デジタル給与:日本のキャッシュレス化は遅れているのか?
デジタル給与が2023年から解禁とか。その前提に日本のキャッシュレス比率が低いと報道しているテレビ局もありました。韓国93.6%、中国83.0%、日本32.5%と。日本はそんなに遅れている!
いやいやそこには数字のカラクリがあります。今回はその実態を確認してみようと思います。
元々は、3年前に見つけた雑誌に元情報があります。
48、49ページに、
「率」は分母・分子に注意しろ
「日本のキャッシュレス比率は18.4%で諸外国より遅れている」
という記事があり、事細かに説明してあります。ポイントは、経産省の数字では18.4%、金融庁の数字は54%。何を分母、分子に入れるかによって、これだけ数字が変わるのだ、を実例で紹介している記事でした。(雑誌が古いので、2018年現在の数値)
(1)経産省の定義
分子:キャッシュレス支払い手段による年か支払額
具体的には、電子マネー決済額とカード決済額の合計額。注意すべきは、住居、電気、ガス、水道などの銀行振込額がキャッシュレス支払い額に含まれないこと、そして日本では銀行振込がとても多いこと。
分母:家計最終消費支出額
これには住居、電気、ガス、水道などの支出も含まれています。さらに、実際には支払いが発生しない「持ち家の帰属家賃」というみなし家賃まで含まれています。
とすると何が起きるか。銀行引き落としで行われる住居、電気、ガス、水道などの額は、分母のみに含まれ、分子には含まれない。当然、キャッシュ列比率は低くなります。
一応、国際的な定義ではあるそうですが、日本の実情にはあっていない数字だと言わざるを得ません。
(2)金融庁の定義
給与受取口座からの出金の内訳を把握。
クレジットカードなど 15%
銀行口座引き落とし 17%
ATMやネットでの振り込み 22%
現金(ATM) 46%
つまりこの定義なら、すでに54%、現金を出して、電子マネーのチャージする人もいるのでこの数字を超えている考えられます。
計算するとき、何を含めるのか。これは統計数字を見る時に、必ず注意すべきことです。分母を大きく、分子を小さくできれば比率は小さくできる。つまり意図があれば定義を変えることで数字がいじれるということです。
この例では、経産省は2018年ごろからキャッシュレス推進を謳っています。例えば
を知ると良いでしょう(記事はデジタル給与解禁関係)。当然、日本は遅れている!という方が訴求しやすい。つまりキャッシュレス化を推進するために、日本が遅れている!と経産省は言いたいだろうと推測できます。
(最新の情報は調べ切れていませんが、2020年では中国94.7%、韓国87.3%に対し日本では29.7% と経産省で言っているようです。)
数字は嘘をつかない。
しかし、数字に嘘を語らせることはできてしまう。
ならば、我々はどうすればよいのか。
定義は何か。
誰が言っていることか。
まずはこれを意識することが、データを大事にし、理解を深める時の基本だと考えます。
一般論としての議論は、以前「データを理解するためのヒント(1) 」に書いています。