誤解が多い「重症者の6割がワクチン接種者」

イスラエルの重症者数の6割がワクチン接種者、という記事。原著者がすでに懸念しているとおり、解釈でいろいろな誤解が起きているようです。そしてその誤解にはレベルがあります。(a) 単純理解、(b) 統計学の基礎知識で理解できるもの、(c) 実は包括的に物事を見ないとわからないこと、などがあります。

(a) 単純理解は、文字通り重症者の半分以上がワクチンを接種していた、だからワクチンを打っても打たなくても同じだ、というもの。

(b) 統計基礎での理解は、シンプソンのパラドクスを知っている人が理解すること。この例では、ワクチン接種・未接種に分け、年代毎に重症者率を比較すると効果は十分高い、とする理解。(だから(a)のような単純理解をデマだと断定する人が出てきます。)

(3) 包括的理解は、幾つかの要素を含みます。「今までは」「イスラエルでは」「既存の株において」などの条件付きであること、そして特にこの情報が後ろ向きの評価であることを意識した上での理解です。前向きの評価であったとしても、まだ影響を与えるかも知れない要素が多すぎて、交絡を簡単に補正することなどできない。結果として、得られている数値は参考程度である。このような理解だと思います。(他にも注目すべき要素があるかも知れません。)


私の個人的理解では、このイスラエルのデータから言えることは「ファイザーのワクチンは、イスラエルの8月中旬までのデータにおいて、重症化を抑える効果はありそうだ」と理解しています。後ろ向きの評価なので、決してその数字が治験等で行われる有効性にはなりませんが、今の所、有効性があることとは矛盾しない、それでも将来のことはわからない、と解釈しています。


いずれにしても、自分がすべてを知っている訳ではない。謙虚に知らないことがあるだろう、と思うことが学びの基本であると信じています。

そしてこの元記事を書いた著者らは、記事が誤解をされやすいことを十分意識していたことを、再度強調しておきたいと思います。

However, while these numbers are true, to quote them as evidence for low vaccine effectiveness is wrong and misleading. Sometimes, with observational data there is confounding of multiple factors that can make it easy to misinterpret simple percentages like this, and the current vaccination situation in Israel brings a perfect storm of confounding factors that lead to confusion if not thought through carefully.