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Upić Się Warto(酔っ払うことに価値がある)帰国後、2つの国のはざまで考えること  浪花朱音

ポーランド第5の都市、ポズナンに夫婦で移住した浪花さんの連載「Upić Się Warto(酔っ払うことに価値がある)」。当地で出産し、初めて子連れで日本に帰国、子育てをめぐる環境を考えるコラムです。

帰国後、2つの国のはざまで考えること

 夫と娘(生後11ヶ月)とはじめて日本に渡るためのフライトは、エミレーツ航空を選んだ。アラブ首長国連邦(UAE)・ドバイを拠点とし、サービスの良さやファーストクラスにはシャワーまで付いているという充実しすぎた設備で知られ、最近では「中東御三家」と呼ばれる航空会社のひとつだ。飛行時間や価格がベストだっただけだが、乗ってみるとかなり子連れに優しかった。搭乗してすぐ乳幼児用のトラベルセットやおもちゃが娘に贈られ、離乳食もあり、さらには子どものファースト・フライトを祝うかのような写真撮影までサービス。これが中東御三家のホスピタリティか……と放心に近い感心をしてしまう。しかしそれ以上に、まわりの席に座っていた人すべてが娘に優しくしてくれたのが、初の長距離移動に緊張するわたしたちの心を軽くした。後ろに座っていた中東系のおじさんたちは、娘が席の隙間から顔を覗かせるたびに声をかけてくれ、横に座っていたポーランド人の青年たちも時折、快く手を振ってくれたりした。

 しかしこれはワルシャワから、ドバイに行くまで4時間ほどのできごと。日本へ向かうフライトに乗り換え、席につくやいなや娘が大泣きしだしたのである。その時周囲に座っているほとんどが、日本人だった。なんとなく視線を痛く感じてしまう。同じ航空会社の飛行機に乗っているのに、相手が日本人だと途端に、迷惑をかけてしまっているのではと過剰に萎縮してしまう。もしこれがさっきのフライトであれば、周囲のいくつかの人が娘を励まそうとしてくれたかもしれない。誰とも目を合わせられない状況が心苦しく感じた。夫とふたり、ふいにこんな言葉が口からこぼれてしまう。「ポーランドに帰りたい……」。

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