歌と、湯婆婆

小さい頃は神様なんて、

幼いわたしの耳には、有名なあの曲の歌い出しが確かにそう聞こえていた。なんて、と言っておきながら二言目には「夢を叶えてくれた」だってさ。随分とひねくれた人だなぁと思っていたけれど、ひねくれ者はこちらだったのだと正しい歌詞を知った時に自分を恥じた。

昔から、映画というものには特段思い入れがない。ジブリやディズニーといったアニメ映画をこれでもかというほど見返した、ごく一般的な幼少期を過ごしていたはず、なのに自分と映画との間にこの距離感が生まれたのはなぜだろう。両親がそれほど映画好きというわけでもなかったからだろうか。映画館へ足を運んだ記憶も数が限られている。中でも千と千尋の神隠しの記憶は強烈だ。両親がブタにされてしまう冒頭のシーンでその恐ろしさに耐えられず、わたしはもれなく泣いた。泣き虫な、千尋と同じ小学校高学年だったわたしは、両隣に座る親と自分とをスクリーンに映る光景に重ね合わせるくらいには感受性豊かでピュアな子どもだったらしい。

映画にそこまで惹かれなかった(少なくとも学生時代よりは最近の方が面白さが分かってきた気がする)のは、何も映画に原因があるのではなく、単にそれ以外に面白いものを見つけていたからだと思う。コンサートやミュージカル、その日その場でしか見られない生の歌声やお芝居の方がよっぽどわたしにとっては魅力的だった。同じ値段を出すなら映画のチケットよりもおいしいものを食べに行きたいと本気で思っていたくらい。ただ、アニメ作品だけは変わらず好きだったので、気になる作品はぽつぽつ映画館で見ることはあった。

どんな映画が好き?と、好きな食べ物でも聞くかのようなテンションで知り合ってまもない人から聞かれることがある。お気に入りの映画の1つや2つ、持っているのが当たり前の世の中なのだろうか、とその質問に出くわす度に内心驚いてしまう。わたしの場合、アニメ、音楽、というカテゴリーに属するものならわりとどれも好きで、あとはむしろ消去法になる。ハリウッド映画みたいな、と一括りにするのも偏見かもしれないが、ド派手なものは苦手。4つ下の妹と一緒にスパイダーマンを観に行ったことがあるのだけど、ストーリー云々にたどり着く前に、あちこちからスパイダーマンや悪役がイキナリ飛び出してくる演出にまんまとビビらされて、耐えきれず上映開始30分足らずで半べそかきながら退席したこともある。ホラー映画はもちろん論外。要するに、こころ穏やかに、淡々と見られる作品の方が好みだ。と、自分が好きな映画の傾向を整理する度に、こうなってしまった全ての始まりは湯婆婆なのだ、という明快すぎる結論に行き着いて笑える。

ジブリ作品で1番好きなのは、魔女の宅急便。お話ももちろんすてきなのだけど、やっぱりわたしにとっての決め手は、音楽。ラピュラもナウシカももののけ姫もトトロもポニョも好きだけど、ユーミンの歌声の心地よさはわたしの中では向かう所敵なし!って感じだ。

どんな映画が好き?と、いま誰かに聞かれたとしたら、
・魔女の宅急便
・ライオンキング
・かもめ食堂
・しあわせのパン
・JERSEY BOYS
・小さな恋のうた
と返すかなぁ。

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