40歳、韓国でオンマになりました 第4回:オンマだって、人なのだ/木下美絵(仕事文脈vol.20)
2年ぶりに手帳を買った。妊娠中だった一昨年、初めての育児で手一杯だった昨年は思うように働けず、スケジュール管理はメモ帳(という名の裏紙)で事足りた。そして今年。ついに本格的に仕事を再開できる機会がやってきた。娘が生後15か月で保育園にあたるオリニチプに入園することが決まったのだ。
オリニチプとは直訳すると「子どもの家」。0歳〜満5歳の子どもを対象とした保育施設で、運営主体は国公立、民間、社会福祉法人など様々。評判の良いオリニチプは待機児童も多いが、特に民間オリニチプは街の至る所にあるので最終的にどこにも入れないというケースは少なく、韓国では仕事復帰を目指す親たちの強い味方になっている。
やっとまとまった時間が持てる! ずっと足を運べなかった取引先に顔を出したり、新規開拓の営業にも行こう。未翻訳書の紹介資料もどんどん作るぞ。まっさらな手帳のページをめくりながら、以前のように予定やタスクを書きこむ自分の姿を頭に描く。こんなにも仕事がしたくてウズウズしたのはいつぶりだろう。5年前の著作権エージェンシー開業以来かもしれない。
産後初めて購入した手帳。表紙の刻印は色々あったが「うまくやってるよ」にした。
この2年間、かなり細々とではあったが仕事は一応継続していた。でも実は妊娠が判明した当初はしばらく休業するつもりだった。初産、しかも高齢出産だったので無事に産み終えることを第一目標にしていたし、その後の育児との兼ね合いについても全く想像がつかなかったからだ。ところが真っ先に反対してきた人がいた。同業者である韓国人の夫だった。「仕事のペースを落とすのはいいが、休業はしないほうがいい」。続けてこうも言った。「休んでしまうと、この業界はすぐに忘れ去られるよ」。
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