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編集部座談会「ていねいな暮らし」は今どこに?(仕事文脈vol.24・特集2 住まい、どうですか?)前編
『ku:nel』や『天然生活』、『Arne』など、2000年以降相次いで「暮らし系」雑誌が刊行し、支持を集めていた「ていねいな暮らし」。しかし近頃では、そうした雑誌の休刊やリニューアル、またネット上で炎上するなど、人々の受け取り方に変化が見えます。社会情勢が悪化していく中、あの頃流行ったていねいな暮らしはどこへ行ったのか? 編集部の宮川・小沼・浪花で振り返りながら、そのゆくえを追いました。
主婦向け生活雑誌から「暮らし系」全盛期へ
浪花 今回、暮らし系メディアを調べるにあたって『婦人の生活』を出発点にしました。花森安治が編集長だった雑誌で、時期としては日本が太平洋戦争を始める1941年。新しい服を買うのではなく着物をリメイクするとか、国防服であるモンペの機能性を説いているとか、知恵工夫で質素な生活を推奨する大政翼賛的な意味の強い雑誌です。その後、花森安治は戦後すぐに『暮しの手帖』を立ち上げたんですが、以降の高度経済成長期といえば何があるんでしょう。
宮川 それこそ『すてきな奥さん』とか。婦人系の雑誌がすごく熱くなったのが高度成長期ですよね。
浪花 いわゆる専業主婦向けの生活雑誌ですよね。『クロワッサン』や『オレンジページ』はその系譜でしょうか。
宮川 『婦人画報』は、リッチな奥さんが生活を楽しむ雑誌ですよね。それより一般向けなのがたぶん『すてきな奥さん』。すごい流行ったよね。新春号は家計簿が付録についてきて。
小沼 『すてきな奥さん』は1946年に婦人雑誌『主婦と生活』を創刊した主婦と生活社が版元です。公式サイトの年表に載っている「93年3月 社会的な使命を完遂したとして『主婦と生活』休刊」(*1)ってなんかすごいですね。
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