さわる社会学/堅田香緒里 第三回「抵抗する庭」後編(仕事文脈vol.13)
■「天国のベッド」を創る人たち
コミュニティ・ガーデンとは、地域住民が共有・自主管理する「庭」を指す。ヒンメルベエットはベルリンでもよく知られた「庭」の一つで、レモングラスやミントの香り、土と堆肥の香りにつつまれた居心地のよい空間である。私が訪れたとき、ハーブの摘み方を丁寧に教えてくれた地域住民の一人は、ここはベルリンという大都市の一角にある「小さなオアシス」だと表現してくれた。近隣の人が共同で野菜や花、数多のハーブを栽培しており、訪れた人は誰でも自分で好みのハーブを好きなだけ摘み、カウンターでもらった熱いお湯をたっぷり注ぎ入れて、野性味溢れるハーブティーをその場で味わえる。空間作りにおいては、DIYと共働による実験的な実践がみられ、例えばパンやピザを焼くための大きな釜も、地域住民が共同で手作りしたものだという。その釜で焼いたパンは、住民がシェアして食べている。「庭」の中にあるカフェエリアは、廃材や泥など再生可能な資材で建てられており、ダメになった野菜も無駄にせず発酵させてコンポストとして再利用している。食の主権を大事にしながら、自然や生物多様性を出来るだけ維持し、環境を損なわない工夫に満ちた場でもあるのだ。
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