数学検定1級を受けてきた
この記事はエンジニアと人生 Advent Calendar 2024の25日目の記事です。
昨日ははまあさんの「プロ労働者への鎮魂歌」でした。
相変わらずの切れ味で、まさに何も築いてこなかった自分をその一行一行が鋭く切り裂き、危うく最終日のアドベントカレンダーを投稿する前に息絶えるところでした。
さて唐突ですが、タイトルにもあるように現在48歳の私は今年10月末に数学検定(以下「数検」と略します)の1級を受けてきました。最後に筆記試験というものを受けたのは確か新卒で入った会社の入社試験の時だったと記憶しているので、実に四半世紀以上ぶりの筆記試験となりました。
特に必要でもないのに数検1級なんてものを受けたのは理由があります。一つは数検3級に合格した大変優秀な甥っ子に「数学のできるおじさん」としてカッコつけたかったから。そしてもう一つは客観的に自分の実力の程度を知りたくなったからです。
実際には自分は数学ができるわけではなく、数学の問題を解くのが好きなだけです。ガッツリ数学の構造や体系を学んだ遥かに高い視座を持つ数学者や数学徒の方々には及ぶべくもありません。
単純に年々記憶力や頭の回転に衰えを感じている中、何かしらの客観的な評価が欲しくなったのかもしれません。完全にミドルエイジクライシスですね。
とりあえず勢いで検定の申し込みをし、久しぶりにシャープペンシルと消しゴムを買いました。そして次に大人の力で問題集を買い漁りました。
申し込みをしたのはいいものの試験本番まで5週間ぐらいしかありません。平日は仕事もあるため勉強できる時間はかなり少ないです。なので兎にも角にもまずは出題範囲と問題の傾向を把握します。
公式サイトに載っている過去問(1次/2次)と、購入した問題集にある過去問を解かずにざっと眺めます。公式サイトでは出題範囲は【大学程度・一般】とありますが、実際には理系大学生が必修で学ぶ微分積分学+線形代数学と確率統計あたりまでが出題範囲のようでした。高校生が習う範囲で十分解ける問題もありました。
私は工学部出身なので、数学科でなければ習わないような分野は出題されないことがわかりとりあえず一安心です。
あとは購入した本の問題をひたすら解いていきます。もちろん全て解く時間はありませんので、ひと目見て解き方がわからない、わかりそうにない問題だけ印をつけてを重点的に解いていきます。5分悩んで解答の方針が立たないものは解答を見て自分が理解できるように咀嚼し、再度自分で解答を再現できるか確認します。とにかくその繰り返しをしながら問題集を潰していき、ある程度問題の傾向を掴みました。
さて数検1級は、1次の「計算技能検定」と2次の「数理技能検定」に分かれています。1次に合格しないと2次が受けられないような印象ですが、そうではなく両方受けられます。1次と2次を1回ずつ合格すれば数検1級は合格となります。1次は7問を60分で解き、解答だけを記入する形式で5問正答で合格です。そして2次は5問の中から2問を選択、必須の2問と合わせた計4問を120分の間に記述式で解答する形式となり、2.5問正答で合格です。
「合計3時間の試験なんて長い」と思われるかもしれませんがこれが絶妙に短い。
特に1次試験は解答だけを書く形式のため、考え方や解き方が合っていようが計算ミスをしたら問答無用でバツです。それぞれの問題自体は無茶な難易度ではないのですが、ほとんどの問題はかなりの計算量が必要で、その中で一度もミスをしないというのが意外にもかなり難しいのです。
2次は2次で別の難しさがあります。まずそれぞれの問題の難易度は当然1次よりも上がります。さらにそのうえ問題の取捨選択に時間を取られるのです。必須である2問はいずれにせよ解かねばならないのですが、選択問題の5問の中から回答として提出する残り2問を選ばねばなりません。どんな問題でも大丈夫という「強い人」であればその取捨選択に時間をかける必要はないのですが、問題によってかなり難易度に差があるため選択する問題を間違えたがためだけに不合格になるということも十分ありえます。
そんなわけで結局すべての問題をある程度解いてみなければ、自分にとって最高点を取れるであろう問題の組み合わせが選べないのです。
ちなみに後日送られてきた結果を見たところ、私が受けてきた回の選択問題の正答率は最も高い問題で58.8%、最も低い問題はなんと8.7%でした。
さて、試験当日は時間にも余裕を持って出発し、寄り道をしながら会場に向かいリラックスして試験に臨んだつもりでしたが、いざ試験が始まってみると思うように手が動きません。シャーペンを、消しゴムを持つ手が微かに震えます。当然のように覚えていた公式もなぜか頭から出てきません。容赦なく進む時計の秒針が、周囲から聞こえてくるカリカリと解答を書く音が焦燥感を一層掻き立てます。
手応えは散々といった感じで、終わった後はしばしの放心状態。そして脳裏には「撃沈」の二文字が浮かんでいました。
とはいえ、久々の緊張感と制限時間一杯まで集中した後の疲れは意外にも心地よかったのでした。
結果といえば、1次はやはり計算ミスをして不合格。そして2次はなんとギリギリ合格でした。
長年のブランクの割によくやったのではないかと思う反面、落ち着いて問題を見れば比較的易しめの問題だったと思います。それだけに1次の計算ミスが惜しまれます。
すぐにでも再挑戦したいところですが、1級は春、夏、秋の年3回しか開催されないらしく、次回は4月になるらしいので勉強時間を言い訳にできない程度の時間は取れそうです。
余談ですが、mathematicsの語源は「学ぶべきこと」らしいですね。
鉄を作ったり、会社を作ってみては畳んだり、挙句の果てには数検を受けてみたりと迷走している人生ですが、学ぶことだけはやめることなく足掻いてみようと思います。
今年のエンジニアと人生 Advent Calendarは以上となります。
メリークリスマス。そして良いお年を。
それではまた$${1^3 + 2^3 + 3^3 + 4^3 + 5^3 + 6^3 + 7^3 + 8^3 + 9^3}$$年に。