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第二十三章 ファッションセンスが行方不明 〜それは勘違いバンドマンか、大阪のおばちゃんか〜
大学生の頃、古着にハマった事があった。センスよく着こなせていたとは言えないが、デートを兼ねて古着屋をハシゴすることも少なくなかった。海外から仕入れたユーズド古着を中心に、それ程高くはない買い物をして回る。今思えば大学生らしい趣味だったのだと思う。
私は3人兄弟の一番上として育った。上に兄弟がいない人間は手に入れるもの全てが新品だ。学用品や制服、玩具や絵本。誰かの名前を消して使うという経験が私にはほぼほぼない。当然服など新品か裁縫が上手い母親の手作りしか着たことがない。故に、私はお古というものに幼少期から憧れを抱いていた。新品の方が良いじゃないかと思う方も居るだろう。そこは無い物ねだりというやつなのだ……。サイズがまだ合わない大きめのスカートやコート。少し古いが故に同級生とはデザインの違う学用品。それが酷く羨ましく見えたのである……。
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この週末。私は古着のフリーマーケット的な催しがある事を知り出かけてみることにした。フリーマーケットも古着も、私は大好きだ。そして〇〇放題というお徳そうな謳い文句も大好きだ。会場の古着詰め放題というコーナーを物色しないわけがなかった。
30分ほど衣類の山を掘り起こしまくっただろうか……。宝探しのようで正直楽しかった。
野口英世を一人お渡しして、紙袋に詰め放題した古着を持ち帰る。流石に古すぎるものや、綺麗でも自分は着ないと言い切れるものは持ち帰らない。お陰で紙袋にはまだ余裕が見られたが……まぁ、良いだろう。量より質だ!(ユーズド古着に質も何もないか……)
帰宅した私はネズミを仕留めたネコよろしく、持ち帰った戦利品を見せびらかす。
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この辺りは羽織物として使えそうだと思って詰めて来たものだがメンズ物もある。なので、法師(旦那)も着れないかとサイズを合わせてみる。
束子「ごめんね。完全に私の趣味で」
法師「うん、カッコイイと思う……けど、僕は自分でこれは選ばないな」
その感想は是が非か判断がつきかねます。
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束子「これは綺麗だし、今日一の掘り出し物かな」
法師「紫……黄色……」
束子「私なら着れる」
法師「否定はしない」
ファッションセンスって何だろう。私はこの歳になってもファッションセンスを説明する語彙を持たない。
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束子「あとね、面白いの持って帰ってきたんだー」
法師「うわぁあああぁあぁ!!!」
束子「ヒョウ柄」
法師「ま……また凄いの持って帰ってきたね……」
唖然とする法師など横目にとりあえず袖を通してみる。
このヒョウ柄、なんとロングコートで身長が大して無い私が素足で着ると裾を引き摺りそうであった。まぁ、これを着るとすれば足元はブーツだろうからモーマンタイ!!
束子「何か……勘違いしたバンドマンみたいだね!」
法師「………(言葉を失っている)」
束子「大阪のおばちゃんには見えまい」
法師「見えるよ!!それは立派な大阪のおばちゃんだよ!!」
束子「ロングコートなのに?」
法師「いや、ロングコートならセーフってどういうルールなん!?」
駄目だっただろうか……ヒョウ柄のコート……たしかに普段着にするのは憚られはする。これを着て娘の幼稚園のお迎えには流石に行けぬと思うが…………うーむ、アニマル柄って着こなしが難しいっていうしなぁ……。
(法師曰く「着こなしの問題じゃない!!!!」)
どうやら私にはファッションセンスは無いらしい。