YOASOBIの魅力が詰まった1st LIVE『KEEP OUT THEATER』
突然だが、みなさんはYOASOBIのどんなところがお好きだろうか?何かを好きな理由を言語化するのはなかなか難しい。 ここでは僕がYOASOBIの好きなところを、自分なりに2つ挙げたい。
まず1つ目は、作品の1つ1つにこだわりや世界観が感じられて、僕たちの期待をいつも超えてくれるところだ。曲はもちろん、1st EP『THE BOOK』やグッズなど、「小説を音楽にする」YOASOBIらしく、1つ1つの作品にこだわりやストーリー性が込められているように思う。そうしたストーリーを背景に、Ayaseさんの疾走感が心地よくそしてどこか切ない雰囲気のある曲に、ikuraさんの伸びやかで透き通るような歌声が彩りを加えて、僕たちの胸にすっと入ってくるのである。
そしてYOASOBIの魅力2つ目は、そうした "アーティスト" な一面を持ちながら、ファンとの距離を感じさせないところである。変にかざることなく、等身大で音楽と向き合い、僕らファンとの繋がりも大切にしてくれていると、誠に勝手ながら感じている。
確固としたコンセプトを持つ"アーティスト"でありながら、親しみが持てる優しい人柄が滲み出ているような、そんなギャップがYOASOBIの大きな魅力だろう。
で、今回のライブだが、結論から言えばそんなYOASOBIの魅力が遺憾なく発揮されたライブだったと、思う。『THE BOOK』が "1冊の本のようなCD" ならば、『KEEP OUT THEATER』はまるで "1本の映画のようなライブ" だった。本当に生配信か不安になるくらい、よい意味で "ライブ感" がなく、最初から最後までこだわり抜かれた映像をじっくり楽しむことができた。
今回は難しい情勢の中、オンライン配信になってしまったが、むしろオンラインだからこそYOASOBIらしい遊び心のあるコンセプトや世界観が反映できたのだと思う。夜、誰も立ち入れない場所に集まって自分たちの音楽を演奏するところや、それを離れたところにいる僕たちがそれぞれのデバイスから聴くところが、YOASOBIとファンで秘密を共有しているようでわくわくした。チャットという "繋がり" も忘れないところがYOASOBIらしく、おしゃれやん。と思った。
言うまでもなく、パフォーマンスそのものも鳥肌ものだった。特に『あの夢をなぞって』(最初は何だとドキドキしていたところに伸びやかなアカペラで全て持っていかれた)や『怪物』(歌、演奏、カメラワーク、スモーキーな演出、ただただかっこよかった)は印象に残った。
そして何よりも、最後の『群青』の歌詞がikuraさんやAyaseさん、バンドメンバーの方々を含めたチームYOASOBIの音楽に対する姿勢とぴったり重なっていることに気づき鳥肌が立った(実際に演奏が見られるライブだからこその発見だった)。
感じたことない気持ち 知らずにいた想い
あの日踏み出して 初めて感じたこの痛みも全部
好きなものと向き合うことで
触れたまだ小さな光
大丈夫 行こう あとは楽しむだけだ
YOASOBIは "あの日踏み出して"『夜に駆ける』という楽曲を世に送り出したと思うが、そのことによって感じたこと・経験したことは何もポジティブなものだけではなかったはずだ。それでもその根本にあるのは、"好きなものと向き合う" そして "楽しむだけだ" という気持ち(=遊び心)。これからもYOASOBIは駆けるように成長していくと思うが、その原点となる姿勢が垣間見えたような気がして、そしてその瞬間に自分が立ち会えたような気がして、嬉しくなった。
僕自身がYOASOBIを聴くきっかけになったikuraさんの歌声はやっぱり透き通っていたし、Ayaseさんやバンドメンバーの演奏にも心が震えた。上でオンラインでよかったと書きながら、いつか生でYOASOBIのライブを聴きたいとも思わせてくれた。
余談だが、僕はikuraさんの「あぁ」の歌い方が好きだ。『あの夢をなぞって』のサビ前、『ハルジオン』の最後、『怪物』の最初、『夜に駆ける』のラストサビ前、『群青』のラストサビ前。いろんな「あぁ」を生で聴けただけで感激だった。
そして、最初にも書いたように、ギャップがあるのがYOASOBIの魅力。演奏中のクールな一面とは裏腹にほのぼのとしたMCも見ることができた。個人的にお気に入りは、ikuraさんが乾杯する前に普通に試飲してしまうシーン――「いや飲むんかい」と画面の前でみんなAyaseさんと同じツッコミをしたと思われる—―である。ikuraさんとAyaseさんが互いに相槌を打ちながら優しく話を聞く場面や、バンドメンバーも含めて仲の良さが伝わる場面もたくさんあった。
『アンコール』の歌唱前にはikuraさんが「毎日怯えるような日々の中で、こうやってみなさんと画面を通して繋がり合うことができて、ほんとに幸せです。」とYOASOBIの、音楽や僕らファンに対する向き合い方を象徴するようなセリフを口にするシーンもあった。
ライブの中でikuraさんやAyaseさんが「たくさんの人に支えられてここまでこれた」とおっしゃってたが、僕も含めて不安定だった2020年をYOASOBIのおかげで乗り越えられた人も多いはず。この日のパフォーマンスを通して、まだまだ始まったばかりの YOASOBIという"ストーリー" をこれからも見届けられることは幸せなことだなと、そう感じさせてくれた。
『KEEP OUT THEATER』はその序章(と言うのには完成度が高すぎたが)にふさわしいライブだったと確信している。