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同志で集い、働く(part2) 「城山コーヒークラブ(SCC)」 (仕事文脈vol.25・特集1 どう、集まる?)

書店や飲食店など個人経営の店では、夫婦や男女カップルという単位で運営されていることが少なくない。そこでは男性が店主として表に立ち、女性は裏方というケースもしばしばだ。店を営むうえで、夫婦・家族経営、あるいは店主と雇われスタッフといった以外では、どんな関係性があるのか。共有する考えのもと、対等な関係性で店を続ける人たちに話を聞いた。(取材・文:編集部)


地域住民たちから投資を受けアーティストたちが運営

城山コーヒークラブ(SCC)

「役立たず」な人たちの場所

韓国・ソウルの麻浦区にあるカフェ、城山[ソンサン]コーヒークラブ(SCC)。広いお店ではないがゆったりとスペースが取られており、車椅子やベビーカーでも十分に利用できそうなカフェだ。一角には反オリンピックや気候正義のためのパンフレットやチラシ、性犯罪や性暴力被害者のためのワンストップセンターの連絡先が書かれたステッカーなどが置かれている。

「日本ではカフェなどに自由に持ち帰れるフリーペーパーやステッカーが置いてあるのをよく見ますが、韓国では少ない。自分の店ではぜひやりたいと思っていたんです」。そう話すのは、SCCメンバーの一人であるハマムさん。「放射能や天皇制が嫌で日本から逃げてきた」と言い、ソウルで暮らしはじめてもうすぐ10年になる。現在はSCCの運営と並行して、ジェンダースタディやクィア理論、障害学に関心を寄せながら絵も描いている。

SCCを運営するのはハマムさんに加えて、キョン・ソンスさん、イ・ヘインさんの3人。ソンスさん、ヘインさんはインディーズバンド「ゴンジュングヌル(공중그늘、空中陰影)」のメンバーでもある。ゴンジュングヌルはメンバー全員がヴィーガンであることや、親世代が既存の学校教育に疑問を持ち、オルタナティブ教育や生活者運動の流れを作ってきた386世代の学生運動家だった影響もあり、一般的な学校教育を受けていないといった共通項を持つ。

SCCがある場所にはもともと別のカフェがあり、3人はそのカフェで働いていた。

「私の周りにはアート活動をしている友達がたくさんいますが、みんな貧しいです。なぜアートが資本主義の手先になっているのか、なぜ政治的なアートはダメだと言われるのか……そんな疑問を抱きながらアートを制作している私たちは、この社会では『使えないもの』『売れないもの』に振り分けられます。『役立たず』とされる私や友人たちには場所がありませんでした。そんな時に友人たちと雇用されたのがこのカフェで、一緒に働くことに可能性を感じるようになりました。でも、賃貸料や維持費を支払い続けるのが難しく、半年ほどで私たちの雇用主はカフェの廃業を決めました」(ハマムさん)

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