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東京五輪に関わった人たち CASE-03(仕事文脈vol.19)

開会の約2週間前に無観客での開催が決まり、東京五輪は多くの人にとってテレビなどメディアを通じてしか接する機会がないものとなった。新型コロナウイルスの感染拡大や度重なる不祥事を受け、会期中も反対の意見が激しく飛び交っていたが、実際に現場で働いていた人はどう感じていたのだろうか。関わった人の話を聞くことで、近い場所にいたからこその複雑な思いや、あるいはその人なりの論理が見えてくるのではないか。それを知るために取材を進めてみたものの、関係者からは断られることも多く、依頼は難航。口を閉ざす人が多い中、大会関係者、ボランティア、聖火リレーの記録係、さらにはスポンサーの不買運動を行なった人の4組に話をうかがうことができた。(取材・文:小沼理)

CASE-03 自分と切り離せない
事態の重さに引き裂かれる

聖火リレー記録係
Aさん(30代・男性)

3月25日に福島県からスタートした聖火リレー。相次ぐランナーの辞退、感染拡大の影響から公道を走らないなど様々な変更があったが、Aさんは7月上旬、ある地域でその聖火リレーの様子を記録する仕事に関わった。

「東京招致が決まる前から五輪には反対でした。オリンピックマネーの動き方や、これが資本や帝国主義にとってどんな意味を持つか調べたことがあって、今の状況はいびつだし、まったくやるべきではないと思うようになりました。今回の仕事も、自分の考えを説明して断るつもりだったんです。でも、会社の人手の問題で断れなくなってしまって」

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