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ビルドトラップからの脱却と、プロダクトトリオでのディスカバリー活動
こんにちは。
「すべての合意をフェアにする」MNTSQの上村です。
エンタープライズ向けリーガルテックSaaSであるMNTSQでプロダクトマネジャーを務めています。
顧客との対話
システム開発を長く経験されてきた方なら、顧客とのコミュニケーションの重要性は身にしみて感じていらっしゃるかと思います。有名な『アジャイルソフトウェア開発宣言』には「顧客との協調を」と書かれていますね。プロダクトディスカバリーに関する名著『Continuous Discovery Habits』にも、優れたプロダクトを作るためには、プロダクトマネジャー、デザイナー、エンジニアの3名(「プロダクトトリオ」と呼ばれる)が顧客へのインタビューやヒアリングに同席することが望ましいと書かれています。
開発チームのメンバーが顧客の生の声に接することによって、ビジネスの成長をもたらす、創造的なソリューションが考案される可能性が高まります。
逆に、開発チームが顧客の生の声を聞かず、言われたものを作るだけのチームになってしまうと、プロダクトの価値が上がらず、ビジネスが成長しないようになっていきます。
このようにベストプラクティスは明確であるにも関わらず、わりと多くのスタートアップやプロダクト企業が、いまだにこの点で何らかの課題を抱えていることが多いと感じています。
今回、MNTSQではこの点にどう取り組んだのか、ご紹介したいと思います。
ビルドトラップ
取り組みを始める前のMNTSQの状況は、以下のとおりでした。
創業5年目
エンタープライズ向けSaaS
開発チームの重心はスケジュールの遵守に置かれている
開発チームが顧客の生の声を十分に聞かないまま、機能を設計・開発することが多い
エンタープライズ向けSaaSでは、プロダクトに求められる最低限の機能が多岐にわたります。今はまだ存在しない機能について、将来の開発計画をお約束して受注することもあります。このため、未成熟なプロダクトは、より多くの機能を素早くリリースすることが重要です。開発チームの重心がスケジュールの遵守に置かれることは、一定、やむを得ないと思います。
しかし、このときのMNTSQの開発は、スケジュール遵守に傾きすぎていました。一例として、プロダクトマネジャーの目標として、ビジネスの成果やインパクトではなく、スケジュール達成率がメインで設定されているといった具合でした。
言うならば、「ビルドトラップ(※)」の罠に片足(両足?)はまっているような状態でした。
(※)ビルドトラップ・・・ビジネスの成果やインパクトではなく、リリース自体を開発のゴールと捉えてしまう罠。プロダクトマネジメントに関する名著『プロダクトマネジメント―ビルドトラップを避け顧客に価値を届ける』より。
プロダクトトリオでのディスカバリー活動
そこで、なんとかしてビルドトラップから足を抜き、ビジネスの成長をもたらす、創造的なソリューションが生み出されるような環境を作りたいと考えました。そのためには、開発チームと顧客との距離を縮めることが重要です。
そこには2つのハードルがありました。
顧客とのミーティング機会の創出
1つは、顧客とのミーティング設定に苦労するという点です。顧客との接点を持っていない開発チームにとっては、顧客とのミーティングの機会を作るということ自体に難しさがあります。
幸い、MNTSQの場合、カスタマーサクセスチームが多くの顧客と定例ミーティングを開催していました。そこで、カスタマーサクセスチームの協力を得て、開発チームからの要望に応じて顧客とのミーティング時間を調整・確保してもらう仕組みを整えてもらいました(感謝)。これにより、開発チームが顧客と対話する機会を苦労せずに作ることができるようになりました。
心理的ハードルの低減
もう1つは、顧客へのインタビューやヒアリングを実施する心理的ハードルの高さです。普段の社内ミーティングと比べると段違いに緊張感や不安があり、「やらなくて済むならやらないでおこう」といった考え方になってしまいがちです。
そこで、次のような工夫をしました。
まず初めに、チームに所属するプロダクトマネジャーが、特にネタは準備せず顧客と接する機会を持つようにしました(具体的には、週に1-2回ほど、顧客との定例打ち合わせに参加するようにしました)
プロダクトマネジャーと顧客が知り合いになり、距離が近づいてきた頃合いを見計らって、プロダクトマネジャーからデザイナー、エンジニアに声をかけてもらい、顧客との打ち合わせに参加してもらいました
この2ステップにより、顧客の声を聞きながら開発するというプロセスが各チームで自然と回り始めました。
効果
取り組みを開始した後しばらくして、社内のデザイナーさんから、
「最近、顧客へのヒアリングに参加するようになり、とても良くなったと感じています。自分はユーザーにとっての使いやすさを大事にしたいと思ってプロダクトデザインに関わってきました。実際にユーザーの状況を自分で把握できるようになったことで、デザインの価値を高められています」
というフィードバックをもらいました。取り組みが社内で一定定着し、いい方向に向かい始めたことが確認できたフィードバックでした。
また、ヒアリングにご協力いただいたお客様から、
「先日ヒアリングを受けた件、その後どうなりましたか?」
といった期待感を持ったお問い合わせをいただくようにもなりました。こうした声をお客様から直接いただけるようになったことで、お客様との距離感が近づき、今まで以上に仕事へのやりがいが増してきていると感じています。
ビジネストリオも活躍中
ちなみに、MNTSQではプロダクトトリオに加えて「ビジネストリオ」なるトリオも活躍しています。
こちらは、セールス、カスタマーサクセス、プロダクトマネジャーの3人で構成されるトリオで、ビジネスの成長に結びつく施策の検討などに取り組んでいます。
We're hiring!
ここまでお読みいただいてありがとうございました!
MNTSQでは、プロダクトマネジャーだけでなく、デザイナー、エンジニアも顧客の生の声を聞き、創造的なソリューションを考案する開発プロセスを導入しています。
MNTSQの仕事にご興味を持たれた方は、ぜひ採用情報のページをご覧になってみてください。