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映画『Winny』を観て思ったこと【評論】

こんばんわ、たいちです。

昨晩は、都内で先輩と飲み明かし、そのままネットカフェに泊まることになりました。

せっかくなら、何か映画を観ようということで、手に取ったのが『Winny』という映画。

今回は、こちらの映画について、評論と感想を書き記していきます。


※ここから先は、ネタバレを含みます※


ざっくり、概要紹介

この話は、日本で実際に起きた事件を題材に作られたものになります。

画期的な技術によって作られた、ファイル共有ソフト「Winny」

匿名のユーザー同士が、直接ファイルのやり取りをできるシステムとして、瞬く間に利用者数が広がっていた。

しかし、映画や音楽、ゲームなどの違法アップロード、Winnyを介したウイルス攻撃など、悪質なユーザーによるトラブルも増加。

そして、開発者の「金子 勇」さんが、ついに逮捕されてしまい、舞台は法廷へと移っていくことになります。

プログラミング技術の発展を探求する、金子勇の純粋な想い。

検事側や警察による悪質なやり口に対する怒りや、弁護士としての正義感に燃える「壇 弁護士」

7年に渡る、2人の戦いが描かれていきます。

革命的な技術「Winny」

Winny事件が起きた当初のことを、みなさんは覚えているでしょうか?

2004年の出来事になりますが、当時小学生だった僕は、関心を寄せるどころか、そのような事件が起きていることすら知りませんでした。

開発者の金子勇さんは、著作権違反の手助けに繋がる罪「著作権法違反幇助」の疑いで、逮捕されることになります。

実際に、Winnyを通じて違法アップロードが行われていたことは事実ですが、Winnyの存在自体を罪に問えるのかというのが、法廷での争点の一つになってきます。

例えるなら、殺人事件での加害者本人のみならず、凶器として使用された、包丁を作った職人が逮捕されているような状況なのです。

昔は接客や営業に従事する、バリバリの文系職でしたから、僕個人としてはテクノロジーの発展の興味が薄かったというのが、正直なところです。

しかし、起業を志すようになってからは、世の中のあらゆるものが、ネット上のテクノロジーによって形成されている、インフラによって支えられていることが分かるようになってきました。

また、現在フリーランスとして参画しているプロジェクトでも、プログラミングによって大きな仕組みが構築されていく様子をみると、改めてIT技術の偉大さと、将来性に驚かされるばかりです。

国家という巨大な人格

この映画では、金子勇本人や、弁護士団の葛藤のみならず、検察や警察組織の闇の部分も、描写されていくことになります。

虚偽の申告書を作成するなど、悪質な組織実態との戦いも、ハラハラしながら観れる場面となります。

そして、そういった検察や警察側の悪意に気付かず、不利な書面に金子勇さんがサインしてしまうことが、さらに彼らを窮地に立たせることになってしまいます。

こういった描写が、どこまでが事実に基づいたものなのかは、わかりません。

しかし、国家という存在が、「いつでも国民を守り、絶対的な正解を示してくれる」というものではないと、考えさせられる内容でした。

ビジネスと同じく、警察権力や司法も、システムとそれを動かす人間によって成り立っています。

人間という変数が関わってくる以上、国家権力という人格が、時に非人道的な判断を下してしまうことがあるのだということを、感じたシーンが多かったです。

交差するストーリー

実話に基づいたリアリティも、もちろん面白いポイントですが、実はもう一つあります。

一見関係無いように思える人々のストーリーが、交差していくという描き方が、より内容に深みを持たせているのです。

最初は、金子勇さんとWinnyを取り巻く環境についてのカットが多いのですが、そこから壇 弁護士がスクリーンに登場し、2人のストーリーが交差していくことになります。

そして、もう第3の主人公ともいうべき存在が、この作品には登場します。

「仙波 敏郎」というこの男性、愛媛県警察で巡査部長として勤務する彼は、警察の裏金問題を目の当たりにし、告発のために行動を起こしていきます。

結果的に、愛媛県警察の裏金問題が公になり、激しく罪を追及されることになるのです。

この出来事は、仙波巡査部長の顔出しでの記者会見と、Winnyによる愛媛県警察の偽造書類の流出がきっかけとなります。

しかし、勇気を持って記者会見をした仙波巡査部長には、組織ぐるみの執拗な嫌がらせが始まるのに対し、Winnyに証拠を流出させた警察は、匿名性によって守られている様子が伺えます。

この出来事を通じた2者の対比が、よりWinnyの有用性を描き出していくのです。

全く違う世界を生きていた金子勇さん、壇 弁護士、仙波巡査部長の3人が、Winnyという存在を通じて、ストーリーが重なっていくことになります。

東出昌大さんの怪演

主人公の金子勇さんを演じるのは、東出昌大さんです。

何かと世間を騒がせた人ですが、劇中の演技力の高さには、目を見張るものがありました。

特に、天才である金子勇さんの、いわゆる「研究者、パソコンオタク」特有の、挙動や話し方、雰囲気などが、本当にリアルでした。

法廷で自身の取り組むプログラミングについて説明するシーンが、特に上手く表現されていますので、ぜひ観て欲しいと思います。

まとめ

以上、映画『Winny』の評論でした。

裁判や弁護士を題材にした映画は、これまであまり観てこなかったのですが。そこのジャンルを掘ってみても面白いかもなと思える作品でした。

そして、実際にあった「Winny事件」を題材にした話でもあり、他のレビューでも「日本のIT技術発展を10年遅らせた原因となった事件」として、語られていることが多いです。

この事件は、巨大な国家機関による歪んだ既得権益と、国民による未知のITテクノロジーへの恐怖が生み出してしまった悲劇だと、個人的に思っています。

今日はここまで。

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