「聞く」という仕事 第四回 ベタな質問/辻本力(仕事文脈vol.17)
前回に引き続き、インタビューにおける「質問」について考えていく。今回は「ベタな質問」を俎上に上げてみたい。
少し前に、今年第163回芥川賞を受賞した遠野遥氏の「【芥川賞に決まって】 円滑なインタビューのために」【※】という受賞記念エッセイがネット上で話題になった。そこで彼は「聞かないでくださいというほどではない。が、かわりの質問があるなら、そちらにしてもらったほうがインタビューが円滑に進むと思われる」として、4つの気が乗らない質問を挙げていた。ここでは、そのうちの2つに言及したい。
1つ目は「この作品で伝えたかったのはどういうことなんでしょうか」。伝えたいことがないから答えることができないし、あったとしても端的に説明できるものではないし、ましてや不特定多数の人間にわかるように説明するの困難。そもそも「何かを伝えるため」に小説を書いていない——というのが、気が乗らない理由だ。
2つ目は「小説を書き始めたきっかけを教えてください」。「きっかけ」というのが、どういったものを想定しているのか分からない。「小説を読むことで救われてきたから」みたいなストーリーを求められているのかもしれないが、自分にはそうしたきっかけはなかったし、「なんとなく」的な答えしかできないから話も盛り上がらない——こうした理由から、気が乗らない、と。
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