有効率100% ?!

五月雨式に書くのはやめようと思ったのですが、このニュースには反応しないではいられないです。この記事は、悪しき記事の典型なのではないでしょうか。(新しい情報を見つけたので、大幅に修正・追記しました:最初の投稿は午後、修正は夜)

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タイトル:米ファイザー、コロナワクチン12─15歳の強い長期免疫効果確認本文:[22日 ロイター] - 米ファイザーは22日、独ビオンテックと共同開発した新型コロナウイルスワクチンについて、12─15歳を対象とした後期臨床試験(治験)で強い長期的な免疫効果を確認したと発表した。
ファイザーによると、2回目の接種から4カ月以上経過した後も有効率は100%だった。
米食品医薬品局(FDA)はファイザー製ワクチンの12─15歳への接種について、5月に緊急許可を承認した。
ファイザー・ビオンテックは、12歳以上に対する容量30マイクログラムの接種の正規承認を申請する予定。FDAは16歳以上への接種を8月に正規承認している。


内容について

(1)治験の条件の詳細がわからない
・治験の人数がわからない。
・どの位の精度のものなのか、見当もつかない。
・ここでいう「有効率」の定義がわからない。感染?発症?
・以前は91%と主張。今回の「100%」は何と比較したのか?
・結果が100%と言うが、信頼区間があるはず。

(2)副反応の記載がない
・これまで指摘されて来た副反応があるはずで、少なくとも比較あるべき
・子供の4か月を「長期」と考えているのか?

メディアの記事として
・タイトルの「強い長期免疫効果確認」はファイザーの味方か?
・「強い」の意味がわからない。(100%だから?)
・少なくとも日本語では、一次情報の確認方法がない(プレスリリース?)
・結果の100%の定義がわからない。
・「ワクチンは100%予防する訳ではない」との矛盾は少なくとも説明を
・発表の垂れ流し。確かにファイザーがそのように発表したのかも知れない。それは事実でも、報道とはそれに検証を加えないなら、単なる御用メディア。
・4か月を長期として扱うことに合意したのか?

内容については、特に「100%」と堂々と描いていることに驚きました。当然ですが、何かが100%と言うからには、分母と分子があるはずです。1つでも例外があると100%とは言えまえせん。100%と言ってしまうと簡単に検証され、嘘がばれるからです。だから99%とか99.9%とか言う。

有効率100%を通常の定義で理解するなら、分母はワクチン未接種ならば感染したであろう人数、分子はワクチン接種を受けたことで感染しなくなった人数です。もしもこの定義を使っているなら、この4か月の間、ワクチン接種した子供の誰一人感染しなかった、という意味になります。

人数がわからないので何とも言えませんが、極端に言えば、接種したグループからは誰も感染しなった。しかしワクチン未接種の子供が感染した。これだけで100%という数値が作れます。確実にするなら、一人にワクチン接種、もう1000人にブラセボ(ワクチン未接種)。ワクチン未接種の誰かひとりでも感染し、たった一人のワクチン接種者が感染しなければ、有効性100%です。

このような極端なことが起きていないことを確認するためにも、治験者の数は重要なんですね。

(ここまでは、ロイターのこの記事だけを読んで、疑いながら書きました)


追加で見つけた記事にもう少し詳細がありました。こちらは大分詳しいし、ロイター記事でわからなかった様々な事柄を含めて伝えています。

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治験の概要が記載されています。治験の人数2228人、有効性は発症に対するものだということがわかりました。100%も、一応どのようなデータから出て来たのわかりました。さらに、

12~15歳に対する接種の主な懸念としては、男性に心筋炎を引き起こす可能性が指摘されているが、データからはそうした症状は非常にまれであり、接種のメリットはリスクを大幅に上回ることが示されている。新型コロナウイルス自体も心筋炎を引き起こす可能性があり、その頻度と重症度はワクチンよりも高い。

と続き、副反応の記載もありました。

ロイター記事が書いていないことが、あまりにも多いことがわかります。これでは内容詳細を全く理解できない。AFPの内容があれば、少しは定量的な議論の土俵に乗る気がします。

この対比から感じるのは、データリテラシーが足りない人はロイターまたは類似記事を読んだだけで、「子供には効果が持続するんだー」「副反応は書いていない=ないから安全」「ワクチン打たせよう!」と思ってしまう気がします。(悲)


さて、さらに内容を3月の発表と比べると興味深いです。

・今年3月31日にファイザーの治験の発表があり、当時も100%と発表。治験参加者は2260人、1131人がワクチン接種、残り1129人がブラセボ。感染者は18名で全員ブラセボ。このため100%と発表していた。
・今回はこの続き。治験参加者は2228人に減少、感染者は30人に増加。

治験参加者が32人減っているので、どのような理由だったのかが気になります。治験参加者から外れた32人の中に、ワクチン接種者で発症した可能性がある人が含まれていないかを、最低限知りたいですね。

そしてそもそもファイザーの治験は、なぜか検査陽性ではなく発症ばかり。発症は、誰かの判断が入るため人為的に減らすことが可能です。要注意です。(2020年12月のファイザー論文も同じ)