったし、そうやって代わりに出たアーティストが曲をカバーしたりしてSNSに「絆が深い」なんて書かれるのも見たくもなかった。エゴサしたらグッズもたくさん買ってくれたらしいし、これは出ないとなって思って(笑) でもそう思うのはクリープハイプにはワンマンとフェスしかないから。テレビに出て歌うつもりもないし、なんとかTAKEに出るつもりもない(ヘッドホンをつけてマイクに向かって歌うマネをする)。ここが全て。だから絶対に立ちたかった。今日見てくれてありがとうございました」
小心者でありながら、LIVEで自分の思いを音に乗せて歌う。LIVEという場所を何よりも大切にしている。一番最後、クリープハイプがLIVE活動で大切にしている信念を、言葉で聞けたこと。これはとても嬉しかった。そこから、最後に披露されたのは「二十九、三十」。この曲中に出てくる歌詞、とても心に沁みた。MCで話していた思いや言葉を、そのまま楽曲に落とし込んだかの様だ。ゆっくりなテンポだけと確実に、明日からの活力になる様な説得力のある感じが、このラストに相応しいと自分は思った。
「前に進め」
と最後のセリフを言うと、軽く感謝の言葉を伝えてSTAGEを去って行った。退場時のBGMや花火の演出も無くシンプルな光景だったが、観客側からも
「ありがとう」
の言葉が続々と出てきた。サークルやモッシュは起きないが、歌詞の内容は辛口で刺激的。心が参ってしまうLIVEを想像していた筈だが、最後に心温まる雰囲気へと変えていったのは、クリープハイプがこのロキノン系フェスで築き上げた信頼と絆の証であると言えよう。今年2023年のJAPAN JAM、一番最後にクリープハイプの大トリを見れて、自分は改めて良い時間を過ごせたなと心から思った。
後書き
自分は、この5月5日で2023年春のJAPAN JAM参加を終えたが、とにかく風が強かったのを覚えている。まさか、次の日までその風が強い状態が続き、ましてやSUNSET STAGE閉鎖に伴い、何組かのアーティストLIVEが見れないという事態が起きるとは想像もしていなかった。時期や場所等、年間通して様々な音楽LIVEやFESが開催されている。しかし、その楽しみにしていたアーティストのLIVEが、いつ突然見れなくなるのかは分からない。だからこそ、生で音楽を楽しんでいる瞬間一つひとつが、儚くて愛おしいものに思えた。果たして、今年夏に行われるROCK IN JAPANやCOUNTDOWN JAPAN、ましてや来年のJAPAN JAMでは、一体どんな伝説を起こして、観客達を魅了してくれるのだろうか。そんな3日分のLIVEを楽しめたことへの達成感の喜びと、これからに向けての期待を胸に、自分は春の蘇我スポーツ公園を後にしたのだった。