ヤマコンさんお悩み相談vol.2 「証券会社に投資を任せっきりの母が心配」「激務のパートナーに日常を取り戻すアドバイスを伝えたい」
時々お悩み相談を500円で行っているヤマコンさん。今回、noteの特別企画としてヤマコンさんへのお悩み相談を募集しました。『くそつま本』にも通じる「自分で、無理なくやっていく」視点からの回答は、相談者ならずとも何かのヒントになるかも。第2回では「証券会社に任せっきりの投資をしている母が心配」「激務のパートナーに日常を取り戻すアドバイスを伝えたい」の2本をお届けします。
※相談の内容は読みやすいよう、文章を一部編集しています。
※「インフレが止まらない社会で、老後のお金の心配を減らしたい」「労働組合の若手加入者を増やすにはどうすれば?」の相談にお答えした第1回はこちら。
相談3:証券会社に任せっきりの投資をしている母が心配
私の母は証券会社に任せっきりの投資をしています。母の口座だけでなく、私と私の娘の口座も利用して資産運用していました。私は証券会社に任せっきりで、よくわからない投資先に投資していいのだろうか、と不安になり、自分の口座での資産運用はやめてもらいました。しかし私の娘の口座の運用は「銀行の株だから大丈夫」と言い切られ、続けています。おまけにその証書を「親権者だから」という理由で娘の父親に渡してしまっているので、私は把握できていません。銀行株だから大丈夫って、本当に大丈夫でしょうか? 母は最近、急に衰えてきていて、証券会社任せっきり状態も大丈夫なのか気になります。(ペンかーさんさん)
「手数料」という大きなデメリット
「任せっきり」というのが証券会社の担当者に言われるがままに売買しているということだとしたら、だいぶ好ましくない状況にあると思います。
例えば大手の証券会社で100万円分の株式を購入する場合、支店や電話で取引するとざっくり1万2000円くらいの手数料がかかりますが、同じ証券会社のウェブ口座から購入したら900円くらいの手数料で済むことがあります。
こうなると、買った瞬間から1万円以上の確実な損失が発生することになります。売るときも同様の手数料がかかるので、往復で約2万2000円の損。この時点ですでに証券会社の担当者を通して取引するほうのデメリットが大きすぎます。
どの株を買ったら儲かるのかは誰にもわかりませんが、手数料は事前にわかりきった確実な損失です。
しかも証券マンや銀行員の中には繰り返し売買するようなアドバイスをしてくる人もいるので、年間何万〜何十万円もの手数料を取られている可能性も考えられます。
この状態では増えるものも増えないですし、損が出たときは担当者や証券会社ではなく、企業や社会のせいというような不利な構図になってしまいます。
そもそも、「銀行の株だから大丈夫」という論調が特定の世代を安心させるための中身のないセールストークって感じがして、だんだん腹が立ってきました。
勝手に想像を膨らませて勝手にムカムカしてきたので、ちょっと外に出て落ち着いてきます。
(すっきりお散歩タイム)
さて、『くそつま本』やウェブメディアにも書いているとおり、集中投資はリスクが大きいです。一発逆転狙いの人や、金融商品の取引を楽しんでいる人がやるものとしては良いと思いますが、堅実に資産形成していくための戦術としてはおすすめできません。
対象の株式が銀行だろうと、大企業だろうと、危険なものは危険です。
例えば、みずほ銀行の株価の推移を見てみると、ここ10年くらいは大体1000〜2700円の間で推移しています。
たとえ倒産するリスクが低かったとしても、自分が投じている資産が半分になる可能性は十分にあり得ます。
とはいえ、自分で分散投資するのも大変だし、ある程度インターネットに慣れていないとウェブ口座やネット証券を使うのも手間です。
基本的には手数料の安いインデックス型投資信託を買って放置することをおすすめしていますが、お母さまの場合、信用できるファンドマネージャーを見つけてアクティブ型投資信託を買って運用していくほうが向いているかもしれません。
丁寧に運用されているアクティブ投信の場合、わかりやすい運用報告が定期的に届いたり、報告会や社会科見学のような催しが行われることもあり、安心感が強いです。
信託報酬(実質的な手数料みたいなもの)は年率で1%ほど発生しますが、プロに運用を任せたい方にとっては、比較的安いコストで誠実な運用が期待できると思います。
投資信託は売買手数料無料の商品が多いので、販売側・運営側にとっての主な収益は信託報酬となります。
信託報酬は年率で発生するので、株式と違って何度も売買させても利益が生まれません。
そのため、投資家が長期保有したくなるようなものを作っているはずです。
長期保有してもらうということは好成績を出し続けるか、投資家の信用を得られるような運用を続けなければなりません。
投資信託も様々で、全てが良い商品とはとても言えませんが、良い商品もいくつかあります。
証券会社に任せきりで株式取引を続けるよりはかなり合理的ではないでしょうか。
重要なのは不安な気持ちを減らすこと
理論的にいくとこんな感じになりますが、重要なのは相談者さんが「不安になる」という点だと思います。
人生に不安な時間が生まれること自体がじゅうぶん不利益なので、お金が増えようと減ろうと関係なく、不安な気持ちになる要因はできるだけ少ないほうが良いですよね。
