プロヴァンスのやさしさに包まれて

先日南仏へ旅行したときのこと。

パリからアルルへ向かう鉄道に乗っていた際、アヴィニョンに着く手前で突然女性に話しかけられた。

「今流れていたアナウンスの内容、わかりますか?」

車内アナウンスが流れていることはうっすら認識していたが、BGM同然に聞き流していた。重要な内容だったのだろうか。
わからないと言うと、彼女は英語に切り替えて会話を続けてくれた。



彼女によると、私たちが乗っていた電車に何か不具合があり、アルルへ向かっていた乗客も全員アヴィニョンで降ろされることになったとのことだ。
突然のことで私がうまく状況を飲み込めずにいると、どうすればいいのか聞いてあげるから私たちに着いてきて、と彼女は言った。

彼女は夫らしき男性と一緒だった。アヴィニョンが目的地だと言う。


人混みの中を迷わず歩いていく2人の後ろを追いかけているとき、ふと彼女が足を引きずっていることに気がついた。



乗り換え先のバス発着所で電光掲示板を見て、運転手に行き先がアルルだという確認をすると、2人はお礼を言うわたしに笑顔で挨拶をして風のように去っていった。



私は無事バスに乗り込み、足を引きずって歩く彼女の後ろ姿やわたしがちゃんとついて来ているか振り返って確認する2人の仕草を思い、アルルに到着するまでの1時間程度、彼らから受け取ったやさしさに浸っていた。


その後の旅路でも、絶えず現地の人々に親切にしてもらった思い出はあまりにも多く数えきれない。


どうすれば私もこれほどやさしく幸せを与えられる人間になれるだろうか。
私はまるで浄化されたような気分でプロヴァンスをあとにした。


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