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タバブックスの本棚から13─私たちの話には意味がある

 ただいま絶賛準備中のタバブックス最新刊『何卒よろしくお願いいたします』は、『ぼのぼの』でおなじみの漫画家いがらしみきおさんと、韓国のアーティスト、イ・ランさんの往復書簡だ。原稿をチラ読みしたら2人のやりとりがめちゃくちゃおもしろく、特にランさんが考えることにすごく興味がわいた。(『何卒』は本当におもしろいので完成したらぜひ読んでください!)

 タバブックスから刊行されたランさんのコミックエッセイ『私が30代になった』や、YouTubeに上がっているミュージックビデオは見たことがあったけれど、長い文章をじっくり読んだことがなかった。そこで宮川さんから彼のエッセイ『話し足りなかった日』(リトルモア)を借りてみた。
 読んでいて不思議な気持ちになった。私はこれを「読む人」のはずなのに、「書く人」や「作る人」のテンションで見ていると思った。ランさんが自分自身について書いているからだろうか。私も自分の経験について何かを書きたい、書かなきゃと感じた。
 ランさんは「自分をネタにしてストーリーを作る」そうだ。自撮りや音声メモやノートで自分自身を観察し、記録し、それを材料に音楽を作ったり、文章やマンガをかいたり、映画を作ったりしている。
 おこがましいかしれないけど、なんかちょっとだけわかると思った。私は今のところ音楽も映画も作れないしマンガも描けないけど、大学2年生くらいからずっとiPhoneのメモに記録をつけている。今見たら3008件になっていた。初めて自分でZINEを作ったとき、このメモの記録をもとにして作った。全部自分語りのZINEだった。

 「私たちの話には意味がある」とランさんは言う。ランさんは自分が担当する音楽や映画のワークショップで、受講生たちに自分の話をさせる。自分は平凡だと思っている受講生たちがする話が、ひとつとして同じものはないこと、それぞれ異なる話を聞くのがおもしろいということを一緒に確認するそうだ。


 私も、私の話に意味があると思う/思いたい。実は、私にはこの1年くらいずっと話したかった話がある。それをなんとか形にして残したいと思っていたけど、ランさんの言葉に触れて、やっぱり実行に移すことにした。
 このnoteの連載「タバブックスの本棚から」は一旦お休みして、次回からその話したかった話を始めようと思う。

※ランさんは「彼女」という言葉を使わず、三人称には性差を問わず「彼」を使うので、今日は私も「彼」を使ってみた。

(げじま)


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