家族のNISA口座や新規公開株の応募権を利用するのは別に悪いことではありませんが、本人の同意を得てから行うのが前提なので、名義人の意思を尊重すべきだと思います。
非課税枠も勿体ないっちゃ勿体ないけど、不安な気持ちになったり、家族の関係が微妙になるほうが勿体ないです。
そのようなことを穏やかに伝えてみて、「勉強しながら自分で運用してみたい」と言ってみるのが良いかなと思います。
どうでも良いけど、すっきりお散歩タイムにネオポゴタウンの外に出たら、コガネノウゼンっていう真っ黄色の花がえげつないくらい咲きまくってて綺麗だったので、元気な気持ちになりました! ありがたいです。
相談4:激務のパートナーに、日常を取り戻すアドバイスを伝えたい
パートナーが激務で人生を謳歌できていない気がして心配です。結婚したいときの『ゼクシィ』ごとく、『くそつま本』をそっと置いて布教していますが、気がつく様子もありません。自分は『くそつま本』を読んでから、好きな本屋で本を買って読むようになり、生活にゆとりがでてきた感覚があります。それ故に、ほぼ毎日終電で帰ってくるパートナーに心配が募るばかりです。ずばっと指摘したり、会議を開いて討論したりすることが得意ではありません。日常を取り戻すアドバイスの言葉をどのように伝えるべきでしょうか。ご教示いただけると幸いです。(ペトリコールさん)
選択肢を増やすくらいしかできることはない
難しい話ですが、自分だったらどうするか考えてみます。
僕は「誰かを変えよう」とはなかなか思えなくて、目の前に人生を謳歌できていない人がいたとしても、選択肢を増やしたり、視野を広げたりするお手伝いくらいしかできることがないと思っています。
もし自分のパートナーが激務で心配な状態になったとしたら、その人が仕事を休みたくなったときに休めるような状態を急いで組み立てたり、ほかに良い仕事がないか探してみたりして、選択肢の幅を広げられたら良いなと思います。
本当は普段からふたりで協力して共同の貯金を作っておくなり、生活のランニングコストを下げるなりして、いつ収入源が断たれてもしばらくは耐えられるような状態を作っておけたら良いですよね。
心身のバランスを崩しそうになったときや、暮らし方を変えたくなったときに他の選択肢がない状態はきついです。
あと、体調が少しでもおかしいと思ったときや、仕事にストレスを感じはじめたときに気軽に言い合える関係を意識して作っておけたら、ひどくなる前になんとかできる確率が上がると思います。
基本的にはパートナーが自分で選んで歩んでいる生き方を信頼したいので、余程でない限りは自由にやってもらいたいです。
激務の成果を一緒に喜べたら、きっとすごく幸せ
心理学者のマーティン・セリグマンさんいわく、人間の幸福には「達成・快楽・意味合い・良好な人間関係・没頭」という5つの要素があるとのこと。
パートナーが仕事に追われる姿を見るのはつらいかもしれませんが、激務は上述の5要素に含まれる「達成」や「没頭」を満たしてくれることも多く、意外と当の本人は幸福を感じている可能性もあります。
自分に当てはめて考えても、寝食を忘れて熱中して顔も心もゲッソリしているけど、あとで思い返したら人生燃やして充実した日々を送っていたなあと思えるときがたくさんあります。こういうの意外と楽しいんですよね。
本当はふたり揃って同じリズムでゆったり過ごせたら幸せですが、自分が忙しくて一緒にお出かけしたりできないとき、パートナーが好きな本屋で本を買って隣で楽しそうに読んでいたり、寝る前にでもそういう話を聞かせてくれたらきっとすごく嬉しいし、安心した気持ちになれると思います。
かつては僕にも恋人がいた時代がありましたが、パートナーと生活リズムのズレが生じたときは、放っておかれても勝手に己の人生を楽しめる自分でありたいし、相手もそうやって過ごしてくれたら嬉しいと思いました。忙しくてなかなか会えなかったとしても、信頼している人とたまに会って話して共有し合えたら自分の経験が2倍になったみたいで楽しいです。
もし生活を共にされているようでしたら、価値観や生活リズムを無理に合わせなくてもそのうち考え方が似てくるだろうし、ずばっと指摘したり討論に持ち込んだりしなくても、ゆとり持って楽しく暮らしている人が一緒にいるだけでじゅうぶん良い影響を与えられているはずです。
あと最近よく思うのですが、大きな仕事をもらったときや、終えてひと区切りついたときなんかに一緒に喜んでくれる人がいたらいつもより頑張れるし、激務も楽しくこなせるような気がします。「がんばれ」って言われるとプレッシャーになってしまうこともあるけど、一緒に喜んでくれるならいくらでもありがたいです。
僕の場合は最近、一緒にスペースを運営しているメンバーや近所の友達、まだ会ったことのない読者の方まで、周りのみんなが自分以上に著書の売れ行きを気にしてくれたり、雑誌の掲載情報を教えてくれたりして、その度に幸せを感じています。
もし自分にパートナーがいて、仕事の成果を一緒に喜んでくれたりしたら、それもとんでもなく幸せな気持ちになれると思います。
こういうちょっとしたことでも人生を謳歌できているような気持ちになれることがあるので、激務のいまも楽しく乗り切れるかもしれません。
あまりお教えできるようなことがなく、お役に立てたかわかりませんが、パートナーの方だけでなく相談者さまの気持ちも少しでも軽くなればと思います。ありがとうございました。