ハンターハンターは「王道のバトルもの」なのか?いわゆる「努力・友情・勝利」では無いという説。残酷な現実や報われない人々の群像劇だった?【元祖曇らせ系?】
・想像していたのと違った異様な物語
友達に布教されてハンターハンターを今更見ているのだが、想像していたのと違い驚いている。
鬼滅の刃、ジョジョの奇妙な冒険、北斗の拳、男塾、などなどと大きく異なっていると思った。
決して、友情の大切さや信じる気持ちがあれば上手くいくなどの根性論ではない。
心が安らぐシーンも無い訳ではないが、多くのシーンで言葉にできないような異様な雰囲気がある気がしてならない。
明らかに少年漫画らしくなく、少年漫画の体裁をとったドロドロとした人間描写や救いのない人々の悲しい群像劇なのだ。
・ゴン、レオリオ、クラピカ、キルアは「主人公4人組」なのか?
ゴン、キルア、レオリオ、クラピカの4人は俗に「主人公4人組」と呼ばれていたりもする。
冨樫先生もX(旧Twitter)でイラストを投稿されるときは、この4人をセットで描かれることも多い。
この4人はキャラのバランスも良い。
直観的で無鉄砲だが純粋だがピュアなゴン(まさに少年漫画の模範的な主人公。)
少し小生意気で冷酷だが一流の暗殺者のキルア。
熱血漢でコメディーリリーフのレオリオ。
理論的で理屈っぽいが頭が切れるクラピカ。
冒険のパーティーとして申し分ない。この四人でてっきり珍道中が続くものだと思っていた。
しかし、意外とこの4人は一緒には行動しない。
クラピカに至ってはヨークシン編(幻影旅団オークション編)を最後にしばらくはほとんど登場しない。
(え、もっとあのフェム系美少年を見せてくれよ、と思ったのは私だけだろうか。)
レオリオもほとんど見せ場が無い。
なので私は今は、「主人公はこの4人ではない」と暫定的に位置づけている。
ハンターハンターはゴンが一応主人公とされているが、ジンと再会したことにより一旦は主人公の座を降りたと私は考えている。
・「共通した目標があり団結する」話では無くて、「それぞれがやりたいことがある」話
よくある物語の展開としては「共通の脅威に対して、それぞれの立場の人々が違いを乗り越えて団結する」というものである。
鬼滅の刃だと「鬼の脅威」があり「鬼舞辻無惨(きぶつじむざん)」というラスボスが居る。
それに対して、鬼殺隊とその精鋭たる「柱」がいる。
これらに対して主人公たちが「力を合わせて」成長しながら戦うという展開が多い。
だがハンターハンターはけして主人公とその仲間が「つるむ」話ではない。
(もちろんレオリオの熱い心は他の仲間に対して鉄の意志がある)
それぞれが独立した目的があり、目標がある。
ゴン→父親の後を追いハンターに成る⇒父を見つける
キルア→家族からの呪縛から自由になる⇒やりたいことを見つける⇒ゴンのそばにいて戦う⇒本当にやりたかった事(アルカを取り戻す)を思い出して実行する
レオリオ→子供の頃の経験からの夢、医者になる
クラピカ→部族を皆殺しにした幻影旅団への復讐⇒仲間の眼を集める
このような個別の独立した目標があり、それぞれの物語が展開していく。
ハンター試験編、ゾルディック家編ではまだ王道の少年漫画のようなテイストがあったのに、その後はどんどん暗い世界観になり鬱展開に成っていくのだ。
倫理も道徳もない、神もいない、善悪もない、救いのない世界観なのだ。
・裏主人公としての「ヒソカ」
物語のトリックスターであり、「主人公以上に物語の展開に関与してくるであろう人物」は誰だろうか。わかりやすく言えば、名探偵コナンのベルモットのような存在である。
ハンターハンターにおいてヒソカは真の主人公までとは言わなくても、裏の主人公とも呼べるのはヒソカではないだろうか?
くじら島帰還、キメラアント編では登場は無かったもののレオリオよりも登場回数が多いと言える。
そして彼は、主人公達に対してメタ視点(上位からの観測)ができる存在なのだ。
コナンのベルモットもそうである。
彼ら彼女らは主人公勢を背後から見守り、重要な伏線をちりばめ、ストーリーの根幹部に関与してくる。
良くも悪くも「何でもあり」だと作者からも読者からも言われてるので強引な展開でも決して無理矢理感を感じさせない。
(キャラが自分の意思を持ち物語を動かすのが良い作品で、逆にダメな作品はシナリオの都合上キャラが動かせられると良く言われている。だが、ベルモットやヒソカは超越存在ポジションとしていかようにも扱える)
暗黒大陸編ではヒソカがクロロ団長との闘いを果たして、「旅団狩り」を決意することで物語が進みだしている。
ヒソカは単なるバイキンマンのような悪役ではなく、ストーリーを進めているのだ。
※ベルモットのファンのために言うと、彼女はあんな変態ではありません(^▽^;)
・暗いと言われているヒロアカですら救いがある
ハンターハンターは、鬼滅やヒロアカのような「能力バトルモノ、の王道」ではなくて異端児、というより擬態した鬱漫画だというのが私の結論だ。
ヒロアカはなんだかんだ言って、オールマイティという「安心感の柱」がある。そして初期メンバーが「ほとんど入れ替わらない」という点も安心感がある。
デク、かっちゃん、轟はほとんど共に行動している。
鬼滅も「かまぼこ隊」はほぼ一緒だ。
ほとんど登場しなくなる、クラピカ、レオリオとは大違いだ。
また保護者的だったカイトも途中離脱する。
もちろん、ハンハンにもゼノじいちゃん、ジンという頼れる存在はある。
だが彼らは主人公がピンチの時に毎回助けてくれるわけではない。
ヒロアカは「まあなんだかんだでデクとその友達は生き残るだろうな」という安心感もある。
ここが私が、北斗の拳、男塾、ジョジョの奇妙な冒険、鬼滅の刃、僕のヒーローアカデミアとの違いを感じた点だ。
逆に言うと、数多くのバトルものを見つくして、もっとアダルトで陰鬱な物語が読みたいならハンターハンターはお勧めである。
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