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こいのぼりの好きなもの探り21/ M-1グランプリを観て、思い出していたあれこれ

※結果等のネタバレがあります

 今年もM-1グランプリの季節がやってきました。漫才の祭典です。年々と日本全体のお笑い熱が高まっているのを感じます。私もその高まりに乗じた人間です。芸人さんたちが心血を注いでつくった面白いものが好きです。でもどこがどう好きなのか、文章にしようとすると筆が止まってしまいます。お笑いという直感的なものを理性的且つ論理的に語ることは難しかった。なので今回は、観ながら頭をよぎったあんなことこんなことを記したいと思います。

 M-1グランプリ2021でもっとも感情が動いたのは、ハライチの決勝での漫才をみていた時と、脱落が確定した時の2人のコメントを聞いた時でした。私は「ハライチのターン」というラジオ番組を聞いてハライチのファンになり、毎週木曜日の2人が楽しそうに話す1時間に、元気をもらいながら生活しています。だからハライチが最高だってことは身に染みていて、ラストイヤーにかます2人をみたいという気持ちがあった。だからやっぱり、敗者復活者発表でハライチの名が呼ばれた時は嬉しかったなあ。ちょっと自分でも面白いくらいに泣いていて。でも漫才がはじまると面白さで涙が引っ込んで、ニヤニヤして。あんなに感情が揺さぶられたのは初めてだったと思います。

 あとは脱落が確定したとき、岩井さんが「M-1ありがとう。楽しかった。」と笑っていたのが、なんだかとてつもなくかっこよかった。そのかっこよさにやられてしまって、涙腺からは涙が垂れ流されて続け、いつの間にか立ち上がって拍手をしていました。その後のラジオで岩井さんが「今まで漫才師として漫才をやってきたと思ってたんだよね、ずっと。なんか今考えると、俺らがやってきたのは漫才じゃなくてM-1をやってきたんじゃないかって。」「でももうケリがついてよかったなって。こっからハライチって漫才がある気がしてね。」「芸人始めたときに、『なんでもできるぞ、何つくろう』って思ってた時ぶりの、久しぶりの自由だよ」
と言っているのを聞いて、「最高だな!!くそ!!!」と叫びました。私はああいう人になりたいです。

 そんなハライチや他の漫才師の方々を見ていて、思い出したことが二つありました。思い出すというか、今までの私の記憶から自然に浮かんできたことです。
 一つ目は漫画『三月のライオン』で出てくる、幼少期から棋士として活躍する主人公・桐山とその好敵手である二階堂が、終わりのない将棋という闇に崖の上から何度も身を投げるという描写です。身を投げるように全てを賭けてつくったもの(棋士の場合、対策や戦術)でも、容赦無く潰されたりする。けれどその恐怖をものともせず、何度でも飛び込んでいく。そういう場面でした。ハライチや、M-1に挑む他の漫才師の方々を見て、「これは、あれと一緒だ」と思ったと同時に、強烈に憧れました。それくらい夢中になってしまうものに、出会いたいと思ったし、自分から出会いにいかないといけないと意思を固めたりしました。

 二つ目は『佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)』のゲストで芸人であるインパルスの板倉さんが来た時に言っていたこと。佐久間さんが「こっから先は(どうしたいの)?」って聞いた時に、板倉さんが「ここまできたら、自分の人生を貫いた人間がどういう末路を辿るのか見たいんですよ」と言っていて。岩井さんが楽しそうに漫才している姿、錦鯉・まさのりさんのノリノリまさのり、暴れるランジャタイ、ゆにばーすの研ぎ澄まされた漫才の中にある個性。板倉さんの言葉が重なる瞬間が多くありました。蓄積された情熱やブレない信念は細部に宿る。
 私は医療の勉強をしているのですが、現場を知れば知るほど、人を笑顔にさせることがいかにすごいことかを思い知ります。就職先が決まって主体性を忘れかけていた私は、ビンタをくらった気分でした。M-1グランプリ2021は、最高の面白さと共に、私にどんな生き方をしたいかを考える機会をくれました。

(写真は最近撮ったお気に入りのもの。友人が走っているやつです。)
こいのぼり

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