心お弁当

少年の心は壊れてしまった。
母親の死を目の当たりにしたからだ。
少年は学校で母親が作った弁当を食べていたが、売店のパンかおにぎりばかり食べるようになった。
父親は仕事で家に居ることが少なく、少年に金を渡すだけ。
親が作った弁当を食べているクラスメイトの姿を、少年は羨ましそうに見ていた。
少年は大人になり、一般企業に就職。
彼が昼に食べるのは、近くのコンビニで買ったパンかおにぎり。
仕事の帰り道、彼は弁当屋の前で足を止める。
看板には“お客様の心に合わせて作ります“と書かれていた。
それを見た彼は、夕食用に弁当を購入。
家に帰ると、早速弁当の包みを広げる。
入っていたのは、鮭ふりかけご飯、卵焼き、ウインナー、ブロッコリー。
彼の母親が亡くなる前に作ってくれた弁当にそっくりだった。
彼は、少年に戻ったかのように弁当を頬張る。
「ごちそうさまでした……」
空になった弁当箱に向かって、涙を流しながら手を合わせていた。


たらはかにさんの企画に参加させていただきました。
以下の記事に詳細あります。


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