初めての鬼

妻が亡くなってから五年が過ぎた。
娘の未来を考え、毎日遅くまで仕事をしている。
一緒に過ごす時間が減り、愛想尽かされてしまった。
娘が夜中まで遊んでいるのは、俺への反抗だろう。
だが、このままではいけない。
腹を決め、夜中に帰ってきた娘を呼び止めて台所の椅子に座らせた。
俺は向かい合うようテーブルを挟んで反対側に座る。
「なによ」
娘は俺を見ず、不機嫌そうな顔をしている。
「一ヶ月の長期休暇をとった」
娘は驚いた顔に変わる。
「一週間、二人で旅行に行くぞ。それから最近出来た遊園地に行こう。人気だからチケット確保に苦労したぞ。それから…」
「いきなりそんなスケジュール…鬼?」
娘はやっと俺の顔を見た。
「一緒にいる時間が少なくてすまなかった。父さんと一緒に…居てくれないか?」
「でも学校…」
「夏休み入ったばかりだろ」
「…仕方ないわね、付き合ってやるわよ」
口ではそう言っているが、娘は嬉しそうな顔をしていた。


たらはかにさんの企画に参加させていただきました。
以下の記事に詳細あります。


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