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私の家族 7 /私とお店のこと beeteat 竹林久仁子
翌朝目がさめると風景は自宅だった。
カッキーン、カッキーン
金属音がする…まだ兄達も眠る2階の寝室から1階のリビングへ行くと、全力で兄の金属バットを振り回している母がいた。昨晩の荒れたままのリビングの奥で父はうずくまっていた。
もう限界だった。
間も無くそんな日常に終止符が打たれ、両親は離婚が成立。2人の兄は父に、私は母に引き取られた。
群馬から母の弟と、母の姉の旦那さんの二人の叔父が車で迎えにきてくれた。本家の長男になる母の弟は、いざという時には家族のトラブルを全て面倒見る役になってしまっていた。年も離れたアル中子持ちの姉の面倒を必然的に叔父が見なければならなかった。
群馬までの車中、母はずっと無言でうなだれていたらしい。当時開通したばかりの高速道路を使用したとしてもかなりの移動時間だったと思われる。車内で誰一人、会話をするものはいなかったそうだ。当時叔父にもちょうど私と同じ年頃の子供が2人いた。幼い私を見て、この子の将来はどうなってしまうのだろう…それしか頭になかったそうだ。もう一人の叔父も同様だったようだ。皆不安でしかなかったのであろう。
群馬県の北部にある母の実家へ近づいてきた頃、空から雪が降ってきた。降り積もってしまえば厄介だ。叔父は帰路を急ごうと疲労と緊張で焦っていた。
「砂糖や!!!砂糖や!!!空から砂糖が降ってる〜」
突然車内にはしゃぎ声が響いた。幼い私だったそうだ。叔父が窓を少し開けると、私はさらに喜んで手を伸ばして雪を掴もうとしたり口を開けて食べようとするふりをした。関西育ちの私は初めての大雪に大興奮だったようだ。
堪え難い緊張の中、あまりにも無邪気にはしゃぐ私の姿を見てホッとしたと、叔父がのちに聞かせてくれた。
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