女性、育児、フリーランス・3 個人から連帯へ グレーな態度であり続けるための実践(仕事文脈vol.19)
子どもを産み育てるようになってから、いろんなことが見えるようになったのは、きっと筆者だけではないはずだ。例えば妊娠・出産による体やメンタルの変化や影響のほか、男性に比べ女性が子育てを引き受けざる場面が多いこと。社会からの視線や、働きづらくなってしまうこと。ことにフリーランスであれば産休・育休制度が存在しないだけでなく、自治体によっては保育園に預けようとも入れる確率が下がってしまうこともある。フリーランスという形態自体が、世間的にはグレーな存在ともいえるかもしれない。その中でも女性であり、子どもを育てている人は、どんなふうに働き方や、自身のあり方を捉えているのかが気になった。個人的な状況や経験を聞くことで社会の一端も見えてくるのではないかと思い、3名にインタビューをした。(取材・文:浪花朱音)
1.「働いているのかな」という不安と、時間を費やして描きたいという気持ち もりたりぼんさん
2.仕事と体と家族と 自分らしく継続できるあり方を探る 櫻間裕子さん
個人から連帯へ
グレーな態度であり続けるための実践
野田智子さん
野田智子さんは厳密にいうと元・フリーランス。アートマネージャーとして活動する彼女は、2020年より夫でアーティストの山城大督さんとともに「Twelve Inc.」として法人化した。子どもは小学2年生の長男と、年中の長女のふたり。コロナ禍に長年暮らした愛知から京都に居を移し、1年が経ったところだ。
――――京都に引っ越してからの2ヶ月ほどの間に法人化と事務所の設立をしたんですよね。
会社の設立は2019年の終わりぐらいから準備はしてて、翌春から京都に引っ越すと同時につくろうとしてたんだけど、世の中がコロナになったから一回保留に。コロナになった時、この状況に対して何かしたいと思っていて。愛知県のアーティスト支援事業の企画公募に出すには法人でないといけないことや、山城に映像制作や配信の仕事がきたこともあって、これは会社にしたほうがいいねってなったんですよね。そこから1年はお互いにいろんな声がかかったのもあったから、それぞれの仕事をしつつ環境を整えていきました。今年の春にわたしの仕事を手伝ってくれていた子に正社員として入ってもらったので、広い事務所を借りて。
――――同時に家庭内でも山城さんは大学教員にも就いたり、長男の丗界(せかい)くんが小学校に入学したり、変化がありましたよね。
今までは名古屋に住みながらNadegata Instant Party*(以下Nadegata)でいろんなところに行きまくってて、保育園も自由に休めるし、制作のために1ヶ月滞在するとかもあった。けど、コロナになってそれもなくなりました。山城も教員になったし、5年もしくは10年という長いスパンでここにいるんだなってことをこの1年で理解したんですよね。
だけど子どもがこの街に住んで、学校や新しい生活にどう彼が馴染んでいくかってことに最初からつまずいた(丗界くんは引越しと同時に始まったパンデミックへの恐怖と、学校に友だちがいない不安で、休校が明けてからもしばらく登校することができなかった)。休んだらいいよとは思う。でも、近くに連れて行けるところがないんですよね。大きい公園は学区外だし、家から近い京都御苑は小学生向けでもない。鴨川も少年が単独で遊ぶには不安だし、すでにコミュニティができてる感じもしてて。子どもが暮らす生活圏に、半オープンな場所をつくるのがいいんじゃないかなと思ったんです。
*Nadegata Instant Party……中崎透、山城大督、野田智子の3名で構成されるアートコレクティブ。2006年より活動を始め、現在に至るまで様々な芸術祭や美術館で作品やプロジェクトを展開している。
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