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【連載】韓国でオンマになりました/木下美絵 第9回 複業、はじめました(仕事文脈vol.25)

「ふつうに複業」―。今号の特集が決まったとのメールをもらって「今だ」と思った。何が今なのかというと、現在の私の仕事について打ち明ける時期だ。実は昨年から、これまでの肩書(日韓書籍の著作権の輸出入仲介を行う「版権エージェント」)に加えて、ハンドメイド作品を制作・販売する活動も始めた。そう、私自身も今「複業」中の一人だ。

これまでもエージェント業のかたわら、翻訳や通訳、コーディ―ネーターの仕事をしてきた。しかしいずれも本や出版に関したことで、本業からそう遠く離れていなかった。それが今回はハンドメイドというまったくの畑違い。何がどうしてこうなったのか、私の場合について話そうと思う。

きっかけは2019年末から始まったコロナ禍だった。2017年にエージェンシーを立ち上げた後、特に日本への韓国書籍の輸出は韓国文学ブームもあり順調に契約件数が伸びていた。ところがコロナ禍を機にその勢いがぱたりと止まってしまった。知人の編集者は「日本はコロナ禍で書店の閉店が相次いでいる。活字離れも深刻で、版元も厳しい状況」だと話していた。

年々上昇傾向にあったアドバンス(※1)もネックとなった。国内書籍の売上が低迷するなか、ただでさえ販売数の少ない翻訳書の出版となると、ドラマや映画で取り上げられて有名だったり、各種文学賞を受賞したタイトル・著者だったり、何かしら付加価値の高い作品が求められた。するとアドバンスはかなり高額になり、「今回は諦めます…」と契約成立まで至らないことが増えたのだ。だが、こうした外的要因だけでなく、私のエージェントとしての営業不足、力量不足によるところも多分にあったに違いない。なぜなら、現在も文学のみならずどんどんジャンルを拡大して様々な韓国書籍が日本で刊行され、読まれ続けているからだ。

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