ふりかえるとよみがえる
男は長い道を歩き続け、終着点に辿り着くと天使が待っていた。
「ここまで歩いてくるなんて…バスを用意していたのにどうして?」
天使は首を傾げながら男に聞いた。
「最後は自分の足で、この道を歩きたかった…それだけさ」
男は平然とした顔で天使に言った。
長い道を歩いたはずなのに、疲れた様子はない。
「…なるほど。この先に飛行機を用意してますが、その前に…歩いてきた道を見てみなさい」
男は天使の言われた通り、後ろを振り返った。
男が中学生まで母親と一緒に歩いていた事。
事故で母親を亡くし、高校生から働き始めた事。
彼女が出来て、結婚して幸せに過ごしていた事。
身籠った彼女が事故で、子供と一緒に亡くなった事。
それから八十歳の死ぬまで、一人で生きてきた事。
男が今まで歩んできた足跡が、道に残っていた。
「今までお疲れさまでした。上で奥さんと子供が待ってますよ」
天使は優しい声で男に言うと、男は泣きながら飛行機に乗った。
たらはかにさんの企画に参加させていただきました。
以下の記事に詳細あります。