ホントに何も言わないな/武田砂鉄(仕事文脈vol.19)
東京オリンピック・パラリンピックは開催すべきではなかった。やるべきではなかったものが結果的に開催されてしまったとしても、こちらの考えを変える必要はない。なんだかんだ観ちゃったよねという声がある。自分もなんだかんだ観た。でも、やるべきではなかったという考えを変える必要はない。
この1年間、繰り返し、オリンピック開催に反対する原稿を書いてきた。担当しているラジオでも意識的に言及してきた。近づくにつれて大々的に反対を表明する人が少なくなるだろうという見込みがあった。案の定、その通りになった。神戸大・小笠原博毅教授が編著『反東京オリンピック宣言』(航思社)の中で、オリンピック開催を推進する力になるのは、賛成派でもなく反対派でもなく「どうせやるなら派」の人たちだと命名している。お金の問題、環境破壊の問題、その他いろいろと問題はあるんだろうけれど、せっかくやると決まったんだったら、みんなで一丸となって楽しもうよ、という姿勢を問題視していた。コロナ禍のせいで、この「どうせやるなら派」の発生時期は遅くなったものの、開催直前に大量発生し、大会期間中も増殖を続けた。
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