女性、育児、フリーランス・1 「働いているのかな」という不安と、 時間を費やして描きたいという気持ち(仕事文脈vol.19)
子どもを産み育てるようになってから、いろんなことが見えるようになったのは、きっと筆者だけではないはずだ。例えば妊娠・出産による体やメンタルの変化や影響のほか、男性に比べ女性が子育てを引き受けざる場面が多いこと。社会からの視線や、働きづらくなってしまうこと。ことにフリーランスであれば産休・育休制度が存在しないだけでなく、自治体によっては保育園に預けようとも入れる確率が下がってしまうこともある。フリーランスという形態自体が、世間的にはグレーな存在ともいえるかもしれない。その中でも女性であり、子どもを育てている人は、どんなふうに働き方や、自身のあり方を捉えているのかが気になった。個人的な状況や経験を聞くことで社会の一端も見えてくるのではないかと思い、3名にインタビューをした。(取材・文:浪花朱音)
2.仕事と体と家族と 自分らしく継続できるあり方を探る 櫻間裕子さん
3.個人から連帯へ グレーな態度であり続けるための実践 野田智子さん
「働いているのかな」という不安と、
時間を費やして描きたいという気持ち
もりたりぼんさん
東京都在住のもりたりぼんさんは、2020年に1冊目の絵本『さようなら ぴょんこ』(河出書房新社発行)を上梓した、駆け出しの絵本作家だ。3歳と4歳の男の子と、AIの開発・研究を行う会社員(現在はコロナ禍により在宅勤務だそう)の夫との4人暮らし。今回は企画に興味を持っていただき、インタビューが実現した。
――――企画のどういったところに引っかかってくださったのですか?
なんとなく考えていることが似ているのかな、という興味からですね。結婚生活が始まって子どもを産むと、自分の父と母の育児する姿を思い出しませんか? 家の中で男尊女卑があったとは思わないんですけど、うちの母は専業主婦だったんです。当時は女性が働くことが一般的じゃなかったとは思うんですけど、父が外で働いて母は家事をやるってバランスで。母が育児と家事の責任者になっている姿は見てきたけど、自分も子どもを産んでからおのずとそうしなきゃいけないって気持ちが出てきていることが気付いて。
夫は家事も育児もすごくするんですけど、仕事も忙しいし、したい。だから自分が頑張らなきゃとか思っちゃうんですよね。子どもを一時保育に預けた時期があるんですけど、近所の人にそのことを話すと「優雅でいいわね」と言われたこともあって。絵本って出版されないとお金にならないし、なんかちょっと気弱になってしまって「仕事してました」とは言えずに笑って済ませてしまったことがあります。子どもを預けるとそういう目で見られるんだと思ったし、そういう社会の構造は自分の中にも意外とあるんだなと。
――――東京だとフリーランスの人も多く、世間からの理解もあるような気がしますが。
フリーランスの人は多いけど、あんまり会うことがないんですよね。上の子が保育園に入って、下の子が0歳の時はコワーキングスペースに行ってたんですけど、そこでフリーランスの人がいるんだなとは感じました。そこは1階で保育士さんに子どもを預けて、2階で仕事をするようなスペースで、保育園に預けるよりは割高なんですけど、赤ちゃんの頃から預けるのもちょっとな、と思っていたので。
あと会社員だと、その会社にいる間にちょっとコンビニ行くとしても、会社に行っていれば仕事をしているっていう安心感があると思うんです。でも、会社に通うわけでもないとグレーになるというか。保育園に送っていったけど家のことをやってたら時間が経っちゃって「自分って働いてるのかな」とか。でも最近は在宅勤務の人が増えたから、そのへんでみんなちょっとだけグレーになったような感じがします。夫も通勤で1時間ぐらいかかっていたのが在宅になって、わたしも夜一人で子ども見なきゃいけない時間がすごい減ったんですよ。場合によっては、子どものお迎えにも行ってもらえるし。
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