5類でも無症状者を含めた全数調査できるはず:やらないなのは、やりたくないからだ
5類になると云々、というニュースをよく聞きます。実際何が起きるのか。やっぱり調べないと、感覚で物を言ってしまことがよくわかります。
とりあえず、よく目にする情報は以下のようなものだと思います。
調べてみようと思ったきっかけは、HIVは5類に分類されているが、全数把握が行われ、かつ一定の基準を満たすと身体障害者手帳を持つことができる、治療費の補助が受けられるという話を聞いたからです。つまり5類だから絶対にこうなる、とは言えないのではないか。5類でもいろいろな施策が可能。つまり行政の裁量範囲が増える、ということを意味することなのだと思いました。
以下が「感染症法における感染症の分類」という資料のうち、2類、5類、そして新型コロナに関する部分です。「感染症法に基づく医師の届出のお願い」という部分に記載があります。
赤で囲ったのはインフルエンザと新型コロナ、青はHIVです。
確かに、2類および現状の新型コロナはすべて全数調査、直ちに届け出ることになっています。しかし、5類でも全数のものもたくさんありました。5類48の疾病に対し、半分の24が全数。届け出時期に少し余裕を持たせているものも多いですが、「直ちに」もありました。インフルは少し特別扱いの「基幹」で「届出対象は入院したもので、届出内容は入院時の対応を加える」となっています。
つまり、必ずインフルエンザと同じになるわけではなく、いろいろな設定ができるようになっている、ということです。
以上から、考えた感想・意見です。
1.入院について:病床確保や行政による入院調整のシステムがなくなる
2.検査・治療費:抗ウイルス薬は3割負担で2万円前後、注射薬なら10万円4.その他関連体制:対策本部、臨時発熱外来や検査センターがなくなる
5.経済支援:経済的支援策は実施されなくなる
という4点については、インフルエンザはそうであるかも知れませんが、裁量の余地がある部分です。
また、
3.療養/待機:感染者の自宅/宿泊療養、濃厚接触者の待機の要請がなくなる宿泊療養施設はなくなる
早期医療対応が可能な体制がなくなる
のうち、濃厚接触者の待機の要請はできなくなるかも知れませんが、今でも義務でもないし、実質何も変わらないのと思います。そしてその他はやはり裁量の範囲。
全体として、このような断定はダメでしょう。
さらに「なお、マスコミ各社では5類への変更に伴う影響について誤解を招く報道が多数見られますのでご注意下さい(特に医療機関の対応について)。」
などと言っていることも信じられない。(今回取り上げた理由は、こんなことが言われているな、という感覚と近いものをたまたま見つけたからです)
私はデータを集める努力は絶対に必要だ、合理的な判断を行うにはできるだけデータを集めなければならないと思っています。だからこそ、もしも5類になった時、データは集まるのだろうかと気になっていました。インフルエンザと同等になってしまうことを前提の発言を頻繁に耳にするので、危惧していました。
調べてわかったのは、5類であっても全数把握をしているものはあるということ。そしてHIVでは、患者だけでなく、無症状病原体保有者も届け出ている。身体障害者認定を申請でき、受ければ治療費が軽減される。
だとすると、もしも全数把握をやめるという方針になったら、それはデータを大事にする必要がない、現状把握は不要だ、と判断したことになる、と理解しました。(5類でもできることをあえてやらない、と判断したことになるわけですから)
いずれにしても、アメリカではXBB.1.5の割合が新規感染者数の半分にまで勢力を拡大、日本にもすでに上陸、その感染力はさらに強く、一方で病原性がわからない(強いのではと危惧されている)状態。さらに将来の株がどう変化するか、全くわからない状態で、5類にするなどの議論をすること自体がナンセンスだと思います。
将来どんな株が出てくるのか、より致死率の高いウイルスに変異しないか、誰も将来のことはわからないのです。安心できることがわかるまで、慎重に判断し、行動しましょう。