一方通行風呂

一方通行と温泉マークが合体した標識。
道は途中で途切れ、湯気を出した長い川が果てしなく続いている。
「マスターの体臭レベルは9です。ここで洗い流すことを推奨します」
「……入ってくるからここで待ってろ」
口うるさいバイクから降り、川へ向かう途中でロボットに声をかけられる。
「おや、人間じゃないですか」
「この川は温泉なのか?」
「はい、数十年前の大地震で出来た温泉です。とはいっても客はいませんけどね。どうぞ入っていって下さい」
「そうさせてもらう」
服を脱ぎ、川に入る。
数週間ぶりの風呂は心身を清めてくれる。
廃墟化した建物に、色がない信号機。
自然に囲まれた風呂にしては、少し殺風景。
どうやらここにも人間はいないようだ。
俺がコールドスリープしている間に、世界中で自然大災害が起き、人間は絶滅したらしい。
「体臭レベルは1。バッチリです」
「うるさい、行くぞ」
生き残りの人間を探す為、次の目的地へ向かった。


たらはかにさんの企画に参加させていただきました。
以下の記事に詳細あります。


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