「”コロナ後遺症” 感染の半年後にも4人に1人で」という記事は何が言いたい?
一体何が言いたいのか。ここまであからさまに???を感じる記事をNHKで見たのは初めてかも知れません。
記事はこちら。
タイトルからは、後遺症のことが書いてあるようです。そこで、データと付き合うために意識したいことで書いたとおり、
(1) データの成り立ち、どのように集められたものなのか
(2) データの解釈、誰がどのように解釈したのか
(3) 結果がどのように伝わって来たのか(一次情報か否か)
を考えてみましょう。
まず(1) です。データの理解のために初めにすべきは、このようなどのような人を対象にして4人に一人に後遺症があると言っているのかを確認することですね。
・調査の対象はどのような人、どんな条件で集められた人なのか
・どのような人なのか(無症状、軽症、重症を含むのか、など)
・どのような年代、性別なのか、既往症などはどうなのか
・後遺症の有無はどのように判断されたのか。
・何人中何人が後遺症と言っているのか
・半年等の期間を設定しているが、起点は何時なのか
この記事にあるデータに関する情報は以下のみ。記事はその後、後遺症の種類と時間経過で示された率ばかりです。
国立国際医療研究センターなどは去年2月以降、新型コロナから回復した人のうち20代から70代の457人について、その後の症状を聞き取って分析しました。
つまりデータを読む基本となる詳しい情報は出ていません。当然1次情報ではありません(3)。一次情報はこちら。
ここには、当然ながら詳しい情報が出て来ます。簡単に内容を説明している医師の先生によれば、
対象となったのは、この病院を退院し、「回復者血漿療法」のために血液を提供することに同意して、検査を受けにきた人たちでした。そのうちの457人がアンケート調査に協力したのです。
入院中に軽症、中等症、それに重症だった人たちが、それぞれ含まれていると論文に記されているのですが、この病院はECMO治療を始めとする高度専門医療を行っています。
つまり、少なくとも対象者457人は入院していたので、無症状の人はほとんどいなかった可能性が高そうです。
(さらなる内容は。。。読み解きたい意思はありますが、またの機会に)
続いて元の記事の流れを考えてみましょう。上の(2) にも関連します。
とても不思議な流れになっています。
始めのタイトルは「“コロナ後遺症” 感染の半年後にも4人に1人で… どんな症状? 」ですが、内容は都内の新型コロナウイルスへの感染確認は49人。減っているが後遺症が・・・
続いてワクチン接種率、後遺症が・・・
味覚異常、倦怠感、息切れ、脱毛など、様々な後遺症の情報が続きます。抗ウイルス薬やステロイド剤などの治療がなかったとの追加情報と、男女の違いや体形などの違い。
この記事は、このように後遺症の酷さをとにかく伝えることが1つの目的のように見えます。
そして最後が以下の文章です。
「若い、痩せ型の女性であっても後遺症を侮ってはいけない。むしろ味覚・嗅覚障害が出やすいという事実を受け止めることはすごく大事だと思う。また、味覚や嗅覚の障害は若い人の方が出やすく、コロナの症状が軽症であっても若い人であっても後遺症は大きな問題になる。最近ではワクチンをしっかり2回接種している人は接種していない人と比べて28日間以上、症状が続きにくいという報告も出てきている。ワクチンで後遺症も予防できる可能性があることがわかってきているので、若い人でも万が一に備えてワクチンを2回接種するのは非常に重要だ。さらにワクチンを接種してもコロナに感染すると後遺症が出るリスクはあるので基本的な感染対策は続けることが大事だ」と話しています。
仮に「ワクチンをしっかり2回接種している人は接種していない人と比べて28日間以上、症状が続きにくい」としましょう。しかし後遺症とどんな関係があるのか?
「ワクチンで後遺症も予防できる可能性?」にはどんな根拠があるのか。
さらに「ワクチンで後遺症も予防できる可能性がある」、しかし「ワクチンを接種してもコロナに感染すると後遺症が出るリスクはある」。いったい何が言いたいのでしょう?
どう考えても結論は、感染しないのが一番大事。
それ以外の結論はないはずです。
勿論感染リスクを減らそうと、ワクチン接種を選択する人も勿論いるでしょう。しかし、方法は他にもあります。できるだけ人との接触を減らす、気密性の高い不織布マスクをする、手洗いを徹底するなど、それぞれの人がリスクを把握し対策すれば良いはずです。
しかしなぜか結論がワクチン接種に誘導される、というパターンの放送は、最近とても多いように感じています。